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第五章 エバートン家の花嫁
69.挑戦と逃げ腰▼
しおりを挟む久しぶりに姿を確認したそれは、やはりあまりにも凶器的で、布の下にある時の小動物のような可愛らしさは一瞬にして消し飛んだ。どうして神様はもっと愛らしい見た目にしてくれなかったのだろう。
というか、これは本当に人間に挿れて良いもの?
「うーん…そうね、思っていたより大きい」
「止めておく?」
「ねえ、ルシウス。前から感じてたけど貴方って拒否を許すような言葉を口にするけど、身体が追い付いてないの」
「……そうかな?」
「そうよ。だって今も私の肩押さえてる」
「あ、ごめん」
詫びる様子もなく手をシーツの上に置き直すと、ルシウスは再び笑顔を見せた。
「でも、君が本当に嫌ならべつに今日じゃなくて良い」
「………嫌じゃない」
「ははっ、強情だね。シーアはシたいんだもんね?」
「貴方って実はめちゃくちゃ性格悪いわよね…?」
「そんなことないと思うけど、」
どうかな、と言いながらルシウスは自身の先端を私の入り口に押し当てた。ゆるく動くとヌチヌチと粘着質な音がする。こんなことをして薄らと笑みすら浮かべる男が、善良なわけがない。
抗議する前に、ぬかるんだ蜜壺は何の前触れもなくヌプリとその頭を咥え込んだ。
「…っあ……!?」
「滑り良いから入っちゃった、ごめん」
「だから…ごめんじゃ……ん、痛いっ!」
思わず音を上げると怯んだようにルシウスは身を引く。それと同時に彼の剛直もずるりと壁を擦るので、私は身を震わせた。
「う、動かないで、息だけして…!」
「分かった、」
私はふーっと深く息を吐く。
進むことも戻ることも止められて、きっと彼だって苦しいはずなのに、私の額にキスを落としながらただただ耐えるその姿を嬉しく思った。
嬉しく思ったのだけれど。
「ルシウス…ごめんなさい、手も止めて」
「え?」
「あの、だから、手を…」
私は恥ずかしくなって言葉を切った。ルシウスの手は先ほどからずっと私の胸をほわほわと揉んでいる。マッサージのような優しさで、気持ちは良いけど、状況が状況なので気になってしまう。
「あ、ごめん。こっち触るとナカもきゅんきゅんするから面白くて。身体って不思議だね?」
「ええ…それは分かったから、手を……っんあ…!?」
「なるほど、近い場所の方が反応が良いんだ」
「っやだ、そこ、挿れたまま…あ、ンン…!」
張り詰めた花芯を指で虐められると、ぎゅうっとお腹の奥の方が収縮し、嫌でも自分の胎内に入っている異物の形を意識した。
私は慌ててルシウスの手を止める。
「や、待って!……お願い…ルシウス、」
「良いよ。君が動いて良いって言うまで何もしない」
「ごめんなさい…酷い頼みだって分かってる」
「三年待てたから、これぐらい大丈夫」
冗談のようにそう言って笑うと、ルシウスは私を抱き抱えたままゴロンと横になる。
「……っん、」
「痛かった?」
「いいえ、大丈夫…」
「一度抜こうか。ありがとう、頑張ってくれて」
「………、」
情けなくて涙が出た。まだまだ出来る、どんと来い!と大きく構えることもなく、その優しさに甘えてしまう狡い自分を申し訳なく思う。
ルシウスは相変わらず穏やかな笑みを浮かべて、眠りに落ちるその時まで、私の身体を撫でてくれた。
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