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第二章 ウロボリア王立騎士団
18 聖女の白
しおりを挟む「ローズ、大丈夫?顔色悪くない?」
一日の訓練を終えて久しぶりの疲労に目を閉じていると、隣に座ったクレアが心配そうに声を掛けてきた。
「うん……お休みをもらっていたから、身体が鈍ったのかもしれないわ。私は騎士のみんなと違って日常の訓練もしていなかったもの」
ダメよね、と言って少し笑って見せる。
クレアは尚も窺うように私の顔を見て「無理はしないでね」と言ってくれた。もしかすると、王立騎士団のメンバーいなったからには、オフの間も訓練をするべきなのかもしれない。フランに相談してみようか。
そういえばクレアやダースも近くに住んでいると言っていたな、と記憶を辿りながら何処に住むのか聞こうとした瞬間、クレアが怪訝そうな声を発した。
「うげぇ……ウロボリア王立騎士団にもああいう蝿って居るんだね。見てほら、フランが囲まれてる」
指さす方に視線を向けると、確かにフランの周りに白い服を着た聖女の軍団が押し寄せている。彼が以前話していたブリブリのドレスを揃って着ているから、内心感心した。
白は光を集める色で浄化に向いている関係から、好んで身に付ける聖女は多い。それは聖女のシンボルカラーのようなもの。しかし、あそこまで華美だと戦闘に影響しないのだろうかとも思う。
中には膝上の短いスカートを履いた女の子も居て、胸元はばっくり開いているから周りに居る男性騎士たちは嬉しそうにニヤニヤしている。
「………フランって人気あるの?」
何気なくポロッと溢した質問にクレアが飛び付いた。
「あるでしょう!?私、プリオールの討伐遠征に参加する前から噂で聞いてたけど、エグいぐらい好色家らしいわ。来るもの拒まず誰でも抱くから、みんなグイグイ押すんだろうねぇ~」
「そんな、軽いのって嫌じゃないのかしら?恋人にはなれないんでしょう?」
「そうそう。だから本気になった女たちが屍の会っていうのを作ったとかなんとか」
「なにそれ……」
やっぱり家の中ではきっちりルールを守るように伝えておかないと。プラムの前で他の女でも連れ込まれようものなら、私とて怒ってしまう。
そんな女好きのくせに、軽々と幼い我が子の前で父親だなんて嘘を吐いたことが信じられない。いつか裏切られる娘の心を思うと胸が痛んだ。
「あのね、私たち一緒に住んでるって言ったけど…実は娘がフランのことを父親だと思ってるの」
「えっ!」
「良くないわよね。最初に勘違いしたのは娘の方で、フランは悪気なくそれに乗ってくれたから……本当のこと言い出すタイミング逃しちゃて……」
「うぅん………難しい話だと思うけど、いっそ本当に彼と結婚しちゃうとかは?」
「エグいほどの好色家なんでしょう?」
「…………無理か」
ガクッと肩を落とすクレアを見て、私はまた視線をフランの方に戻した。
何をあんなに一生懸命に話しているのか、フランの腕や胸に触りながら聖女たちは可愛らしい笑顔を向けていた。フランも特に嫌がる素振りはなく、それに応じている。
新しくメンバーに入って来たメナードなんかがあの姿を見たらどう思うかしら、と考えて溜め息を吐いた。
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