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(まだ)離縁しません
中編 11
アルバードがため息をついてフランをそっとソファに座らせた。
「お菓子でも食べましょう、姉上」
「アル!これフランが、つくったの!たべて」
そう言って指さしたのはちょっとアレなカップケーキと本人曰く猫さんだと言いはる、歪な形のクッキー。
「これはフラン様が作られたのですか?」
「うん!アンナといっしょに!」
「いただきます」
カッコつけて座ってるアルバード。
君は気がついていないね。
服にフランの鼻水がたっぷりついていることを。
いつ伝えようかと迷っていると、突然旦那様が部屋に入ってきた。
「遅くなってすまなかった」
旦那様は急いで戻ってきてくれたのだろう。
汗をハンカチでさっと拭いて、アルバードに挨拶をした。
普段はあまり笑わない旦那様が、ものすごい作り笑いをして愛想よく挨拶するのを横目に見ながらわたしはフランの作ってくれたカップケーキを食べた。
やっぱりフランの作ったカップケーキは美味しい。
生クリームが山ほどのって、大好きなさくらんぼがいっぱいのったケーキ、一人で美味しくいただいていると旦那様がチラッとわたしの顔を見て笑い出した。
ーーうん??作り笑いじゃない??
怪訝な顔をして旦那様を見ると、わたしの顔を指さした。
そしてすぐに旦那様の顔……いや口に指を刺し「ついてる」とニコッと笑い教えてくれた。
ーーえっ?
急いで手で口を触る。
ーーうん、手にクリームが……
真っ赤な顔になって急いでハンカチで口を拭く。
フランの愛情たっぷりの生クリームが思った以上に多かったみたい。
旦那様も席に座りアルバードと楽しそうに会話をしている。
わたしとフランはそばでおやつを食べていた。
あの堅物で生真面目なアルバードが多少は作り笑いをしているのだろうけど、旦那様と会話をしている。
それがなんとも不思議な光景でわたしはフランが膝に乗ってきたことも気づかずにチラチラと見ていた。
「……………アンナ、ねえ?アンナ?」
「う、うん??」
声が近い。ふと見るとフランが膝の上に座って……
「フ、フラン?えっ?どうしてここにいるの?」
「お膝座っていいってきいたもん」
「あっ……ごめんごめん、フランどうしたの?」
「あのね、アンナ……おこらない?」
「もちろん、怒らないわよ?で、なにかしら?」
「…………アンナのふく、クリームいっぱいなの」
ーーえっ?
フランを膝からおろして、ワンピースを見た。
ーース、スカートが……クリームとジャムとチョコレートで………
「う、うわああー!!」
思わず叫んだら……
「姉上!!」
アルバードがそばに来て「何やらかしてるんですか!!」とわたしを叱った。
「えっ!わたし?どう見てもわたしがするわけないじゃないの?」
「姉上ならやりかねません!」
「違うわよ!」
「じゃあ……フラン様?」
フランはプイッと横を向いて「……ぼく」と小さな声で答えた。
いつものフランなら『ぼくじゃないもん!』と逃げるのに、今日はちゃんと認めた。
うちの天使がさらに天使になって、真っ赤な顔をしてプルプル震えてる。
恥ずかしいの?それとも悔しくて?
