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第一章 女王とその奴隷
40.背徳的※
しおりを挟む部屋の中には、小さな水音と衣服の擦れる音だけが響いていました。
先ほどまで主人が仕事をしていた机に背中を預けて大きく脚を開いているのは、なんとも言えない気持ちです。ロカルドが舌で深く探るたびに、身体の奥から蜜が溢れて、心まで潤うような気がするのです。
「………っあ、あぁ、それ…きもちい、」
「アンナ、君が誘ったんだ」
「ごめんなさ、んっ、ンン……!?」
謝罪を重ねるしか出来ない口に長い指を差し込まれ、為す術なく私はそれを舐めます。大きな声を出す心配は消えましたが、我慢できない気持ち良さはそれでも身体を駆け上がってきました。
いつも私が見下ろす無駄に美しい顔を今日は見上げます。
赤い口紅の付いたシャツを見たくなくて、私はボタンを外していきました。それに気付いたロカルドが全部外し終えるよりも前に器用に頭からシャツを脱ぎます。
私は、何が欲しいのでしょうか?
自分でもよく分からないのです。
ロカルドが何処かの令嬢と会うのは当然の権利で、使用人の私には口出しすることは出来ません。当たり前です。雇われた下女はそれ以上でも以下でもないのですから。
だけれど、私は身分不相応に主人に触れてほしいと思っています。嫌がるロカルドの前で裸になって、彼を誘いました。「責任を取る」なんて彼は言いましたが、実際のところ何の責任も彼にはありません。
考え事をしていると、ロカルドが私を抱き上げてソファの上に下ろしました。
「………え?」
「どうして驚いた顔をするんだ?」
ロカルドは小さく開いた私の唇を塞ぎます。
何度か口付けて顔を離すと、冷えた双丘の上にその舌を這わしました。尖った先端を口に含んで転がされれば、自然と声が漏れてしまいます。
先ほどから、覆い被さる主人の硬くなったものが私の身体に触れていることには気付いていました。
自分で誘ったものの、私は先の展開について何も考えていませんでした。しかし、どうやら惚けていたのは私だけのようで、ベルトを外す音が聞こえたとき、鈍い頭はこれから起こるであろう事態を察知しました。
「だ、旦那様……?」
「今の君はどっちだろうな。女王である君を犯すのも背徳的だが…使用人としてのアンナを抱くの悪くない」
「まって、まって…!ロカルド……!?」
ヌルッと粘膜が触れ合う感覚があり、すぐに張り詰めた剛直が私の膣内に侵入してきました。
私がいつも触ってきた、形さえ覚えているあの雄が今自分の身体の中にいるのです。しかし、変な話ですが、私の指先に翻弄されていた可愛らしい生き物は、今やどういうわけか凶暴性を発揮して暴れ回ろうとしています。
「………っあ…!?」
「滑るな、すぐ奥まで届いてしまう。少し速くして良いか?」
「い…あ、え…っ!?そんな深くしちゃ……!」
遠慮というものを知らないのか、初めて侵入したくせにその肉塊はズリズリと壁を擦って抽挿を繰り返します。抜き差しするたびに大きさを増しているような気がして私は恐ろしくなりました。
見慣れた彼の分身が、ここまで凶悪とは知りませんでした。
もしかしてこれもウイスキーの効果なのでしょうか?
「アンナ……っ、締めるな、」
「ごめんなさい、でも、奥が……んあっ」
ひと突きされるたびに結合部が泡立つ音が聞こえます。
身体が馬鹿になったのか、ずっとお腹の奥がきゅんきゅんするのです。快感を逃す前にまた違う波が私をさらっていくので、どうにも上手く出来ません。
「すみませ、気持ちよくて……変になっ、あっ…!?」
ぎゅむっと掴まれた胸の先端を引っ張られた瞬間、頭が真っ白になりました。私が虚無の中を彷徨っている間も、ロカルドは突き上げを止めないので、気絶しそうになります。
夢なのか現実なのかも分かりません。
確かめたくて、苦しそうな顔に手を伸ばしました。
青い瞳の中には炎が宿っているようで、私はその熱を少しだけ分けてもらおうと唇を重ねてみます。こうやって一つに溶けることが出来たら良いのに、と幼稚な妄想をしながら、吐き出された白い欲を腹で受け止めました。
その後何度か繰り返された私たちの情事がどのように終わりを迎えたのか記憶にないのですが、目覚めたときには外はもう明るく、私は柔らかなベッドの上でした。
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