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第12章〜獣人編〜
折れる音、壊れた心
しおりを挟む私達の力量を見誤ったルドガー。
本当に私の事を暗殺出来ると思っていたのだろうか?
「ねぇ、そんなにルルーシェルの事が欲しかったの?私の暗殺を企ててまで、さ。」
ソファーから血を流す、ルドガーを見下ろす。
「っっ、当たり前だろう!私達、獣人族は力こそが全て!」
ギラギラとした目をするルドガー。
「魔族を倒せるほどの力を持つルルーシェル様がお生みになる子供こそ、この国の次代の王に相応しい!なら、お前の様な人間の小娘が奴隷としてルルーシェル様の事を縛り付けるなど、許せるはずがないだろう!」
激情に吠えた。
「獣人族は力こそが全て、ね。」
その為なら、私の暗殺も厭わないと言うのか。
狂っている。
私も人の事を言えないが、力に固執するルドガーを狂っていると思う。
ルドガーは力に、私は愛に狂ってしまった。
「なら、私が貴方に力を示せば、ルルーシェルの主人として相応しいと言う事ね?」
「・・は?」
惚けるルドガーに近付き、愛用のレイピアの切先を突きつける。
「ルルーシェルは、私の一部。そのルルーシェルを失う時は、私自身が死ぬと言う事。」
ルドガーは狂っている。
しかし、私はそれ以上に愛に狂っているのだ。
「欲するなら足掻きなさい。私から大事なルルーシェルの事を奪おうとするなら。」
見せてみろ。
お前が言う、獣人族が人間より優れている所を。
「今のままじゃ、十分に戦えないでしょうから、私が傷は治してあげる。」
「な、にを、」
困惑するルドガーの傷を癒す。
後で、その傷があったから負けたと言い訳されても面倒だし。
「っっ、傷が、」
「ほら、これで準備は整ったよ?獣人族が人間である私より優れていると教えてくださいな。」
どうした?
ちゃんと戦えるように傷も治したんだから、私に挑んできなさい?
「舐めるなよ、小娘が!?」
私の方へと伸ばされる、ルドガーの手。
「遅い!」
躊躇なく、腕を切り落とす。
上がる絶叫。
「あ、あぁ、腕がっっ、」
痛みに悶えるルドガーを冷ややかに見下ろす。
「どうしたの?貴方の言う獣人族の力って、こんなものなのかしら?」
ふむ、自慢げにしていた割には弱い。
この程度なの?
「分かった、武器を持っていないからね!」
肉体派かと思ってた。
だから、武器を与えなかったんだけど、それがいけなかったみたい。
「じゃあ、次は武器も貸してあげる。好きな武器わや選んで使って良いよ。」
空間収納の中から色々な種類の武器を取り出し、ルドガーに選ばせる。
切り落とした腕も回復させ、第二ランド開始。
「ふふ、次は楽しませてくださいな。人間よりも強いと言うなら、一瞬で終わらせないで。」
「っっ、」
じりじりと、私との距離を詰めるルドガー。
その手には、私が貸した槍。
「殺してやる。」
「あら、素敵。簡単に壊れない玩具は大歓迎!」
増悪を向けてくるルドガーを大絶賛。
「壊してあげる。」
私の大事なルルーシェルの事を奪おうなんて考えられなくなるぐらいに。
うっとそりと笑った。
「さぁ、来なさい、ルドガー。何度でも、貴方の心を壊してあげるから。」
「うぉぉぉっっ、」
雄叫びを挙げ、私へと突進するルドガー。
ひらりと避ける。
「んー、まだまだ、だよ?そんなんじゃ、つまらないじゃない。」
もう一度、ルドガーの腕を切り落とす。
「武器を持っても、その程度?ご大層に私の事を人間だからって貶していたくせに?」
これなら、まだ魔族との戦いの方が楽しめた様な気がする。
不満だ。
「次よ。私が満足する様な足掻きを見せてみなさい。」
切り落とした腕を回復させては、戦うの繰り返し。
「ひぃ、うっ、」
何度も。
「や、め、」
ルドガーの心を壊すまで続けていく。
「っっ、たすけて、」
「もう終わり?がっかりだわ。」
立ち上がれなくなったルドガーに吐き捨てる。
「ひぅ、ゆるして、ください。」
「何を許せと?」
私の事を暗殺しようと企てと事?
大事なルルーシェルの事を奪おうとした方かしら?
「貴方の謝罪に、1ミリの価値もないわ。」
ふざけるな。
「この遊びは、貴方が始めたのでしょう?なら、最後までやり遂げなさいな。」
謝罪したから許せと?
なら、私が受けた奪われる恐怖を忘れろと言うの?
「私へ貴方の企んだ暗殺の切先は届かなかったけど、ルルーシェルの事を奪われるかも知れない不安と苦痛を、謝罪一つで許せなんて、可笑しいと思わないかしら?」
始まった遊びは終わらない。
相手が飽きるまで。
「遊ばれていた私も、そうだった。どんな言葉も、遊んでくる相手には届かない。」
どんなに理不尽でも。
辛くて、苦しくても、遊びは続いていく。
「言ったでしょう?貴方の事を、壊してあげるって。」
この結末は、決まっている。
最初から。
「自分が犯した愚行を悔やんで、壊れて?」
「ぁ、あぃ、」
楽しく笑い武器を向ける私に、ぽきりとルドガーの心が折れる音がした。
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