わたしがニマニマと笑いを隠しながらフランを覗くと「あっちいけ!」と手でわたしの顔をはたいた。
いつもの悪魔のフランに戻っていた。
それを見たアルバードが「姉……」声を出そうとしたのでわたしは『やめて』と手で止めた。
フランは自分の過ちをすぐ他人のせいにしてしまう。だけど4歳ながらに今必死で自分の中で格闘してる。
もうその姿が可愛くてわたしはじっと黙って見ていた。
旦那様は何も言わずにそんなわたしとフランを見ているのだけど、フランはそのことにもちろん気づかないで、必死でわたしとアルバードにどうしようか小さな頭の中で考えている。
半べそになりながら「ぼく、アンナのふくよごした……アンナ、おかお、いたい?ごめんなさい……」と言った。
ーーいや、もう、充分です!もうそれ以上は……プルプルしながら泣くのを堪えて自分の過ちを認めるフランに、わたしは胸がいたい。
「フラン、アンナは怒ってないから大丈夫よ?」
そう言って抱きしめようとすると、
「汚いからぼくだっこ、いや!」とまた手で振り払われた。
「だよね?着替えましょう。それからアルバードもそろそろ服着替えましょうね?」
「姉上、ぼくは食べ物で服を汚したりしませんよ?」
「もちろん知ってるわ。でもね、さっきフランが泣いている時に抱っこしたでしょう?素敵なフランの鼻水が服にいっぱいついているわよ?」
「えっ?ええ?」
アルバードは真っ赤になって「姉上!どうしてもっと早く教えてくれないんですか?義兄上の前で恥をかいたじゃないですか!」とすっごく怒られた。
旦那様はそんなわたし達を見て。
「フランが素直に謝った⁉︎」
「義兄上……」
と、一人しみじみと呟いていた。
「アンナ、僕が用意してあったドレスに着替えておいで。アルバードに君の伯爵夫人としての姿を見せてあげたいんだ」
ーーええ?今更?面倒なんだけど。
「はい、旦那様。かしこまりました」
わたしは、思いっきりの作り笑いで返事をした。
「アンナ、きれいなドレス?ぼくもおてつだい、する」
「フランはついて行かなくていいだろう?」
「いや!いくの!じゃあ、とうさまもくる?」
「父様は、邪魔になるからいかないよ」
「とうさまは、アンナきらいだもん」
「嫌いじゃないよ」
「でもとうさまとアンナはいっつもべつべつ、だもん」
「それは大人だからね?」
旦那様がにこやかに笑った。
ーーうん、大人の対応ね。
「とうさまは、アンナとべつべつなの、おとなだから?だからいつもひとりでねるの?」
「仕事が忙しいのよ、旦那様は」
慌ててわたしも口を挟んだ。
「ふうん、およめさんって、しようにん、とおなじなんだ」
「どういうことですか?」
アルバードが怖い。怖すぎる。
◆ ◆ ◆
更新遅くなりました。すみません。
「お菓子でも食べましょう、姉上」
「アル!これフランが、つくったの!たべて」
そう言って指さしたのはちょっとアレなカップケーキと本人曰く猫さんだと言いはる、歪な形のクッキー。
「これはフラン様が作られたのですか?」
「うん!アンナといっしょに!」
「いただきます」
カッコつけて座ってるアルバード。
君は気がついていないね。
服にフランの鼻水がたっぷりついていることを。
いつ伝えようかと迷っていると、突然旦那様が部屋に入ってきた。
「遅くなってすまなかった」
旦那様は急いで戻ってきてくれたのだろう。
汗をハンカチでさっと拭いて、アルバードに挨拶をした。
普段はあまり笑わない旦那様が、ものすごい作り笑いをして愛想よく挨拶するのを横目に見ながらわたしはフランの作ってくれたカップケーキを食べた。
やっぱりフランの作ったカップケーキは美味しい。
生クリームが山ほどのって、大好きなさくらんぼがいっぱいのったケーキ、一人で美味しくいただいていると旦那様がチラッとわたしの顔を見て笑い出した。
ーーうん??作り笑いじゃない??
怪訝な顔をして旦那様を見ると、わたしの顔を指さした。
そしてすぐに旦那様の顔……いや口に指を刺し「ついてる」とニコッと笑い教えてくれた。
ーーえっ?
急いで手で口を触る。
ーーうん、手にクリームが……
真っ赤な顔になって急いでハンカチで口を拭く。
フランの愛情たっぷりの生クリームが思った以上に多かったみたい。
旦那様も席に座りアルバードと楽しそうに会話をしている。
わたしとフランはそばでおやつを食べていた。
あの堅物で生真面目なアルバードが多少は作り笑いをしているのだろうけど、旦那様と会話をしている。
それがなんとも不思議な光景でわたしはフランが膝に乗ってきたことも気づかずにチラチラと見ていた。
「……………アンナ、ねえ?アンナ?」
「う、うん??」
声が近い。ふと見るとフランが膝の上に座って……
「フ、フラン?えっ?どうしてここにいるの?」
「お膝座っていいってきいたもん」
「あっ……ごめんごめん、フランどうしたの?」
「あのね、アンナ……おこらない?」
「もちろん、怒らないわよ?で、なにかしら?」
「…………アンナのふく、クリームいっぱいなの」
ーーえっ?
