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番外編※
ロカルド・ミュンヘンは気遣いたい3
しおりを挟む「旦那様ー!言い忘れてたんですが……あれ?」
廊下の向こうから大声で自分を呼ぶ声があり、振り返ると不思議そうな顔をしたアドルフが立っていた。
「アンナの部屋の扉に耳を当てて何を?」
「不審な物音がしたから中の様子を伺っていただけだ。話なら俺の部屋で聞こう、どうした?」
「え、不審な音って大丈夫なんですか?良かったら一緒に確認しに──」
「大丈夫だ。アンナは最近疲れているからきっと寝惚けて寝言でも言っていたんだと思う。そっとしておこう」
「あ……はい」
アドルフが黙って引き下がるのを見てほっと息を吐く。先に部屋の前まで行って待っていてくれ、と伝えて足早に洗面所へ向かった。
扉を押し開けて鍵を締めた上でカチャカチャとベルトを外すと、はち切れんばかりの己が顔を出す。あんなものを聞かされて冷静で居ろと言う方が難しい話で、息苦しさすら感じるほどに早く吐精したくて仕方ない。
彼女は部屋の中でどんな格好をしていたのだろう?
今朝一緒に朝食を食べた時は、薄い白のワンピースの上から茶色のカーディガンを羽織っていた。ボタンを一つ掛け違えていたので見えたのだが、下着は淡い桃色だったような…
脚を大きく開き、涙目で自分の身体の熱を逃がそうとするアンナの姿を想像すると、それだけでどんなポルノ雑誌よりも腰にくる。良くないことと分かっていても、右手は休む間もなく熱り立つ剛直の上を行き来した。
「………っく、」
アンナ・オースティン。
結婚しても尚、心を締め付けてやまない彼女はきっと魔性の女の類なのではないかと思う。メイドとして採用されて初めて屋敷に顔を出した時は、極めて地味で真面目そうな女という印象を受けた。
だが、しかし。こうして距離が近くなった今思うのは、如何にして嫌われないように手元に置き続けるかということ。
というのも、アンナは非常に献身的で、そうした夜の事情にも嫌な顔ひとつせずに合わせてくれるのだ。そんなに変わった性癖は持っていないと思うが、生真面目な彼女に毎日無理強いするようなことはしたくない。知らぬ間に嫌われでもしたら一生悔やんでも悔やみ切れない。
(まだ二日目だぞ。どうすれば良いんだ?)
禁欲を決心したのはつい数日前の話。
くたくたになったアンナを気遣っての提案だったが、彼女がこうして一人で部屋にこもって慰めていると知って驚いた。そして同時にひどく興奮した。禁欲なんて決めたくせに、自分の手でどうにか押さえ込まなければ暴発する恐れがあったぐらい。
「……アンナ…ッ……あぁっ、アンナ…!」
ドロッと手のひらに広がる白濁を洗い流しながら、頭の隅に浮かんだのは彼女が口走っていた言葉。
途切れる息の合間に、アンナは「もっと」と言っていた。それはつまり何か足りない部分が自分にあるということだろうか。もしかすると日頃の行為に満足していたのは自分だけで、彼女は何かしらの不満を抱いていたのでは?
(もっと……何なんだ?)
長さの問題だろうか。
それはもうどうしようもない。王都には豚の性器を合体させて男性器を長くすることを試みた猛者が居たらしいが、術後数日で死亡したと聞く。
というか、未だかつて自分の息子についてそんな指摘を受けたことがなかったので正直戸惑っていた。短い部類ではないと思っていたが、驕りなのだろうか。
アドルフにショックを気取られないように、最後に鏡を見て表情を直した上で部屋へと向かった。
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