リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第2章〜奴隷編〜

名前と奴隷契約

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ふつふつと湧き上がる怒りは、見たこともない彼の両親に対して。
この子が黒い瞳だから?
だから、そんな子は自分達の子供だと認めないって事?


「・・最低な親ね。」


へどが出る。
子供は、親を選べない。
そんな親でも、この子とっては大事なかけがえのない家族なのだ。
例え、どんな理不尽な事を親からされたとしても。


「なら、この子は私が貰うわ。」


もう、返さない。
両親がいらないと言うのであれば、この子の事は私が貰う。


「ハビスさん、私がこの子を買います。」
「っっ、誠ですか?」
「彼を私が買う事に、何か不都合が?」
「・・・いえ、ですが、全員と言いませんが、一部では黒色を不吉と呼ぶ者もいます。お客様に、良くない事態が起きるかも知れません。」


ハビスさんが、懸念の声を上げる。
どうやら、ハビスさんは良い商人のようだ。
利益よりも私の事を考えてくれている。
この子の事も不吉と虐げないで、何やら気にかけてくれているようだし。


「構いません。覚悟は出来てますし、私は簡単に悪意にやられたりしませんから。」


2度目の生で決めたんだ。
もう、悪意に負けるだけのか弱い自分でいる事を止めるって。


「この子は、私が買います。」


上等よ。
こんなあまりにも理不尽な事になど、簡単に負けるものか。


「貴方の事は、私が買うわ。」


漆黒の瞳を覗き込む。


「・・・?」


不思議そうに瞬かれる、漆黒の瞳。


「・・買う?」
「そうよ、貴方の事を私が買うの。そう、ね、まずは貴方の名前から決めましょう。」


名前は大事だ。


「貴方の名前は、・・・」


そっと、目の前の黒色の瞳を見つめながら、その目尻をなぞった。
私は、知っている。
その瞳の奥に宿る世界への絶望、そして、諦めを。
昔の私がそうだったように。


「ーーーー・・そう、貴方の名前は、今日からコクヨウにしましょう。私が昔住んでいた所で取れた、宝石の名よ。」


そんな貴方に、綺麗で高貴な名を。


「コク、ヨウ・・・・?」
「ふふ、今日から、貴方の名前は、コクヨウ
よ。」


黒い瞳だから不吉?
いいえ、その色を誇りながら、堂々と私の側にいれば良いの。


「私の可愛い子。貴方の瞳の色に相応しい、ぴったりの名前だわ。」
「・・・コク、ヨウ、それが、僕の名前。」


何度も同じように名前を繰り返し、言い聞かせれば、目の前の、コクヨウの瞳に強い光が宿った。
優しく、コクヨウの頬を撫で続ける。


「私のコクヨウ。」 


今日から大切な私のモノ。
守るべき存在。


「ーーー・・・女神、様。」


頬に触れていた私の手に、コクヨウが甘える様に擦り寄る。


「っっ、」


・・・やだ、なにこの生き物。
この子、めちゃくちゃ可愛いんだけど!
これは、コクヨウが私を主人として認めたって事なのかしら?


「名無し、いえ、コクヨウも、今の様子を見る限り、貴方のお側に侍る方が幸せのようですね。」
「ハビスさん、なら、私にコクヨウを売っていただけますか?」
「もちろんです。すぐに、そのように手配いたします。」


恭しく、ハビスさんが頭を下げる。
その後は、檻から出されたコクヨウの契約がとんとん拍子に話が進み。


「まず、最初に奴隷についてのご説明させていただきます。」


先ほどていた部屋へ戻って来た私は、ハビスさんから奴隷について説明を受ける。
ハビス曰く。


・奴隷は、主人に絶対服従であるが、人の殺害などの指示は受けられない。
・奴隷が犯罪を犯した場合、主人も刑罰を受ける事もある。
・主人の命令を拒絶、又は反抗的な態度を行なった場合、奴隷紋から激痛を与えられてしまう。
・主人は、奴隷の生活、衣、食、住の保障を必ずしなければいけない。
・奴隷は、主人の持ち物であり、財産である為、他者が不当に傷付け、奪う権利は無く、それを行なった者は、犯罪者として刑罰を受ける。
などーーーー。


「あと、奴隷は自分の意思で自決できません。」
「えっ、そうなんですか?」
「はい、奴隷になった事を悲観して自決するのを防ぐ為に、奴隷紋によって禁止されています。」
「なるほど。」


奴隷になりたくてなった子達ばかりではない、と。
親に売られる子も多いのだろう。


「コクヨウ、お客様の良き奴隷となり、心から仕え、側に侍りなさい。」
「・・はい。」
「では、お客様の血で契約書に血判していただき、主人の登録の変更を行います。お客様、血を契約書に血判していだだいてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、構わないわ。」


ハビスさんから渡された小型のナイフで、指先を少しだけ切り、自分の名が書かれた血を流し契約書の紙に血判する。
次の瞬間、淡く光る契約書。
その光が治った契約書の半分を、ハビスさんが私に手渡した。


「これで、主人の登録が全て完了しました。今から、コクヨウの所有者は、お客様となります。この半分の奴隷契約書は、お客様がお持ち下さい。」
「えぇ、ありがとうございます。」


頷き、契約書を受け取る。
ーーーー無事、奴隷のコクヨウを手に入れました。


「コクヨウ、今日からよろしくね?」
「はい、女神様。」


少しだけ、コクヨウの表情が綻ぶ。
それは、小さな変化。
しかし、とても大きな変化だった。

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