【完結】悪役令嬢に転生しましたが、聞いてた話と違います

おのまとぺ

文字の大きさ
9 / 95
第二章 ニケルトン侯爵家

07.悪役令嬢は尻を拭く

しおりを挟む

 小さくて可愛い生き物というのは、観賞用であれば何も考えずに愛でることが出来る。しかし、これが預かった貴族の子供となると話は別だ。

「アリアーー!ロケットはっしゃー!」
「ぴー!ぴー!ばっくします!」
「………あはは、」

 マグリタが去ってから30分ほど経過しただろうか。私は双子の子供部屋で途方に暮れていた。

 子供の体力半端ない。初めこそ一緒になって遊んでいたものの、背丈の低い彼らに合わせて行動すると、めちゃくちゃ腰にくる。加えてかなり大きな声で話してくれるので、一応聴力が人並みの私は鼓膜が何度か破れそうになった。

「いらっしゃーまーせー!」
「あ、ロムルスは何屋さんをしているのかしら?」
「ハンバーガーやさん」
「わあ!じゃあ、お姉さんにも一つちょうだい?」
「だめ!」
「ええっ……」

 いったいなぜ。ショックを受けながら、次は後ろでミニカーを走らせるレムスに向き直る。

「レムスは車が好きなのね、どんな車が好き?」
「あかいのがすき!」
「格好いいわね。赤はヒーローだもんね」

 穏やかに話していると、急にレムスが険しい顔をし出した。鼻をフンフン言わせながら、みるみる顔に力が入る。

 私は焦って、手に持っていた電車の玩具を床に置いてからレムスの背中を摩った。レムスは小さな身体を震わせながら拳を握りしめている。

「どうしたの!?どこか痛い?」
「……うんち」
「え?」
「うんち!はやくっ!」
「ええ~~!?」

 大慌てで双子を両脇に抱えて部屋を飛び出る。トイレの場所は幸いロムルスが教えてくれたので、飛び込んで二人を降ろした。

「じぶんでする!アリアはあっち行って!」
「分かったわ、何かあったら教えてね?」

 子供用のステップや手摺りが設置されているのを確認して、ほっとしながらトイレの外で待っていたら、パンツの後ろからトイレットペーパーを靡かせたレムスが出て来た。

 ギョッとして近寄る。

「待って!レムス!何か出てるわよ」
「わーアリアがおこったー!!」

 キャイキャイとトイレットペーパーを挟んだまま爆走する双子の片割れを追い掛ける。なんとか子供部屋に逃げ込む前に捕まえたので、トイレまで連れて戻りお尻を拭いてズボンを履かせた。

 しかし、部屋に戻ると今度はロムルスが泣いている。どうやら積み木に躓いて転んでしまったようで、床に突っ伏したままで鼻水と涙が滝のように流れていた。

「アリアっ、これぇ、いたい~うううっ」
「ロムルス!怪我してない?どこが痛いの?」
「あしがいたい~~おいしゃさんはやだ~!」

 目を遣ると少しぶつけたのか打撲の痕があった。
 背中を撫でながら、受け売りの「痛いの痛いの飛んでいけ」を何度も披露していたら、やがて元気になったロムルスは楽しそうに笑い出した。

 今なら理解できる。
 なぜマグリタが最初あんなにも疲れ果てていたのか。我が子は可愛いと言えども、こんなにも元気に動き回る幼児が二人もいたら仕事どころではないし、精神の安定を保つのはかなり困難だろう。

 私は心の底から世のお母様方に敬意を払いながら、左右から髪を引っ張る双子を仏の笑顔で嗜めた。この笑顔もはたしていつまで持つのか分からない。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...