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さよなら。
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帰国の前に両親にもう一度会うことになった。
「侯爵様、除籍の書類にサインをしにきました」
「……書類は用意していない」
「どうしてですか?」
「考える時間を欲しいと頼んだはずだ。そして……どんなにカトリーヌがわたし達を拒絶しても親であることをやめることはしないと決めた」
「わたしを解放しては頂けないのですか?」
「………すまない…セシルを失ってお前まで失うなんて無理だ」
「わたしは最初からこの家で存在すら無視され続けた娘ですよ?それこそ今更でしょう?」
「全てわたしの責任だ。カトリーヌがこの国でどんな目に遭っていたか知ろうともしなかった」
「わたしの所為です。わたしがカトリーヌのことを見ようとしなかったから……」
ーーもうこの話はしたくない。何度繰り返しても元に戻ることはないのだから。
「ハッキリと言います。カトリーヌ・ブランゼルはもういません。わたしはただのカトリーヌです。貴方達の娘はいないのです」
「………親になる資格があるとは思っていない。ただイーサン殿下ともう一度婚約するならブランゼルの名が必要になる。いくらイーサン殿下が廃嫡されようと王族なんだ。平民になったカトリーヌとの婚姻は難しい。せめて家名だけでも残して利用して欲しい」
「……ご存知なのですか?」
「殿下から知らせが入った。本当は君の希望通りに除籍の準備を進めていた。しかし二人の婚姻にはブランゼルの名が必要だ。婚姻まではうちの名を利用して欲しい。君の親でいたいのではない、せめてもの罪滅ぼしとして我が家名を使い捨ててくれ」
「……わかりました……わたしは午後こちらの国を出ます。もう二度とこの国に戻ることはないでしょう。侯爵夫妻のご厚意感謝いたします」
ーーお父様、お母様、ありがとう。素直になれなくてごめんなさい。お二人の姿忘れないでいます。
わたしがこの国に留まればまた誰かの悪意で事件が起きるかもしれません。
わたしのこの容姿が人の心を惑わすのならわたしはもうこの国で過ごすことはできない。新しい養子を迎えて幸せに暮らして欲しい。
でも本心は伝えるつもりはない。
帰る前に料理長達に挨拶をした。
「ミントをよろしくお願いします」
みんなにミントのことをお願いして、この国を去る。
「嬢ちゃん、元気でな」
最後に抱き合って別れを惜しんだ。
イーサン殿下はこの国でやるべきことを終わらせたら特使としてオリソン国に向かうと約束してくれた。
屋敷を出る時、わたしは門の前で深々と頭を下げた。わたしの見送りは断った。
もう二度と会えないからこそ辛い別れはしたくない。
リーゼ様が用意してくれた馬車に乗り込んだ。
もう二度と来ることがないであろう屋敷をしっかり記憶にとどめて
「今までありがとうございました」
わたしは馬車の中で見えなくなった屋敷の方へ向かって呟いた。
港に着くと船に乗り込む。
他の人たちはたくさんの見送りがいる中、わたしは一人っきりで船に乗る。
ーー寂しい?ううん、もう大丈夫。
この国に思い残すことはない。
だってわたしの住む場所は居場所はオリソン国にあるのだから。
たくさんのお土産を買ってみんなの元に帰る。
前回はここからイーサン殿下がこっそりと見送りに来てくれていた。
手を振り別れたけどその後連絡することはなかった。
それなのに今彼との未来が待っている。
そんなことを考えながらたくさんの見送りの人たちを船の上で眺めた。
ーーまさか……
………お父様?お母様?
