【完結】奴隷が主人になりまして

おのまとぺ

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番外編※

ロカルド・ミュンヘンは分からせたい2

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 なにやらロカルドの様子が変です。

 家でも外でもやけに私にくっついて歩きますし、夜寝る時なんか、絞め殺す気なのかと疑うぐらいきつく抱き締めて眠るのです。こういった場合の相手の心理を予測できるだけの知能が、私にあれば良いのですが。


「で、君は僕に相談に来たと?」

 肩まで伸びた茶色い髪を束ねて男は笑います。
 彼は私が幼い頃、家の近くに住んでいたダニエル・パボワという幼馴染です。旧友の彼がヴィラモンテに戻ったと知ったとき、私は嬉しくなりました。

 弟のニックは相変わらず王都で忙しそうにしていますし、父と母などとっくの昔に行方知れずなので、幼少期の思い出を共有できる人が近くに居るのは悪くありません。

「ええ。だってダニエルは私より賢いでしょう?」

「まぁ、君よりは成績は良かったけどヴィラモンテの学校なんてそもそもレベルが知れてるよ。気になるならミュンヘン男爵に直接聞けば良いんじゃないか?」

「それが……教えてくれなくって」

 ロカルドの態度を思い出してしゅんとします。
 私が理由を尋ねても「何でもない」の一点張りで、ロカルドはまったく話してくれないのです。突き放すような言い方には少し悲しくなりました。

「そういえば、貴方のことを私の初恋の相手だとか言ってたわ。もう随分前のことなのに、意地悪よね」

「なるほどね。僕だって貴族の妻に手を出すほどバカじゃないよ。それに彼はすごく嫉妬深そうだし……」

 ダニエルの目が私の首元を見ます。
 私はストールの下に咲いた赤い痕を彼が見抜いたのではないかと心臓が跳ね上がりました。そんなことはないと思うのですが。

 小さい頃は優しくてぷくぷく太っていたダニエルが、こんなにシュッとした男に成長していて驚きました。私はあの、子豚のような体型が好きだったので少し残念です。


「さてさて、長話は終わりだ。今日はどんな花をご希望で?夏に向けて白い百合なんかも良いと思うけど」

「うーん、そうね……」

「向日葵も綺麗なのが入荷してるよ。ほら、アンナの顔よりも大きいんじゃないか?」

 ふざけてダニエルが私の頭に花を近付けるので、くすぐったくて私はケラケラ笑ってしまいます。

「………噂をすれば、お迎えが来た」

「お迎え?」

 ダニエルの視線を追うと、店の入り口にはロカルドが立っていました。何処かへ出掛けた帰りなのか、路上につけた赤い車の上では、アドルフが運転席に座ってひらひらと手を振っています。

 奇遇ですね、と声を掛けようとして私は固まりました。
 なんだかとても、ロカルドは怒っているようなのです。

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