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バズールと二人でなかなか予約の取れない「マルシェ」へ向かった。
ドレスはバズールの家の馬車に置いてもらって二人で歩いた。
「君の働いている屋敷のお嬢様は頭がお花畑なんだろうね。自分を中心で回っていると思っているんだ。自分より身分も顔も上がいるって気がついていない一番厄介な奴だね」
バズールはとっても口が悪い。でも賢いしこうみえて優しいところもある。
わたしが困っていたり泣いていると「ったく仕方ないな」と言いながら助けてくれる。
「わたしは奥様付きなんであまり親しくはないのだけどメイド仲間曰く自分より可愛い子はそばにつけないらしいわ」
「あはは、ヤバイわ、ライナ早めにそんなところ辞めた方がいいと思うよ。ついでにシエルのことも考えた方がいいかも」
「………どうしてそんなことを言うの?」
「見たらわかるだろう?シエルは完全にリーリエ様に夢中だろう?」
わたしはバズールを睨みながらも唇を噛んでグッと堪えた。
ここで怒ったらわたしの負け。バズールはわたしを怒らせたいのだから。
「ふぅ、もういいわ、それよりもマルシェで美味しいもの食べましょう、ご馳走してくれるのでしょう?」
「もちろんだよ、あとお祖母様からたっぷりお小遣い貰ったんで、君のドレスに合わせてアクセサリーも買うように言われているよ」
「お祖母様から?」
暗い気持ちになっていたのでその言葉にワクワクした。
「うん、好きなものを選びなさいって言ってたから金額は気にしなくてもいいんじゃないかな」
「今日は寂しい誕生日になると思ったけどバズールのおかげで楽しい一日になりそう、付き合ってくれてありがとう」
わたしが素直に感謝を述べると少し照れたのか耳が少し赤い。
「ライナに感謝されるのもたまにはいいね」
とニヤッと笑って見せた。
シエルとは幼馴染だけど、バズールとは従兄弟同士で同じ年。だから全くお互い気取らないし気を遣わないので一緒にいても楽。
マルシェで大好きなお肉を堪能して、生クリームとイチゴがたくさん乗ったショートケーキをいただいた。
そしてドレスに合わせてダイヤモンドのピアスとネックレスを買ってもらった。
ま、これはお祖母様からの成人のお祝いなのでバズールがお金を払ったわけではないけど。
帰りに伯父様とお祖母様のところに顔を出してお礼を言った。
「ライナお誕生日おめでとう」
二人がわたしを抱きしめてお祝いの言葉を言ってくれた。
シエルからはメッセージカードも花束もなかったけど他の人からお祝いをもらったので、寂しくはなかった。
「ライナ、夜会でエスコート必要だったら俺に言って。いつでも代わりにエスコートしてあげるからな」
「……うん、もしもの時はよろしくお願いします」
今日のわたしは素直にバズールにお願いした。
だってたぶん……シエルは護衛が忙しくて夜会にすら参加しないだろうから。
ーー明日仕事に行って顔を合わせてもわたしのことなんて興味もないのだろうな。
ーーちょっとへこむ。
ーーーーー
「ライナ、話がある」
朝、伯爵家に着くと着替えをして控え室でゆっくりとしていたらシエルが怖い顔をして現れた。
「……シエル…どうしたの?」
シエルの顔つきからわたしに誕生日おめでとうなんて言ってくれるわけではないともちろんわかった。
でも……何を言われるのかわからなかった。
わたしが控え室から廊下に出ると睨んできた。
「何故バズールと一緒に買い物をしていたんだ?」
「え?ドレスを取りに行くのについて来てもらっただけよ?」
「リーリエ様はとても傷ついていたんだ。バズールはなんであんな態度をとったんだ?」
「あんな態度?バズールの態度におかしいところはなかったはずよ」
「リーリエ様が学校で食事を一緒にしてあげると言ったのに断ったじゃないか」
「それはバズールも言ったでしょう?友人でも知人でもない挨拶しただけの関係なのだから、してあげるはないと思うわ」
「リーリエ様に誘われて喜ばない男なんているわけがないだろう」
「……はあ……………いるから断ったのではないのかしら?それにバズールは伯爵家の嫡男よ、別にリーリエ様のご機嫌伺いなんてする必要はないのだからわたしに文句を言うのはおかしいのではないかしら?」
バチっ!
ーーえ?どうしてわたしが頬を叩かれるの?
わたしは痛いよりもいきなり叩かれたことがショックだった。それもいつも笑顔を絶やさないシエルが訳もなくわたしを叩いた。
「…あっ……ライ……ナ………ご、ごめん」
シエル自身も自分が手を出したことに慌てていた。
「シエルわたしはあなたにどうして叩かれないといけないのかしら?昨日はわたしとの約束を断ったからバズールに付き合ってもらったの。昨日だけは一緒にいて欲しかった。なのに……」
控え室から出て来たメイドの仲間達がわたしの頬を見て「ライナ?どうしたの?」
「頬を急いで冷やさないと!」
わたしは半べそになっていたのに、みんなの優しい言葉に耐えられなくなって涙が止まらなかった。
ーー悔しい。なんでシエルはわたしを叩くの?リーリエ様の味方をしたいならわたしなんか捨てればいいのよ!
