【完結】婚約破棄された娼婦を隣国の王子が溺愛するなんて聞いたことがありません!

おのまとぺ

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第二章 アルカディア王国編

30.ウィリアムと忠告


結局、あれよあれよという間にノアは私の頭を洗ってくれて、身体も綺麗に洗い上げると流してくれた。いやらしさなど全く感じないその流れるような作業に私は複雑な思いを抱きつつ、されるがままに応じていた。

「そろそろ上がろうか?お腹空いたでしょう」
「そうですね」

立ち上がって、ノアに手を引かれながら浴槽を出る。時計は見ていないけれど、アルカディア王国の宮殿に到着した時間からして、おそらくもう夜に差し掛かっているのではないだろうか。

身体まで綺麗に拭いてもらったところで、ふと着るものがないことに気付いた。ノアはテキパキと持って来ていた着替えに腕を通しているけれど私はどうしたら良いか迷う。カルナボーンから着てきた服を風呂上がりにまた着ることは、あまり気が乗らないけれど、現状そうするしかない。

動きを停止する私に向けて、ノアは手に持ったシャツを差し出した。

「これ着て。二枚持って来たから、こっちがリゼッタの分」
「……あ、ありがとうございます!」

とりあえず、全裸もしくは汚れた服というルートは回避することができた。シャツはノアのものなのか少し大きく、お尻の下までなんとか丈は足りて、短めのワンピースのようになった。

服を買いに行かないとね、と言うノアの提案に頷く。こんなことならカルナボーンの王宮で着ていた服を娼館で処分せずにもう少し残しておけば良かった。部屋に戻れば下着はあるから、早く引き上げて下着を付けねば。

汚れた服をどうしたら良いか聞くと、そのまま置いておけばメイドが洗うと言われたのでお言葉に甘えて畳んで置いて行った。

ノアと並んで浴室を出て階段を上がる。もうすぐ全て上り切るといったところで、階下から呼ぶ声があった。

「ノア!」

振り向くと階段の下で若い男がこちらに向かって手を振っている。ノアや私と同じぐらいの年齢だろうか?いつも白を基調とした服を着ているノアとは対照的にその髪色から衣服、靴に至るまで男は黒を身に纏っていた。

隣に立つノアは手すりに身を乗り出して下を見る。

「ウィリアム、来てたのか!」
「陛下から連絡があったんだ。お前が帰ったと」
「悪いが今日は入り用だ」
「何で?」

ノアは私の方を振り返る。

「恋人を連れて帰っているから」
「はぁ?」
「紹介しよう、リゼッタだ。リゼッタ、こちらは俺の幼馴染のウィリアム・クロウだよ」
「……はじめまして」

ウィリアムと呼ばれる男は私の方を一瞥して何も言わずにノアを睨んだ。ノアはニコニコしながらその様子を眺めている。

私のことなど構わずに友人の相手をしてほしいと伝えるべきか、客人らしく黙っておくべきか悩ましい。気不味い沈黙を先に破ったのはウィリアムだった。

「ノア、女の趣味が変わったな」
「そうかな?」
「そんな品のない女を側に置くなよ」

品のない、と言われて思わず自分の格好を見下ろした。もしかするとウィリアムの場所からは私が羽織ったシャツの中が丸見えだったのでは。しかし、これは都合上仕方がない事態であって、私とていつもこんな丈の服を好んで着ているわけではない。

「まあ、そう言わないでくれ。風呂上がりなんだ」
「知るか。また空いたら連絡寄越してくれ」
「分かった」

ギロッとこちらを再度睨み上げて去って行くウィリアムの背中を呆然と見送る。私の第一印象がものすごく悪いことは理解できた。服装ひとつでこんなに扱いが変わるのも、場所柄仕方がないことだろう。そりゃあ王宮でこんな女が歩いていたら私でも二度見するかもしれない。

彼は女性に慣れていないから悪いね、というよく分からないノアのフォローに返事をしながら部屋へ戻った。とりあえず夕食へ向かう前に服を着替える必要がある。もしも国王陛下と同席する場合、さすがにこの格好では失礼に値するだろうから。しかし、そこまで考えたところで、外は雪だというのに半裸で立っていた国王のこと思い出した。

「ノア様、服を着替えたいのですが…あいにく手持ちがなくて。何か貸していただく事はできますか?」
「ノア様じゃなくてノアだよ」
「ノア…服を貸してほしいのです」
「そうだね。探してみるよ、もしかすると従妹の服がどこかに残っているかもしれない」

そう言ってノアは部屋へ戻って行った。その間に私は急いでショーツを履いて、洗面所へ向かう。ヴィラに借りた化粧品を取り出して軽く化粧を済ませたところでノアが部屋に戻って来た。

どっちが良い?と彼が差し出したのは、ギンガムチャックのお嬢様風ワンピースとノースリーブのシックな黒のワンピース。どちらが良いかの前にサイズが合うのか不安になったが、シンプルな方が良いかと思ったので黒いワンピースを着てみることにした。洗面所へ再び戻って脚を通すと、ゆったりしたシルエットのお陰か、なんとか着ることが出来た。

「似合ってるね、それで行こうか」

ご機嫌で頷くノアの手を取って部屋を出る。アルカディアの国王夫妻と共に食べるかもしれない夕食を思うと緊張するけれど、自分の知らないノアの子供の頃の話や、両親の前だけで見せる彼の態度などは見てみたいと思った。

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