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新しい日々。
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「今のわたしは無力です。とりあえず高等部を卒業しなければ前に進めません。婚約解消したわたしに新たな婚約者を見つけるのは難しいと思います。いずれは国外に移り住もうかと考えています」
「そうなんだ、イーサン殿下に会おうとは思わないの?」
「今更ですよ」
わたしは横に首を振って静かに微笑んだ。
「……そうか、それが君の決断なんだね」
「はい」
「セリーヌ様がやっと落ち着いたけど今度会いに行ってみる?彼女もこれから取り調べを受ける予定になっている。お家取り潰しではあるけど彼女自身が犯罪を犯したわけでもないし犯人逮捕のために協力もしたから彼女自身の刑罰は軽くてすみそうだ。ドーナルの父上のマッカーシー伯爵がセリーヌ様の後見人になってくれるそうなんだ」
「本当に?良かったわ」
「マッカーシー伯爵は幼い頃からのセリーヌ様をご存知なのでこれから更生していけるだろうと言ってくれたらしい」
「わたしもセリーヌ様に会いたい」
「ねえ、両親と暮らして大丈夫なの?」
「お姉様が捕まってからわたし両親とは会っていないの」
「セシル様は……常に自分が一番でないと納得できなかったのかもしれないね。だからロイズ様の心が君に向かっていたことが許せなかったんだと思う」
「わたしは家族とどう向き合えばいいのかまだわからないの」
一番近くにいるのに一番遠い存在で分かり合えない家族。
「でももう逃げたくないから両親と話し合おうと思っています」
ーーーーー
記憶も心も安定してから両親と向き合うことにした。
それまでは同じ屋敷にいてもお互い会うことを避けていた。
「お父様、お母様お話があります」
二人の部屋に訪れて話すことにした。
「カトリーヌ……」
お母様はわたしをみて震えていた。
お父様はわたしから目を逸らした。
「………全ての記憶が戻りました」
「え?」
二人は驚いた顔をしてわたしを見つめた。
「以前のわたしは全てを知っていたのですね、お父様とお母様からの謝罪も受け入れて……そしてお姉様夫婦を避けるためにここで暮らしていたのですね。わたしを守るために」
「全ては愚かなわたしの行いがセシルを狂わせカトリーヌを不幸にしたんだ」
「ごめんなさい。カトリーヌが生まれてきてくれて嬉しかったの、なのにあなたを見ないようにしていたわ。どうしてもあなたを見ると主人とのことを思い出すし、お母様のことも考えてしまっていたの、わたしは母親失格なの」
「一度は二人の謝罪を受け入れました。だからそれを取り消すつもりはありません……でももう一緒に住むことはできない…わたしはこの容姿がここまで人を不幸にするとは思っていませんでした……お祖母様が自殺されたのもなんだかわかる気がします……」
「…あっ………ち、違う、お母様はとても綺麗だった、そして優しくて……みんなに愛されていたの。でも……何故か周りの人たちが彼女に魅了されて狂ってしまうの……そんなお母様にあなたも似てしまった。わたしは見て見ぬ振りをした、気がつかないふりをした。何も知らない、何も……夫がわたしの不貞を疑ってもわたしは無視したの。
もうあんな辛い思いはしたくなかった。お母様が亡くなった後お父様は狂っていった。
ごめんなさい……怖かった、あなたを愛しているのに……あなたがどんどんお母様に似ていくのが怖かった……陛下はそんなわたしに気がついて代わりにあなたを守ろうとしてくれた。イーサン殿下があなたを好いてくれていたから婚約者にしてあなたを周りの悪意から守ろうとしてくれたの」
「イーサン殿下には確かに酷いことしかされませんでしたが陛下はいつもわたしを温かい目で見守ってくださいました。いつもわたしを守ってくれていたのですね」
ーー今ならわかる。陛下がどうして婚約解消しなかったか……そしてわたしが彼を愛していたことも陛下はわかっていたのだ。
でもその記憶は消えて無くなり、イーサン殿下を嫌うわたししか残っていなかった。だから……わたしのために婚約解消をしてくれた。
「お母様……わたしは、この国を出ようと思います。幸い私は外国語を話すことができます。わたしの髪の色を普通に受け入れてくれる国があるとジャン様が教えてくれました。その国へ行こうと思います。わたしがこの国に居ればまた問題が起きるだけです。それならばこの国を出たいと思っています」
「………わたし達はセシルだけではなくてカトリーヌのことも失ってしまうの?」
戸惑いを隠せないお母様は目に涙をためてわたしを見つめた。
「違います、わたしはもともと存在しなかったのです、だから失うことはありません」
「どこへ行こうとしているんだ?」
「ジャン・マグワイアがオリソン国を紹介してくれました。あそこは自由の国だそうです。わたしのような容姿も受け入れてくれると聞きました。まだ新しくなったばかりの国で治安は少し悪いところもあるけど最近は落ち着いてきたそうです。
わたしのような者が一から出直すには良い国なのだそうです……そこの学校の寮に入り学校へ通いたいと思っています。許可をいただけませんか?」
「……わたし達に反対など出来るわけがない。
だが……出来ればわたし達とやり直して欲しかった。
…………全てこちらで手配はしよう」