ドレスはバズールの家の馬車に置いてもらって二人で歩いた。
「君の働いている屋敷のお嬢様は頭がお花畑なんだろうね。自分を中心で回っていると思っているんだ。自分より身分も顔も上がいるって気がついていない一番厄介な奴だね」
バズールはとっても口が悪い。でも賢いしこうみえて優しいところもある。
わたしが困っていたり泣いていると「ったく仕方ないな」と言いながら助けてくれる。
「わたしは奥様付きなんであまり親しくはないのだけどメイド仲間曰く自分より可愛い子はそばにつけないらしいわ」
「あはは、ヤバイわ、ライナ早めにそんなところ辞めた方がいいと思うよ。ついでにシエルのことも考えた方がいいかも」
「………どうしてそんなことを言うの?」
「見たらわかるだろう?シエルは完全にリーリエ様に夢中だろう?」
わたしはバズールを睨みながらも唇を噛んでグッと堪えた。
ここで怒ったらわたしの負け。バズールはわたしを怒らせたいのだから。
「ふぅ、もういいわ、それよりもマルシェで美味しいもの食べましょう、ご馳走してくれるのでしょう?」
「もちろんだよ、あとお祖母様からたっぷりお小遣い貰ったんで、君のドレスに合わせてアクセサリーも買うように言われているよ」
「お祖母様から?」
暗い気持ちになっていたのでその言葉にワクワクした。
「うん、好きなものを選びなさいって言ってたから金額は気にしなくてもいいんじゃないかな」
「今日は寂しい誕生日になると思ったけどバズールのおかげで楽しい一日になりそう、付き合ってくれてありがとう」
わたしが素直に感謝を述べると少し照れたのか耳が少し赤い。
「ライナに感謝されるのもたまにはいいね」
とニヤッと笑って見せた。
シエルとは幼馴染だけど、バズールとは従兄弟同士で同じ年。だから全くお互い気取らないし気を遣わないので一緒にいても楽。
マルシェで大好きなお肉を堪能して、生クリームとイチゴがたくさん乗ったショートケーキをいただいた。
そしてドレスに合わせてダイヤモンドのピアスとネックレスを買ってもらった。
ま、これはお祖母様からの成人のお祝いなのでバズールがお金を払ったわけではないけど。
帰りに伯父様とお祖母様のところに顔を出してお礼を言った。
「ライナお誕生日おめでとう」
二人がわたしを抱きしめてお祝いの言葉を言ってくれた。
シエルからはメッセージカードも花束もなかったけど他の人からお祝いをもらったので、寂しくはなかった。
「ライナ、夜会でエスコート必要だったら俺に言って。いつでも代わりにエスコートしてあげるからな」
「……うん、もしもの時はよろしくお願いします」
今日のわたしは素直にバズールにお願いした。
だってたぶん……シエルは護衛が忙しくて夜会にすら参加しないだろうから。
ーー明日仕事に行って顔を合わせてもわたしのことなんて興味もないのだろうな。
ーーちょっとへこむ。
ーーーーー
「ライナ、話がある」
朝、伯爵家に着くと着替えをして控え室でゆっくりとしていたらシエルが怖い顔をして現れた。
「……シエル…どうしたの?」
シエルの顔つきからわたしに誕生日おめでとうなんて言ってくれるわけではないともちろんわかった。
でも……何を言われるのかわからなかった。
わたしが控え室から廊下に出ると睨んできた。
「何故バズールと一緒に買い物をしていたんだ?」
「え?ドレスを取りに行くのについて来てもらっただけよ?」
「リーリエ様はとても傷ついていたんだ。バズールはなんであんな態度をとったんだ?」
「あんな態度?バズールの態度におかしいところはなかったはずよ」
「リーリエ様が学校で食事を一緒にしてあげると言ったのに断ったじゃないか」
「それはバズールも言ったでしょう?友人でも知人でもない挨拶しただけの関係なのだから、してあげるはないと思うわ」
「リーリエ様に誘われて喜ばない男なんているわけがないだろう」
「……はあ……………いるから断ったのではないのかしら?それにバズールは伯爵家の嫡男よ、別にリーリエ様のご機嫌伺いなんてする必要はないのだからわたしに文句を言うのはおかしいのではないかしら?」
バチっ!
ーーえ?どうしてわたしが頬を叩かれるの?
わたしは痛いよりもいきなり叩かれたことがショックだった。それもいつも笑顔を絶やさないシエルが訳もなくわたしを叩いた。
「…あっ……ライ……ナ………ご、ごめん」
シエル自身も自分が手を出したことに慌てていた。
「シエルわたしはあなたにどうして叩かれないといけないのかしら?昨日はわたしとの約束を断ったからバズールに付き合ってもらったの。昨日だけは一緒にいて欲しかった。なのに……」
控え室から出て来たメイドの仲間達がわたしの頬を見て「ライナ?どうしたの?」
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