リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

文字の大きさ
252 / 424
第8章〜外交編〜

閑話:ミンティシア⑥

しおりを挟む



ミンティシア side




お姉様達の暴挙を止められなかった私。
同じ王女として、お姉様達の暴挙をを止められたはずなのに、何もできなかった私。
こんな自分ではだめだ。
この国の王女として、私も変わらなければいけない。


「ふむ、それはそうだが、しかし、そなたは交渉事にはまだ不慣れだろう?」


テーブルの下で私は拳を握る。
しかし、俯かない。
お父様の瞳を、しっかりと見返す。


「それでも、私に使者をお命じください。」
「だが、そなたの身に万が一の事があれば、いかがする?」
「っっ、そ、れは、」
「婚約が整ったばかりの第二王女を、外交の為とは言え危険に晒す訳にはいかぬ。」


言葉を失う。
数ヶ月後に私は、お父様が決められた方と婚約する。
完全なる、政略結婚。
もしもこれから他国との婚約の話が持ち上がれば簡単に破棄される、危うい私の嫁ぎ先。


「ーーでは、ミンティシア様の護衛を私から推薦させて下さいませ。」


萎みかけた、私の意思。
が、ソウル様の言葉に浮上する事になる。


「ミンティシア様を必ず守れる優秀な護衛がおりますの。その者達をミンティシア様の護衛に推薦させてください。」


誇らしげに微笑むソウル様。
優秀な護衛?
そんなソウル様に、私は首を傾げざるおえない。
ソウル様のお側にいる方達の事だろうか?
お父様も優秀な護衛の事が気になるのか、ソウル様の提案に興味を示す。


「その護衛に推薦したい者とは、一体、誰だ?」
「はい、王様。精霊王たる方達の護衛では、いかがでしょうか?」


私の予想の斜め上の、ソウル様の回答。


「「「「は?」」」」


変な声が、私達の口から零れ落ちた。
・・精霊王様?
全くもって、理解が追いつかない。


「い、今、そなた、精霊王、と、言ったか?」


一番最初に立ち直ったのは、お父様。
さすが、お父様である。


「実際に王様も彼女達とお会いして話してみて下さいな。」


言って、虚空に目を向けるソウル様。
・・え、もしや、この場に精霊王様が来られる、の?
愕然とするのは一瞬。


「サーラ、アーラ、ここへ来れる?」


虚空に向かって知らぬ名を呼んだソウル様の側に、2人の妖艶な美女が降り立った。


「私達を呼んだかしら、ディアちゃん?」
「ふふ、私達に用?」


親しげに、ソウル様に微笑む妖艶な美女。
目の前の妖艶な美女のお2人が、精霊王様である事は疑う余地もない。
それほどまでの、圧倒的な存在感。


「急に呼び出してごめんね、2人とも。でも、来てくれてありがとう。」
「まぁ、良いのよ?」
「私達の誰かを呼ぶかもしれないと、前もって知らせてくれていたのだから、気にしないで?」


ニュクス様に続いて、この国で敬われるのが、精霊王様。
その方々が、今、目の前にいらっしゃる。
私達の想像を超えた現実に、倒れてしまうかと思った。


「っっ、精霊王、様。」
「ディアちゃん、今度、一緒に出掛けましょうよ。」
「それは良いわね!どうせなら、ピクニックが良いわ。」


震える声を出すお父様に構う事なく、ソウル様に向かって楽しげに話し続ける精霊王様達。
思い知る。
ーーー一国の王だろうと、彼女達の前では取るに足らない小さな存在なのだと。


「ーーサーラ?アーラ?」
「「・・・。」」


おっとりと、ソウル様がお2人の名前を呼ぶ。
途端に口を噤むお2人。
その事に、私は驚きを禁じ得ない。
精霊王様達は、リグラルドセル大陸をお創りになられた女神であるニュクス神様の次に尊い存在なのだ。
その精霊王様が、ソウル様のお言葉に従っている?


「王様の為に、ミンティシア様の護衛を引き受けてくれないかな?」
「「・・・。」」


そんな尊い存在であるお2人が、ソウル様にお言葉をお聞きになり、初めてお父様に目を向けた。
これが驚かずにいられようか。
・・・ソウル様、一体、今日は後どれだけ私達を驚かせるおつもりなのですか?


「お前が、この国の王?」
「は、はい、左様です、精霊王様。」


青い髪の精霊王様、ウンディーネの問いに、お父様が声を震わせて頷いた。


「まずは、ディアちゃんに誠心誠意の謝罪は?」
「くだらないお前達の国の事情にディアちゃんを巻き込んだ件について、心からの謝罪は必要ではなくて?」
「お前のディアちゃんへの謝罪は本当の気持ちなの?打算目的の謝罪ではなく?」
「違うと言うなら、ディアちゃんに対して、ちゃんと態度で示しなさいな。私達に嘘は通じないわよ?」


お2人の瞳に宿る怒気。


「こちらに来なかった、火と土の精霊王2人もずいぶんと怒っていたわよ?」
「えぇ、お前がディアちゃんを利用しよとした事を、ね?」


ほとばしる威圧感に、私達は死を覚悟した。



しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。 ※表紙はAI画像です

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界の花嫁?お断りします。

momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。 そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、 知らない人と結婚なんてお断りです。 貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって? 甘ったるい愛を囁いてもダメです。 異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!! 恋愛よりも衣食住。これが大事です! お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑) ・・・えっ?全部ある? 働かなくてもいい? ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です! ***** 目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃) 未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...