「ありがとうございます、わたしは生まれてきて良かったと思える人生をこれからは歩んでいきたいと思っています」
お母様は泣き崩れて何も言わなかった。
「そうなんだ、イーサン殿下に会おうとは思わないの?」
「今更ですよ」
わたしは横に首を振って静かに微笑んだ。
「……そうか、それが君の決断なんだね」
「はい」
「セリーヌ様がやっと落ち着いたけど今度会いに行ってみる?彼女もこれから取り調べを受ける予定になっている。お家取り潰しではあるけど彼女自身が犯罪を犯したわけでもないし犯人逮捕のために協力もしたから彼女自身の刑罰は軽くてすみそうだ。ドーナルの父上のマッカーシー伯爵がセリーヌ様の後見人になってくれるそうなんだ」
「本当に?良かったわ」
「マッカーシー伯爵は幼い頃からのセリーヌ様をご存知なのでこれから更生していけるだろうと言ってくれたらしい」
「わたしもセリーヌ様に会いたい」
「ねえ、両親と暮らして大丈夫なの?」
「お姉様が捕まってからわたし両親とは会っていないの」
「セシル様は……常に自分が一番でないと納得できなかったのかもしれないね。だからロイズ様の心が君に向かっていたことが許せなかったんだと思う」
「わたしは家族とどう向き合えばいいのかまだわからないの」
一番近くにいるのに一番遠い存在で分かり合えない家族。
「でももう逃げたくないから両親と話し合おうと思っています」
ーーーーー
記憶も心も安定してから両親と向き合うことにした。
それまでは同じ屋敷にいてもお互い会うことを避けていた。
「お父様、お母様お話があります」
二人の部屋に訪れて話すことにした。
「カトリーヌ……」
お母様はわたしをみて震えていた。
お父様はわたしから目を逸らした。
「………全ての記憶が戻りました」
「え?」
二人は驚いた顔をしてわたしを見つめた。
「以前のわたしは全てを知っていたのですね、お父様とお母様からの謝罪も受け入れて……そしてお姉様夫婦を避けるためにここで暮らしていたのですね。わたしを守るために」
「全ては愚かなわたしの行いがセシルを狂わせカトリーヌを不幸にしたんだ」
「ごめんなさい。カトリーヌが生まれてきてくれて嬉しかったの、なのにあなたを見ないようにしていたわ。どうしてもあなたを見ると主人とのことを思い出すし、お母様のことも考えてしまっていたの、わたしは母親失格なの」
「一度は二人の謝罪を受け入れました。だからそれを取り消すつもりはありません……でももう一緒に住むことはできない…わたしはこの容姿がここまで人を不幸にするとは思っていませんでした……お祖母様が自殺されたのもなんだかわかる気がします……」
「…あっ………ち、違う、お母様はとても綺麗だった、そして優しくて……みんなに愛されていたの。でも……何故か周りの人たちが彼女に魅了されて狂ってしまうの……そんなお母様にあなたも似てしまった。わたしは見て見ぬ振りをした、気がつかないふりをした。何も知らない、何も……夫がわたしの不貞を疑ってもわたしは無視したの。
もうあんな辛い思いはしたくなかった。お母様が亡くなった後お父様は狂っていった。
ごめんなさい……怖かった、あなたを愛しているのに……あなたがどんどんお母様に似ていくのが怖かった……陛下はそんなわたしに気がついて代わりにあなたを守ろうとしてくれた。イーサン殿下があなたを好いてくれていたから婚約者にしてあなたを周りの悪意から守ろうとしてくれたの」
「イーサン殿下には確かに酷いことしかされませんでしたが陛下はいつもわたしを温かい目で見守ってくださいました。いつもわたしを守ってくれていたのですね」
ーー今ならわかる。陛下がどうして婚約解消しなかったか……そしてわたしが彼を愛していたことも陛下はわかっていたのだ。
でもその記憶は消えて無くなり、イーサン殿下を嫌うわたししか残っていなかった。だから……わたしのために婚約解消をしてくれた。
「お母様……わたしは、この国を出ようと思います。幸い私は外国語を話すことができます。わたしの髪の色を普通に受け入れてくれる国があるとジャン様が教えてくれました。その国へ行こうと思います。わたしがこの国に居ればまた問題が起きるだけです。それならばこの国を出たいと思っています」
「………わたし達はセシルだけではなくてカトリーヌのことも失ってしまうの?」
戸惑いを隠せないお母様は目に涙をためてわたしを見つめた。
「違います、わたしはもともと存在しなかったのです、だから失うことはありません」
「どこへ行こうとしているんだ?」
「ジャン・マグワイアがオリソン国を紹介してくれました。あそこは自由の国だそうです。わたしのような容姿も受け入れてくれると聞きました。まだ新しくなったばかりの国で治安は少し悪いところもあるけど最近は落ち着いてきたそうです。
わたしのような者が一から出直すには良い国なのだそうです……そこの学校の寮に入り学校へ通いたいと思っています。許可をいただけませんか?」
「……わたし達に反対など出来るわけがない。
だが……出来ればわたし達とやり直して欲しかった。
…………全てこちらで手配はしよう」
「ありがとうございます、わたしは生まれてきて良かったと思える人生をこれからは歩んでいきたいと思っています」
お母様は泣き崩れて何も言わなかった。
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