【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ

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53話  レンス編

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生まれた時からお母様だけがいつもそばに居てくれた。

大きな家。

沢山の人達。

いつもお母様を見てビクビクしている人達。

偶にお母様は遠くを見ている。

大きくてかっこよくてみんなが頭を下げる男の人。
みんなから「陛下」と言われている。

お母様は悲しそうな顔をして

「レンス行きましょう」
と、僕を見ると優しく微笑む。


そしてまた、悲しそうに部屋から窓の下を見ている。

それはいつも決まった日、決まった時間。

その間僕は、お母様には話しかけない。

だってあんなに窓の外を真剣に見ているんだもん。

話しかけて邪魔をしたくない。

でもいつも気になっていた。

何を見ているのか。

僕の背が椅子がなくても、窓の外を見れるようになった時、お母様の横にそっと行く。そしてお母様の目線の先を探した。

そこには偶に見かけるお兄様がいた。

お母様の後ろ姿か横顔しか見ていなかった僕は、初めて窓の外を見ているお母様の顔を見た。

とても切なそうに、なのに嬉しそうに見ていた。

お兄様は剣術の授業中で、とってもかっこいい。

僕はそれからお母様の横でいつもお兄様の剣術の姿を見て過ごした。

お母様は、僕が横に来ても何も言わなかった。

その間、二人で黙ってお兄様の姿を見るのが日課になった。

お母様と僕は、本宮の中の南宮というところに住んでいる。

沢山の人がいるが、みんな僕たちから目を逸らす。

お母様がいつもイライラして人に当たって、物を投げたり怒鳴ったりするからだと思う。

「お母様、やめて!」
僕がお母様に悲しそうな顔をしていると

「レンス、ごめんなさい。お母様は駄目な人よね」
と悲しそうにしている。

僕のお母様はいつも悲しそうにしているのに

誰も慰めてくれない。

怖がってそばに近づこうともしない。

だから、僕はお母様を守るんだ。

ずっとそばに居てあげるからね、お母様、泣かないで。

偶に僕とお母様に会いに来るお祖父様。

お祖父様が来た日はお母様は、周りの人に当たり散らす。
いろんな物が壊れて、床がベタベタしている。

お母様は、暴れ終わると、
「レンス、レンス?」
と、僕を探して、僕をギュウっと抱きしめる。

「愛しているわ、レンス」

お母様は何故かお祖父様に会うと泣きながら僕を抱きしめる。

最近、僕が近くにいても機嫌が悪い時がある。

夢中で遊んでいるをしていると、
「今日もちゃんと薬を入れたわね?」
と、女の人に聞いている。

「…へい……しん………ば………わ」
お母様の声が小さくてよく聞こえなかった。

でも最近よく「陛下」と言う言葉を耳にする。

「陛下」とは、あの大きくてかっこよくてみんなが頭を下げる男の人だ。

一度でいいから近くに行って見てみたい。

ちょっとドキドキするけど、かっこいいんだろうな。
どんな声なんだろう?

僕のこと知っているかな?

知らないよね、だって会ったことないんだもん。

最近お母様の様子が益々おかしくなった。

大好きな外も見ない。

そんな時お兄様が僕に会いに来るようになった。

ほとんど話したことがなかったお兄様。

お母様が、体調を崩して寝込むことが増えて僕は退屈だったから、いつも遠くから見ていたお兄様と話せるのが嬉しかった。

でもお兄様はお母様には会いに来ない。

「どうしてなの?」
と聞くと、寂しそうに

「僕は嫌われているから会えないんだ」
と言った。

「会っている事は言っては駄目だよ。わかったら禁止されてしまうからね」
お兄様は、辛そうに僕に言った。

なんでみんないつも寂しそうにしているんだろう?

そんな辛い顔ばかりしないで仲良く出来ないのか、お兄様に聞いたら、
「そんな日が来るのは夢のまた夢だね。いつか夢の中なら仲良く出来るかもしれないな」
と言った。

お兄様はお祖父様が会いに来るか聞いてきた。

僕は正直に答えた。

お祖父様が来るとお母様がおかしくなる事。

お母様はいつも寂しそうにしていて、今は寝込んでいることが多いと言うと、
「そうか……」
と、ボソッと言って黙ってしまった。

それからはお兄様がたまに会いに来てくれて、一緒に剣術を習ったりした。

でも夜になると怖くて寂しくて、お母様のベッドに行って、お母様に引っ付いて寝ていた。

お母様は体調が悪くても、「おいで」と言って隣に寝かせてくれた。

お母様の匂い、あったかくてくすぐったくて、大好きなお母様。

なのにお母様が僕の前からいなくなった。

「ねえ?お母様は?」
周りの人達に聞いても、誰も答えてくれなかった。

一生懸命探して回った。

いつもいる南宮を出て、本宮に行って大人の人達に聞いて回った。

だけどみんな暗い顔をして、首を横に振るんだ。

「知らない」って。

「おかあさまぁ!」

大きな声で、喉が枯れるまで泣き叫んだ。

でもお母様は帰ってこなかった。

僕はこれから一人で生きて行かないといけない。

9歳の僕では何も出来ない。
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