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Internally Flawless
04 同僚 05
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「ちょっと前まではIT系のベンチャーに勤めてて。でも、すげーブラックだったから、ドロップアウトして……」
ナオから渡された資料にはそんなスイに人物像まで設定されていた。捜査員同士齟齬が出ないように配慮されていたのだろう。設定はしっかり読み込んできたつもりだ。自分のことを話すのはボロが出そうで心配だったけれど、スタッフ同士の仲たがいなどに巻き込まれるわけにはいかないから、今はこの雰囲気が変われば何でもよかった。
「若い頃はよかったけど、年取ったら辛くてさ」
スイの言葉に、ルナが顔を覗きこんでくる。
「え? スイさん何歳なの?」
「28。今年の誕生日で29だよ。アラサー」
質問に答えると、何人かが一瞬『え?』という顔をした。
「うそぉ。そんなわけないじゃん。え? ケンジと同じくらいかと思った」
ルナが大げさに驚いてから、まじまじと顔を見てくる。
「本気で? 冗談いってるんでしょ?」
タイガも驚きを隠せないといった風だ。
「年上なの? 絶対年下だと思ってた」
マリも言う。ようやく、腕に絡まっていた腕を離してくれてほっとする。
「同い年だ」
ルイは驚いているというより、最早奇蹟でも見ているような顔だ。それにしても、言い方が何だか気持ち悪い。
「スイ君……って言ったら、失礼かな? じゃあ、スイさんって呼んだ方がいい? てか、すごい肌綺麗なんだけど、なんか使ってるの?」
マリの顔が吐息が掛かるくらいに近づけられて、近づいてきた分後ろに下がる。酒臭い。
「本当にすべすべ」
「わ」
すると今度は首筋をするりとルナに撫でられて、壁際に追い詰められた。
「えと」
二人に挟まれて、絶体絶命だった。もちろん、スキンケアなんて、近所のドラッグストアで買った300円の乾燥肌用のボディクリーム(お子様用)くらいだから、何を聞かれても彼女らが望む答えなんて返せそうにない。
「やめなよ! スイさん困ってるだろ」
声と一緒にぐい。と、後ろから引っ張られた。そのまま席から立たされる。そうして、スイを後ろに隠してから、ケンジは言った。女性二人はぶーぶー言っていたが、無視して、ひっぱられるまま移動して、少し空いたあたりの席に座らされた。
「あ。ありがと」
席に座ると、ケンジはにこにこして、スイが元いた席から酒のグラスを持ってきてくれた。
「やっと、スイさんと話せる」
それから、ケンジはスイの隣の席に座る。妙に距離が近い。
「ルナさんとマリりん怖いよね。スイさん食われちゃうかと思った」
放っておかれたら、本気でそうなったんじゃないかと思うと怖い。怖いと思ってから、男のくせに女性に襲われて食われるとか情けなさすぎると自己嫌悪に陥る。
「でもさ。颯爽と現れてスイさんを助け出した俺って白馬の王子様系?」
顔を少し赤くして、ケンジは言った。多分酔っ払っているんだろうな。と思う。『王子様ってなんだよ』と、思ったけれど、口には出さなかった。今日はそうやって飲み込んだ言葉でお腹いっぱいだ。胸やけを起こしそうだ。
ナオから渡された資料にはそんなスイに人物像まで設定されていた。捜査員同士齟齬が出ないように配慮されていたのだろう。設定はしっかり読み込んできたつもりだ。自分のことを話すのはボロが出そうで心配だったけれど、スタッフ同士の仲たがいなどに巻き込まれるわけにはいかないから、今はこの雰囲気が変われば何でもよかった。
「若い頃はよかったけど、年取ったら辛くてさ」
スイの言葉に、ルナが顔を覗きこんでくる。
「え? スイさん何歳なの?」
「28。今年の誕生日で29だよ。アラサー」
質問に答えると、何人かが一瞬『え?』という顔をした。
「うそぉ。そんなわけないじゃん。え? ケンジと同じくらいかと思った」
ルナが大げさに驚いてから、まじまじと顔を見てくる。
「本気で? 冗談いってるんでしょ?」
タイガも驚きを隠せないといった風だ。
「年上なの? 絶対年下だと思ってた」
マリも言う。ようやく、腕に絡まっていた腕を離してくれてほっとする。
「同い年だ」
ルイは驚いているというより、最早奇蹟でも見ているような顔だ。それにしても、言い方が何だか気持ち悪い。
「スイ君……って言ったら、失礼かな? じゃあ、スイさんって呼んだ方がいい? てか、すごい肌綺麗なんだけど、なんか使ってるの?」
マリの顔が吐息が掛かるくらいに近づけられて、近づいてきた分後ろに下がる。酒臭い。
「本当にすべすべ」
「わ」
すると今度は首筋をするりとルナに撫でられて、壁際に追い詰められた。
「えと」
二人に挟まれて、絶体絶命だった。もちろん、スキンケアなんて、近所のドラッグストアで買った300円の乾燥肌用のボディクリーム(お子様用)くらいだから、何を聞かれても彼女らが望む答えなんて返せそうにない。
「やめなよ! スイさん困ってるだろ」
声と一緒にぐい。と、後ろから引っ張られた。そのまま席から立たされる。そうして、スイを後ろに隠してから、ケンジは言った。女性二人はぶーぶー言っていたが、無視して、ひっぱられるまま移動して、少し空いたあたりの席に座らされた。
「あ。ありがと」
席に座ると、ケンジはにこにこして、スイが元いた席から酒のグラスを持ってきてくれた。
「やっと、スイさんと話せる」
それから、ケンジはスイの隣の席に座る。妙に距離が近い。
「ルナさんとマリりん怖いよね。スイさん食われちゃうかと思った」
放っておかれたら、本気でそうなったんじゃないかと思うと怖い。怖いと思ってから、男のくせに女性に襲われて食われるとか情けなさすぎると自己嫌悪に陥る。
「でもさ。颯爽と現れてスイさんを助け出した俺って白馬の王子様系?」
顔を少し赤くして、ケンジは言った。多分酔っ払っているんだろうな。と思う。『王子様ってなんだよ』と、思ったけれど、口には出さなかった。今日はそうやって飲み込んだ言葉でお腹いっぱいだ。胸やけを起こしそうだ。
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