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第12章〜獣人編〜
証拠と自供
しおりを挟む『記憶の髪飾り』から、次々と流れていく映像。
真っ赤から、真っ青に。
今では、王妃の顔は真っ白に変わってしまった。
『ーーー・・メーリケが、ルルーシェル様の暗殺を企てている、だと?』
『はい、宰相様。いかがなさいますか?』
次に映し出されるのは、宰相であるルドガーと側近の男の会話。
『我が妹は愚かな事を。ルルーシェル様は、とても大切な方だと言うのに、暗殺を企てるとは。』
妹の愚行を嘆くルドガー。
『・・ふむ、しかし、この機会を使えば、楽にルルーシェル様の事を王宮へ迎えられるかも知れないな。』
『と、言いますと?』
『何、暗殺をルルーシェル様ではなく、その主人の人間の小娘へと変えてやれば良い。メーリケに気付かれぬ様にな。』
『なるほど。奴隷の身であるルルーシェル様を王宮へ迎え入れるには、今の主人は邪魔ですからね。』
『ふっ、そう言う事だ。』
2人は笑い合う。
『ルルーシェル様への襲撃は最小限にして、あの小娘を始末させろ。』
『かしこまりました。』
また暗転。
『ーーあ?暗殺だと?』
『はい、この街のホテルにいる、ディアレンシア・ソウルと言う女の暗殺を頼みたい。出来るか?』
『誰に言ってる?暗殺ギルドの俺達に始末が出来ないものなんかねぇよ。』
ルドガーの側近が私の暗殺を頼む場面。
『では、必ず始末してください。報酬の半分は、成功してからお渡しいたしますので。』
『あぁ、必ず成功させる。小娘1人の息の根を止めるなんて、楽なもんだからな。』
手渡される、お金。
私の暗殺の依頼は、こうして交わされた。
ここで魔力の供給を止める。
消える映像。
「うふふ、王妃様、どうです?これは貴方が企てた暗殺のやり取りですが?」
そして、兄である宰相のルドガーによる、私への暗殺の依頼の場面のやり取りでもある。
「立派な証拠でしょう?」
「っっ、お、王宮へ無断で足を踏み入れたのか!?その様な事をして、許されるとでも思っているの!?」
はい?
何を言ってるんだか。
「なぜ、私が王妃様に責められるのでしょうか?暗殺を企てられた私達は被害者ですよね?」
冷たい目を向ける。
「それに、この記憶を得る為に王宮へ足を踏み入れていない私達の事を罪に得ませんよ?」
「は?だって、こうして王宮内での会話が映し出されたじゃないの!」
はい、自供をいただきました。
「あら、ふふ、王妃様自ら、この映像が本当に有ったものだと告白してくださるのですね?ありがとうございます、王妃様!」
感謝である。
案外、ちょろいんですね、王妃?
「あっ、それ、は、」
「今更、言い逃れできませんよ?だって、この場にいる皆さんが証人なんですから。」
「っっ、っっ、だって、こんな、有りえない、」
この場の全員からの批難するような視線に、真っ青な顔で王妃が地面に座り込んでしまった。
王妃は、知力が足りない。
その知力を補っていたのは、兄である宰相、ルドガーだったって所かな?
「陛下、私達への王妃様と宰相様の暗殺を企てた罪、どうなさいます?」
へたり込む王妃から王へ視線を変える。
「うむ、徹底的に調査をし、その罪に見合った罰を与えよう。しかし、王妃が指摘した様に、其方にも罪を問わねばならぬ。」
「罪を問う?私にどんな罪があると?」
「王宮内へ勝手に足を踏み入れた事だ。其方が王宮内へ足を踏み入れられる許可は与えていないはずだろう?」
にやける王の口元。
「罪人が奴隷を持つなど許し難い!よって、ディアレンシア・ソウルを犯罪奴隷へと落とし、ルルーシェルを我が側室とする!」
ギラギラとした欲望の目を、王は私の可愛いルルーシェルへと向けた。
王の宣言に、私へ嘲の目を向ける貴族様達。
魔族を倒せるほどの力を持ったルルーシェルが王の側室になる事に賛成の様だ。
「・・へえ?」
私の事を犯罪奴隷へ落として?
ルルーシェルの事を自分の側室にする?
「つまり、王宮へ無断で足を踏み入れた事を罪に問う、と?そう言う事でしょうか?」
笑顔を貼り付け問う。
「そうだ!許可無く王宮へ無断で足を踏み入れるとは、誰であれ重罪である!」
「重罪人め!」
「お前の様な小娘が、ルルーシェル様の事を不当に奴隷にするとはけしからん!」
罵り始める皆様。
「あの、盛り上がっている所、悪いんだけど、私を罪を問う事なんか出来ないよ?」
頭大丈夫?
さっき、私は言ったじゃ無いか。
『それに、この記憶を得る為に王宮へ足を踏み入れていない私達の事を罪に得ませんよ?』
と。
「勝手に王宮へ入った事を責めるのは、彼女達へお願いします。まぁ、出来れば、の話ですか。」
「・・何?」
訝しむ、王達へ微笑む。
「ーーー・・ねぇ、皆んな?貴方達の事を、王様達は罪に問うんですってよ?」
降り立つ6つの神気。
「あらあら、本当に私達の事を罪に問うと言うのね?」
精霊王である全員のお出ましである。
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