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にじゅうきゅう。
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学校に再び通い出した。
兄様の家から学校へは公爵家のタウンハウスから通うよりも時間はかかるけど、さほど気にならなかった。心も時間も逆にゆとりが出来た気がする。
週末はセルジオ様の屋敷に行き、約束通り家庭教師に教えてもらい勉強をみてもらっている。
兄さまの家なら多分家庭教師をつけてもらえただろう。セルジオと婚約して勉強する必要はなかったなと今なら思うけど、あの時はこれが正解だと思ってた。
だって簡単に逃げ出せない場所だと思ってたから。
昼休みは王族専用の特別室に通っている。
王太子殿下もオスカー殿下も何故かそこに行くようにとわたしに勧めてくれた。
ありがたいと素直にそこを使わせてもらっている。静かに勉強ができてなかなかいい。
そんなある日、勉強をしていたら廊下が騒がしくなった。
「ふふ。この場所に一度来てみたかったの。同じ学校の廊下なのに全然造りが違うのよね。扉一つにしても彫刻を施しているし、壁も……この壁は何かしら?不思議な手触りだわ。白くてざらっとした感じで……とても素敵ね。ああ、早く王宮で暮らしたいわ。王子妃として暮らせれば贅沢もできるし宝石も買い放題よ!」
護衛騎士達は何故か彼女を止めようとしない。
好き勝手なことを言っているのに。
オスカー殿下もにこにこと隣で笑っている。
「アイリ様……」
部屋から出れば彼女と顔を合わせてしまう。なんだか嫌な予感しかしない。
ーーーうん、隠れよう。オスカー殿下もここには連れてこないだろう。
中からこっそり鍵を閉めた。
そしてまた椅子に座り勉強を始めた。
ガチャガチャッ!
「ねぇ、ここの部屋は鍵が掛かってるわ。中を見たいから開けて欲しいの」
ーーーなんで!他の部屋を見ればいいじゃない!
「ここは今使用中だからダメだよ」
オスカー殿下!ナイス!
「アイリぃ、ここの部屋も見てみたい。どうしてもダメぇ?」
ーーーいやいや、ふつう、使用中だと聞いたら諦めるよね?
「ごめんね。中の人も困ると思うんだ。突然開けられたら。だから他の部屋に行こう」
「ええーー、全部の部屋を見たかったのにぃ」
そう言えばオスカー殿下がアイリ様のことよく見ておいてって以前言ってたよね?
このことなのかな?
周りの人のことも考えずに行動するところ?
うーん、あんまり関わったことがないからわかんない。アイリ様って甘え上手なのかしら?
やっと静かになったはいいけど、午後からの授業……どうしよう。
そろそろ時間なのに……アイリ様達はどうするのかしら?
「アイリぃ、今日の授業サボりたぁい。オスカー様と一緒にここでゆっくりしたいわ」
「僕はサボるわけにはいかないよ。みんなに悪い影響を与えるわけにはいかないからね。アイリも一緒に頑張ろう」
「でもぉ、アイリ、なんだか体調が悪いみたい。オスカー様、触ってみて。胸が苦しいの」
ーーーお、おお、なんかすごい展開になってる。
わたし、この部屋にいること殿下知ってるわよね?やめて!変なこと廊下でしないで!
「体調が悪いなら医務室に連れて行こう。王族専用の医師がここには常駐しているから安心して」
「もう!わかってるくせに!今日のオスカー様、なんだかいつもと違うわ。いつもならわたしの言うことなんでも聞いてくれるのに!効きが悪いのかしら?」
ーーー効きが悪い?
この言葉………キャサリン様と同じ……?
まだ兄様から話は聞いていない。
公爵夫婦のこと、そしてキャサリン様の犯罪のことも。あれからどうなったのか……
なんとなく自分からは聞きにくいし聞きたいとは思わなかった。だけど何か嫌な気分がする。
みんな知っているのにわたしだけ知らない何か………
「僕はアイリのためならなんだって聞いてあげたい。だけど王族として模範となるように過ごさなければいけないんだよ、ごめんね」
「もういいわっ、授業に行きましょう」
ーーーふう、助かった。
少し時間を置いて部屋を出るしかない。
あれはなんだったのだろう。
教室に戻るとやはり授業が始まっていた。
オリヴィアがわたしの顔を見るとホッとした顔をした。遅れてきたから心配してくれていたみたい。
放課後になると図書室にいつもなら向かうのだけど今日はセルジオに会いに彼の教室へ急いで向かった。
まだいるだろうか?
教室を覗くと、セルジオはオスカー殿下と反対の扉から出ていくところだった。
「あ、セルジオ……」
殿下がいるのに大きな声は出せない。
慌てて後を追う。
やはり王族専用の特別室の方へ向かっている。
ーーーアイリ様は?
