今日、あなたにフラれます

橘 黒虎

文字の大きさ
1 / 7

告白

しおりを挟む
今日、俺はあなたに告白する。そしてきっとフラれる。そう分かっていながらも俺はサキ先生を呼び出した。

 俺が恋したのは先生。奥村咲先生だ。英語教師であり、俺の居る、2年B組の担任でもあった。男女生徒共にサキちゃん先生の愛称で親しまれている人気の先生だ。目鼻立ちが整った美人であり、艶やかで美しいロングヘア、人柄もよく、スタイルもいい20代前半の若い女性。語りきれないほどの魅力を持った、まさに理想の女性という印象だった。

 好きになった相手は先生。もちろん叶うはずもない。叶わない片想いをずっと続けてきた。

 どうして先生なんか好きになったんだろな

 何度も思ったことがあった。叶わない悲しい恋なのだ、もう忘れてしまおう。

 そう思うたびに彼女の声が、笑顔が、匂いが、愛おしさが浮かび上がるばかりであった。結局いつまでも諦めきれずにいた。

 そこで俺は先生を諦める簡単な方法を思いついた。

 全て伝えて、フラれよう。そうすればきっと諦められる。忘れて、また別の誰かに恋して、付き合って楽しい時間を作ろう。
 
「遅くなってごめんね~」
そんな愛おしい声と、教室のドアが開く音共にサキ先生が来た。告白のことばかり考えていた俺は焦って、少し早口になってしまっていた。
「全然大丈夫ですよ!先生も忙しいんですし」
「でも遅れちゃったのは申し訳ないよ。ごめんね?文法で分からないところがあるんだったよね?サキちゃん先生に任せなさい!」

もちろん英語の文法が分からないから教えて欲しい。なんて理由で呼び出した訳では無い。先生を呼び出し、告白するための嘘だ。

「先生、本当は文法が分からない、って言うのは嘘なんです。」
「え?!嘘?あれ、じゃあなんで皆川くんは私を呼び出したの??」
「先生に言いたいことがあるんです」

 告白ってこんなにも、難しいものなのか。

 思えばこれまでの俺は告白など1回もしたことが無い。なにしろこれが俺の初恋だ。
 
中学まで、恋になんて全く興味もなかった俺が初めて好きになった相手がサキ先生なのだ。
 
初恋の相手を前にして既に、鼓動の音は早くなり、声は少し震えてしまっていた。うまく伝わるのかも分からない。この思いが本当に声となって発せられているのか、そんなことも分からなくなるほど俺は焦っていた。

 だが、そんなことを気にしている暇もなく、先生が言葉を発して気まずさが頂点に達してしまう前に、俺が言葉を発し、伝えた。


「サキ先生。ずっと前から好きでした。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...