フランを膝からおろして、ワンピースを見た。
ーース、スカートが……クリームとジャムとチョコレートで………
「う、うわああー!!」
思わず叫んだら……
「姉上!!」
アルバードがそばに来て「何やらかしてるんですか!!」とわたしを叱った。
「えっ!わたし?どう見てもわたしがするわけないじゃないの?」
「姉上ならやりかねません!」
「違うわよ!」
「じゃあ……フラン様?」
フランはプイッと横を向いて「……ぼく」と小さな声で答えた。
いつものフランなら『ぼくじゃないもん!』と逃げるのに、今日はちゃんと認めた。
うちの天使がさらに天使になって、真っ赤な顔をしてプルプル震えてる。
恥ずかしいの?それとも悔しくて?
わたしがニマニマと笑いを隠しながらフランを覗くと「あっちいけ!」と手でわたしの顔をはたいた。
いつもの悪魔のフランに戻っていた。
それを見たアルバードが「姉……」声を出そうとしたのでわたしは『やめて』と手で止めた。
フランは自分の過ちをすぐ他人のせいにしてしまう。だけど4歳ながらに今必死で自分の中で格闘してる。
もうその姿が可愛くてわたしはじっと黙って見ていた。
旦那様は何も言わずにそんなわたしとフランを見ているのだけど、フランはそのことにもちろん気づかないで、必死でわたしとアルバードにどうしようか小さな頭の中で考えている。
半べそになりながら「ぼく、アンナのふくよごした……アンナ、おかお、いたい?ごめんなさい……」と言った。
ーーいや、もう、充分です!もうそれ以上は……プルプルしながら泣くのを堪えて自分の過ちを認めるフランに、わたしは胸がいたい。
「フラン、アンナは怒ってないから大丈夫よ?」
そう言って抱きしめようとすると、
「汚いからぼくだっこ、いや!」とまた手で振り払われた。
「だよね?着替えましょう。それからアルバードもそろそろ服着替えましょうね?」
「姉上、ぼくは食べ物で服を汚したりしませんよ?」
「もちろん知ってるわ。でもね、さっきフランが泣いている時に抱っこしたでしょう?素敵なフランの鼻水が服にいっぱいついているわよ?」
「えっ?ええ?」
アルバードは真っ赤になって「姉上!どうしてもっと早く教えてくれないんですか?義兄上の前で恥をかいたじゃないですか!」とすっごく怒られた。
旦那様はそんなわたし達を見て。
「フランが素直に謝った⁉︎」
「義兄上……」
と、一人しみじみと呟いていた。
「アンナ、僕が用意してあったドレスに着替えておいで。アルバードに君の伯爵夫人としての姿を見せてあげたいんだ」
ーーええ?今更?面倒なんだけど。
「はい、旦那様。かしこまりました」
わたしは、思いっきりの作り笑いで返事をした。
「アンナ、きれいなドレス?ぼくもおてつだい、する」
「フランはついて行かなくていいだろう?」
「いや!いくの!じゃあ、とうさまもくる?」
「父様は、邪魔になるからいかないよ」
「とうさまは、アンナきらいだもん」
「嫌いじゃないよ」
「でもとうさまとアンナはいっつもべつべつ、だもん」
「それは大人だからね?」
旦那様がにこやかに笑った。
ーーうん、大人の対応ね。
「とうさまは、アンナとべつべつなの、おとなだから?だからいつもひとりでねるの?」
「仕事が忙しいのよ、旦那様は」
慌ててわたしも口を挟んだ。
「ふうん、およめさんって、しようにん、とおなじなんだ」
「どういうことですか?」
アルバードが怖い。怖すぎる。
◆ ◆ ◆
更新遅くなりました。すみません。
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