リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第12章〜獣人編〜

ガルムンド王国の宰相

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引き渡しの要求は、あり得る。
その際、引き渡しを拒否すれば、ルルーシェルの主人である私への批難は多少はあるだろう。


「何を言われようとアディライト、ルルーシェルの事はガルムンド王国に渡さないから安心してちょうだい。私が可愛いルルーシェルの暗殺を考える様な王妃が住む王宮へ引き渡すはずがないでしょう?」
「それは心配しておりません。ただ、ルルーシェルを引き渡さなかった場合、ディア様が批難される様な事があったら王宮を破壊してしまいそうです。」
「物騒ね。」


本気でしそう。
私のことが絡むと、皆んな暴走するんだもの。
だけどね?


「だけど、先に王宮を破壊するのは私だと思うよ?だって、強引に私からルルーシェルの事を奪おうとするなら、王宮だけでなく、この国ごと滅ぼす気だもの。」


私の全ては、家族である皆んな。
それを私から奪おうとするなら、断固として抗い、その相手を殲滅する。


「この世界から消えれば、どうやったって私の大事な子達に手を出せないものね?」


うっそりと笑った。


「さて、この話は、ここまで。どうやら、お迎えが来たみたいだもの。」


近付く、人の気配。
真っ直ぐに、この部屋の方へ向かって来ている。


「ーーー失礼いたします。」


案の定、この部屋のドアをノックし、中へと入って来る1人の男性。


「初めまして、私はこの国の宰相を務めております、ルドガーと申します。ディアレンシア・ソウル様、その御一行様、この度は、ご足労をいただき、誠にありがとうございます。」


宰相と名乗るルドガーは、柔和に微笑む。
しかし、侮るなかれ。
この男は王妃の兄であり、その妹とは違う思惑を内に秘めているのである。


「ふふ、が関わる事ですもの。喜んで、ご協力いたしますわ。」


ルルーシェルが私のものだと、強く強調。
ルドガーの眉がぴくりと動く。


「・・この国の英雄であるルルーシェル様の事をご自分のものだと言うとは、貴方様はとても素晴らしい方なのでしょうね?非才な人間の少女であると言うのに、驚いてしまいます。」
「あら、その非才な人間の少女の指示で、ルルーシェルは魔族と戦いましたのよ?言うなれば、私のおかげで、この国には魔族から救われたのではありませんか?」


口元が吊り上がる。


「この国の勇敢な方々は、貴方の言う非才な人間の少女以下だと、宰相自らお認めになっていらっしゃるの?」
「なっ、」


ルドガーの顔に苛立ちが宿るのを、笑みを貼り付けて見守る私。
あらあら、他愛のない。
これぐらいの煽りで心情を悟らせるなんて、小娘だと私を嘲るからだ。


「今の発言、聞き捨てなりませんね。我が国の者達は、皆勇敢で強い精鋭ばかりなのですから。」
「あら?それにしては、魔族との戦いに何も活躍しませんでしたけど?」


倒したのは、ルルーシェル。
その戦いに協力したのは、コクヨウとディオンの2人なんだけどね?


「貴方の言う勇敢で強い精鋭ばかりと、私が知る強者は違う様です。ふふ、力量差が私達の間にあるのですから、仕方ないですわよ。」


くすくすと笑う口元を手で隠す。


「だって、この国の勇敢で強い精鋭が私と戦っても、誰一人として勝ち目がありませんもの。」


その瞬間。


「ーーー愚弄するな、人間の小娘が。」


敵意が爆発する。
はい、最初のターゲットさん、いらっしゃいませ。
思惑通りと、ますます笑う。


「あらあら、小娘なんてひどい言い方。国の宰相ともあろう方が、人間を下に見る様な発言ですね?」
「はっ、人間など、我々獣人族の強さの前には、何も出来ない下等生物だろう?」


ルドガーが鼻を鳴らす。


「強いルルーシェル様の事を、運良く自分の奴隷に出来たからと言って図に乗るな、人間の小娘。お前など、ルルーシェル様のお力でSランク冒険者となったのだろう?」


向けられる、軽蔑の眼差し。


「主人だからと言って、ルルーシェル様の功績を奪うなど外道な。恥を知れ。」
「ーーーですって、ルルーシェル様?」


後ろを振り返る。


「私、貴方の力でSランク冒険者になっみたい。ふふ、ちゃんと調べれば真実が分かるのにね?」
「えぇ、目の前の男の程度が知れると言うもの。そんな男が一国の宰相など、笑えます。」


無表情のルルーシェルが吐き捨てた。


「ルルーシェル様?」
「気安く名前を呼ばないでいただけますか?貴方に呼ばれるのは不愉快なので。」


ーーー私の前から消えてくれません?


「っっ、」


ルルーシェルの拒絶に、ルドガーが言葉を失う。


「何を驚いているのです?まさか、私が貴方の企みを何も知らないとでも?」
「ルルーシェルの事を王の側室にして、強い子供を生ませようと企てて?妹の王妃の襲撃を利用して、ルルーシェルの主人である私の事を始末する計画だったとか?」


色々と知ってますよ?
私以外の全員がルドガーへ敵意を向ける中、1人にこやかに微笑んだ。


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