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鬼男と少女魔術師の出会い
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しおりを挟む十分に休養をとったアルゴは四日後、まだ日も上がらぬ早朝から冒険者ギルドにやって来ていた。前回の依頼が無事達成できていたかの確認と新たな依頼を探すためだ。
冒険者ギルドは緊急時に備える意味もあり一日中営業している。人の少ない時間帯に来ることができるのはアルゴにとっては非常にありがたい。
早朝なので開放されずにしまっている扉を開けて中に入る。一階には職員以外ではまだ一人も見当たらなかった。人の少なさに安堵しつつも二階へ向かう。二階もまだ誰もおらず男の職員が一人いるだけだった。
夜勤であったのかその職員は眠そうに目をこすっていたが、アルゴの存在に気づくと片手をあげながら声をあげた。
「おお、こんな朝早くに誰かと思えばアルゴではないか。久しぶりだな」
年は六十を少し下回るほどだろうか。白い口髭を生やした心優しいおじいさんである。背は人並みだが彼もまた大きな体を持っていた。といってもアルゴとは違い脂肪の塊であるが、そのおかげか非常に愛嬌を感じさせる風貌をしている。
数年前、まだ初心者だったアルゴを初めて担当したギルドの受付であり、この町ではアルゴの内面を知る数少ない人間でもある。
「お久しぶりですハイルさん。 前回の依頼の達成確認に来ました」
そう言いながらアルゴはギルドカードを差し出した。
「よし、確認しよう。それにしてもいつ見ても恐ろしい外見をしておるのう」
はっはっはっと笑いながらハイルはアルゴのギルドカードを片手にカウンターの奥に消えて行った。
待っている間にアルゴはめぼしい依頼がないか確認する。といっても護衛などは依頼主に怖がられて面倒なのですることはない。ゴブリンを主とした害獣魔物退治が基本となる。
壁に貼ってある依頼票を見ていると気になる依頼を一つ見つけた。前回と同じゴブリン討伐だが報酬がかなり安い。被害規模にもよるが、少なくとも一万ミルからがゴブリン退治の相場である。しかし、その依頼の報酬額は最低相場の半値、五千ミルであった。この明らかに余り物であるこの依頼を見てどうしたものかと逡巡しているうちにハイルが戻ってきた。
「おう、待たせたな。どうやら依頼のあった村では討伐報告後三日たってもゴブリンは来なかったようで依頼達成で受理されておった。依頼報酬の一万五千ミルを入金して置いたぞ」
そう言いながらハイルはギルドカードを差し出した。
魔物の生き残りがいたり、不完全な出来である報酬額が減額されるのでアルゴはとりあえず一安心した。
「あぁ、その依頼か……」
アルゴのもつ依頼票に気づき、ハイルは顔をしかめながら呟いた。
「この依頼が出されたのはいつかわかりますか?」
「確かもう七日ほど前になるな。どうやら小さな村であまり報酬を出せないようだが、流石にその金額で受けるお人好しはなかなかいなくてな」
アルゴの問いに特段考える素ぶりも見せずハイルは答えた。
「1週間か…… 大事に至って無いと良いんだがな。よし、この依頼を受けよう。手続きを頼みます」
「ふっ、見目は鬼のようだが物好きなやつだな」
ハイルはニヤッと笑って依頼票を受け取った。
ゴブリンは基本的には家畜を狙うので村が滅びるなどといったことは滅多と起きないが、それでも生活にかなりの支障をきたす被害が出る。適切な金額で依頼を出すと大抵すぐに冒険者が討伐に出るが、困窮した小さな村が十分な報酬を出せなかったり、報酬金額をけちったりすると誰も依頼を受けず後回しにされるといったことがある。
世の中悪人もたくさんいるが、アルゴのようなお人好しもまた少なからずいるので、大抵は大きな問題も無く無事解決するがそうならない場合もごく稀に存在する。
「手続きしておいたぞ。若い者にもお前のような奴がもう少しいれば良いんだがなぁ」
「若手はその日食べるのでせいいっぱいだからそうもいってられないですよ」
ハイルが笑いながら軽い愚痴をこぼすが、アルゴが軽く首を振ってたしなめる。
「そうだよな。すまんがこの依頼をよろしく頼む」
ハイルは急に真剣な表情になりアルゴに声をかけた。ハイルも口には出さないがこの依頼を気にしていたんだんだろう。ギルド職員の立場として一つの依頼を贔屓するわけにはいかないのだろう。
「善処します」
アルゴもはたから見ると怖い真剣な表情で答える。
「ではまた」
「おう」
アルゴは挨拶をし階下に向かおうとすると、ハイルも片手をあげてながら応じた。
アルゴは本当に何事もないと良いのだがと思いながら階段を降り、ギルドを後にするのだった。
主人と似たのか巨大な体躯を持つ愛馬ゼノに体を揺さぶられながらアルゴは街道を走っていた。問題の村はミトレスの町からゼノの脚で四時間ほど。並の馬ならもっとかかるだろう。
自分の力だけで二メートルの大剣を振り回すアルゴも人間離れしたものがあるが、ゼノもそんなアルゴに引き寄せられたのか普通ではない。
売られていたのを買い取った時はまだ仔馬で他の仔馬より少し骨格がガッチリとしている程度だった。しかし、成長するとぐんぐん大きくなっていき、背中にまたがるのも一苦労する大きさになってしまった。今はアルゴへの信頼もあり落ち着いているが、小さい頃は破天荒なじゃじゃ馬で本当に乗りこなせるかアルゴが不安に思うこともあった。成長すると馬の種類があきらかによく見る他の馬と違うのでぼったくられたかと思うこともあったが、気性が激しいすぎること以外は他の馬と比べ物にならないほと優れていることに後から気づいた。アルゴが根気よく毎日接しているとアルゴを主とだんだんアルゴを主と認めたのか、ゼノの態度は丸くなっていった。今では放していても指笛一つで駆けて来てくれる頼もしい相棒だ。
その愛馬に揺られながら進む中、最近魔物が増えているのかハイルさんに聞くのを忘れたことをふと思い出す。次会った時には忘れないようにしようと心の中にメモをし、今回は数が少ないといいのだがなと願いつつ村へと急ぐ。
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