さっき別れた二人がわたしの方を見ている。
あんなに冷たく別れたのに。許してあげなかったのに。
ーーどうして?もう二度と会うことなんてないと思って別れたのに………
もう船が出る。
遠くて声を張り上げても聞こえない。
わかっているのに………
「お父様!お母様!本当は大好きなんです!ごめんなさい素直になれなくて、ごめんなさい親不孝で。ごめんなさい、もう会えないけど本当は二人の娘でずっといたかった。だから嬉しかった。ありがとう、最後に会えて嬉しいです」
わたしは大きく手を振った。
そしたら……手を振りかえしてくれた。
いつかまた素直に会える時が来るなら……
その時は「お父様、お母様」と呼ばせて欲しい………
「侯爵様、除籍の書類にサインをしにきました」
「……書類は用意していない」
「どうしてですか?」
「考える時間を欲しいと頼んだはずだ。そして……どんなにカトリーヌがわたし達を拒絶しても親であることをやめることはしないと決めた」
「わたしを解放しては頂けないのですか?」
「………すまない…セシルを失ってお前まで失うなんて無理だ」
「わたしは最初からこの家で存在すら無視され続けた娘ですよ?それこそ今更でしょう?」
「全てわたしの責任だ。カトリーヌがこの国でどんな目に遭っていたか知ろうともしなかった」
「わたしの所為です。わたしがカトリーヌのことを見ようとしなかったから……」
ーーもうこの話はしたくない。何度繰り返しても元に戻ることはないのだから。
「ハッキリと言います。カトリーヌ・ブランゼルはもういません。わたしはただのカトリーヌです。貴方達の娘はいないのです」
「………親になる資格があるとは思っていない。ただイーサン殿下ともう一度婚約するならブランゼルの名が必要になる。いくらイーサン殿下が廃嫡されようと王族なんだ。平民になったカトリーヌとの婚姻は難しい。せめて家名だけでも残して利用して欲しい」
「……ご存知なのですか?」
「殿下から知らせが入った。本当は君の希望通りに除籍の準備を進めていた。しかし二人の婚姻にはブランゼルの名が必要だ。婚姻まではうちの名を利用して欲しい。君の親でいたいのではない、せめてもの罪滅ぼしとして我が家名を使い捨ててくれ」
「……わかりました……わたしは午後こちらの国を出ます。もう二度とこの国に戻ることはないでしょう。侯爵夫妻のご厚意感謝いたします」
ーーお父様、お母様、ありがとう。素直になれなくてごめんなさい。お二人の姿忘れないでいます。
わたしがこの国に留まればまた誰かの悪意で事件が起きるかもしれません。
わたしのこの容姿が人の心を惑わすのならわたしはもうこの国で過ごすことはできない。新しい養子を迎えて幸せに暮らして欲しい。
でも本心は伝えるつもりはない。
帰る前に料理長達に挨拶をした。
「ミントをよろしくお願いします」
みんなにミントのことをお願いして、この国を去る。
「嬢ちゃん、元気でな」
最後に抱き合って別れを惜しんだ。
イーサン殿下はこの国でやるべきことを終わらせたら特使としてオリソン国に向かうと約束してくれた。
屋敷を出る時、わたしは門の前で深々と頭を下げた。わたしの見送りは断った。
もう二度と会えないからこそ辛い別れはしたくない。
リーゼ様が用意してくれた馬車に乗り込んだ。
もう二度と来ることがないであろう屋敷をしっかり記憶にとどめて
「今までありがとうございました」
わたしは馬車の中で見えなくなった屋敷の方へ向かって呟いた。
港に着くと船に乗り込む。
他の人たちはたくさんの見送りがいる中、わたしは一人っきりで船に乗る。
ーー寂しい?ううん、もう大丈夫。
この国に思い残すことはない。
だってわたしの住む場所は居場所はオリソン国にあるのだから。
たくさんのお土産を買ってみんなの元に帰る。
前回はここからイーサン殿下がこっそりと見送りに来てくれていた。
手を振り別れたけどその後連絡することはなかった。
それなのに今彼との未来が待っている。
そんなことを考えながらたくさんの見送りの人たちを船の上で眺めた。
ーーまさか……
………お父様?お母様?
さっき別れた二人がわたしの方を見ている。
あんなに冷たく別れたのに。許してあげなかったのに。
ーーどうして?もう二度と会うことなんてないと思って別れたのに………
もう船が出る。
遠くて声を張り上げても聞こえない。
わかっているのに………
「お父様!お母様!本当は大好きなんです!ごめんなさい素直になれなくて、ごめんなさい親不孝で。ごめんなさい、もう会えないけど本当は二人の娘でずっといたかった。だから嬉しかった。ありがとう、最後に会えて嬉しいです」
わたしは大きく手を振った。
そしたら……手を振りかえしてくれた。
いつかまた素直に会える時が来るなら……
その時は「お父様、お母様」と呼ばせて欲しい………
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