いつもうるさいくらいオスカー殿下のそばに居るのに。ふと他のところへ目をやるとアイリ様は他の男子生徒達の腕に絡まったりして楽しそうに話している姿が見えた。
それをオスカー殿下は目線をやることもなくセルジオと話しながら歩いていた。
今まで関わることもなかったアイリ様。確かに観察すると面白い。
オスカー殿下達のことはつい忘れてアイリ様の姿をしばらくみていた。
すると………
「キャサリン様?」
アイリ様のところに親しげにキャサリン様が来た。
年齢が2歳違う。
それにキャサリン様はまだ社交界もデビューしてないはず。
ずっと引っかかる違和感。二人とはあまり接していないのでよくわからないけど……
『効きが悪い』あの言葉が妙に引っかかる。
兄様の家から学校へは公爵家のタウンハウスから通うよりも時間はかかるけど、さほど気にならなかった。心も時間も逆にゆとりが出来た気がする。
週末はセルジオ様の屋敷に行き、約束通り家庭教師に教えてもらい勉強をみてもらっている。
兄さまの家なら多分家庭教師をつけてもらえただろう。セルジオと婚約して勉強する必要はなかったなと今なら思うけど、あの時はこれが正解だと思ってた。
だって簡単に逃げ出せない場所だと思ってたから。
昼休みは王族専用の特別室に通っている。
王太子殿下もオスカー殿下も何故かそこに行くようにとわたしに勧めてくれた。
ありがたいと素直にそこを使わせてもらっている。静かに勉強ができてなかなかいい。
そんなある日、勉強をしていたら廊下が騒がしくなった。
「ふふ。この場所に一度来てみたかったの。同じ学校の廊下なのに全然造りが違うのよね。扉一つにしても彫刻を施しているし、壁も……この壁は何かしら?不思議な手触りだわ。白くてざらっとした感じで……とても素敵ね。ああ、早く王宮で暮らしたいわ。王子妃として暮らせれば贅沢もできるし宝石も買い放題よ!」
護衛騎士達は何故か彼女を止めようとしない。
好き勝手なことを言っているのに。
オスカー殿下もにこにこと隣で笑っている。
「アイリ様……」
部屋から出れば彼女と顔を合わせてしまう。なんだか嫌な予感しかしない。
ーーーうん、隠れよう。オスカー殿下もここには連れてこないだろう。
中からこっそり鍵を閉めた。
そしてまた椅子に座り勉強を始めた。
ガチャガチャッ!
「ねぇ、ここの部屋は鍵が掛かってるわ。中を見たいから開けて欲しいの」
ーーーなんで!他の部屋を見ればいいじゃない!
「ここは今使用中だからダメだよ」
オスカー殿下!ナイス!
「アイリぃ、ここの部屋も見てみたい。どうしてもダメぇ?」
ーーーいやいや、ふつう、使用中だと聞いたら諦めるよね?
「ごめんね。中の人も困ると思うんだ。突然開けられたら。だから他の部屋に行こう」
「ええーー、全部の部屋を見たかったのにぃ」
そう言えばオスカー殿下がアイリ様のことよく見ておいてって以前言ってたよね?
このことなのかな?
周りの人のことも考えずに行動するところ?
うーん、あんまり関わったことがないからわかんない。アイリ様って甘え上手なのかしら?
やっと静かになったはいいけど、午後からの授業……どうしよう。
そろそろ時間なのに……アイリ様達はどうするのかしら?
「アイリぃ、今日の授業サボりたぁい。オスカー様と一緒にここでゆっくりしたいわ」
「僕はサボるわけにはいかないよ。みんなに悪い影響を与えるわけにはいかないからね。アイリも一緒に頑張ろう」
「でもぉ、アイリ、なんだか体調が悪いみたい。オスカー様、触ってみて。胸が苦しいの」
ーーーお、おお、なんかすごい展開になってる。
わたし、この部屋にいること殿下知ってるわよね?やめて!変なこと廊下でしないで!
「体調が悪いなら医務室に連れて行こう。王族専用の医師がここには常駐しているから安心して」
「もう!わかってるくせに!今日のオスカー様、なんだかいつもと違うわ。いつもならわたしの言うことなんでも聞いてくれるのに!効きが悪いのかしら?」
ーーー効きが悪い?
この言葉………キャサリン様と同じ……?
まだ兄様から話は聞いていない。
公爵夫婦のこと、そしてキャサリン様の犯罪のことも。あれからどうなったのか……
なんとなく自分からは聞きにくいし聞きたいとは思わなかった。だけど何か嫌な気分がする。
みんな知っているのにわたしだけ知らない何か………
「僕はアイリのためならなんだって聞いてあげたい。だけど王族として模範となるように過ごさなければいけないんだよ、ごめんね」
「もういいわっ、授業に行きましょう」
ーーーふう、助かった。
少し時間を置いて部屋を出るしかない。
あれはなんだったのだろう。
教室に戻るとやはり授業が始まっていた。
オリヴィアがわたしの顔を見るとホッとした顔をした。遅れてきたから心配してくれていたみたい。
放課後になると図書室にいつもなら向かうのだけど今日はセルジオに会いに彼の教室へ急いで向かった。
まだいるだろうか?
教室を覗くと、セルジオはオスカー殿下と反対の扉から出ていくところだった。
「あ、セルジオ……」
殿下がいるのに大きな声は出せない。
慌てて後を追う。
やはり王族専用の特別室の方へ向かっている。
ーーーアイリ様は?
いつもうるさいくらいオスカー殿下のそばに居るのに。ふと他のところへ目をやるとアイリ様は他の男子生徒達の腕に絡まったりして楽しそうに話している姿が見えた。
それをオスカー殿下は目線をやることもなくセルジオと話しながら歩いていた。
今まで関わることもなかったアイリ様。確かに観察すると面白い。
オスカー殿下達のことはつい忘れてアイリ様の姿をしばらくみていた。
すると………
「キャサリン様?」
アイリ様のところに親しげにキャサリン様が来た。
年齢が2歳違う。
それにキャサリン様はまだ社交界もデビューしてないはず。
ずっと引っかかる違和感。二人とはあまり接していないのでよくわからないけど……
『効きが悪い』あの言葉が妙に引っかかる。
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