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第四章 初恋をもう一度
40 十八歳
しおりを挟む日付が変わって、十八歳になった。
ベッドの中でカチカチと鳴る秒針の音に耳を澄ませていたけれど、誕生日を迎えたからといって身体が一回り大きくなるわけでなければ、顔が急に大人びるわけでもない。
ここ数日メリッサの件で悶々としていたが、ミーシャがこれ以上気にしないならそれで良いのだろう。ちょっと癖のある相手ではあるけれど、彼女がルシアンを想う気持ちの強さは伝わった。
(そうよ、関係ないんだから………)
つま先を擦り合わせて目を閉じる。マリベルはようやく温かくなってきた身体を抱きかかえて、静かに眠りに落ちた。
「お嬢様!」
賑やかな朝の訪れを教えてくれるのはいつだってメイドのリリス。「お誕生日ですね!」という元気な挨拶に笑顔で応えながら、自分の胸がいつもより高揚していることに気付いた。
誰だって誕生日の朝は浮かれるもの。
最近少し沈んでいたけど、今日はやはり特別。
支度をして階下へ降りると、まだ朝だというのにいつも以上に明らかに豪勢な朝食が並んでいた。グレンシア男爵家の四人しかいないメイドたち総出できっと早起きして頑張ってくれたのだろう。
「特別な一日は特別な朝ごはんからです!マリベルお嬢様、お誕生日おめでとうございます!」
並んで出迎えてくれる四人に笑顔を向けて頷く。その向こうにはすでに食卓についている両親の姿が目に入った。二人ともニコニコとこちらを見ている。
「みんな……ありがとう。すごく美味しそう!」
「マリベルも早くいらっしゃい。カレンからも手紙とプレゼントが届いているから、食事の後で開けると良いわ」
「そうなのですね。せっかくなので、学校から帰ったらゆっくりと目を通そうと思います」
あんな別れ方をしても妹の誕生日を覚えてくれていた姉には頭が上がらない。やはり、返事の手紙の中で、あの日の子供じみた態度を謝っておくべきかもしれない。今では、いつまでも腹を立てているのも馬鹿らしいと分かる。
席に着いたマリベルの方を見て、母ヘレンは「まぁ!」と高い声を上げた。ビックリして思わずそちらに顔を向ける。
「どうかされましたか……?」
「あ、やぁね、ごめんなさい。まだ幼い少女だと思ってたマリベルがいつの間にか大人っぽい顔になっていて驚いたのよ。少しお化粧をしたの?」
「私だって年頃の娘ですから。リリスに教えてもらって身だしなみにも気を付けることにしたのです」
「すっかりお姉さんになっちゃって………」
概ね嘘ではないけれど、今日のマリベルがいつも以上に見た目を綺麗に整えたのは、アーバンとの約束があったからだった。「予定を空けておいて」という言葉を信じて、授業の後すぐにアーバンの元へ行くことになっている。
(今度こそ驚いてくれるかしら……?)
上手くいかなかった渡月会の夜のことを思い返す。
だけど、ああしたすれ違いがあったからこそ自分たちは素直な気持ちで話し合うことができたし、誤解を解いてより仲も深まった気がする。
ミーシャが言うようにプロポーズとまでは言わなくても、何か将来に関する言葉が彼の口から聞けるのでは、という小さな期待はマリベルにもあった。
◇お知らせ
50話完結としていたのですが「話数のわりに未公開分が多いな」と見返したら、数え間違いをしていました(57話の次が48話になっていた)。ポンコツここに極まれり……!
今月中に終わらしたいので更新頻度は上げますが、とりあえずお知らせです。すみません。
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