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シエルとの婚約解消の話が進むなか、わたしはどうしてもシエルの屋敷へと向かわないといけなくなった。
「行かないといけませんか?」
お父様に一応行くことを断ろうとしたのだが、今回だけは行かないとダメだと言われてしまった。
まだ一応婚約者だ。
彼の男爵家主催のお茶会に婚約者として参加しないといけないと言われたのだ。
いや、もうすぐ解消するのに?
そう言いたいけどそのことを知っているのは身内のみ。だから表面的には仲睦まじい二人の姿をまだ見せておかなければいけないらしい。
それに……シエルは何も知らない。
せっかくなので国外から取り寄せた少し変わったデザインのドレスを来てシエルの男爵家へと顔を出した。
おじ様とおば様に挨拶をして席に座った。
そこにはなんとリーリエ様もいらっしゃった。
わたしは元雇主の娘でもあるリーリエ様に挨拶をして席についた。
リーリエ様は儚げで可愛らしい。
少し作法は苦手なようでお茶の頂き方が汚い。音を立てているしカップを持つ時に小指が立っている。
それは……ダメなやつでしょう?
と突っ込みたいところだけど、わたしはおば様の隣に柔かに笑顔で座っていた。
するとわたしのところにリーリエ様がわざわざ来て
「ライナはどうしてここにいるの?シエルとはどういう関係?たかが使用人ごときが貴族のお茶会に来るなんて恥ずかしくないの?」
ーーいや、親戚に伯爵家がいると言いましたよね?
ということはわたしも貴族だとは思わないのかしら?
それもわたしとシエルが婚約していること知らないの?ーーーもうすぐ解消するけど。
「リーリエ様、わたしとシエルは幼馴染なのです。そしてわたしは元使用人ではありますが、パシェード男爵の娘でもあります」
婚約者であることは言うのをやめておいた。だってもうすぐ解消されるのだし。
「ふうんそうなの」
わたしの話を聞いても興味がないのか自分の髪の毛を指でくるくると巻きつけて遊んでいた。
ーーこの人は一体何がしたいのかしら?
黙って彼女を見ているシエルがリーリエ様のそばに来て
「リーリエ様、そんなところに立っていたら疲れるでしょう?母上の隣に是非お座りください」
ーーうん?おば様の隣?
それはわたしか反対側の伯爵夫人の席に座ると言うことよね?
と言うことは……わたしに「退け!」と言いたいのね。
わたしはシエルの言葉を無視しておば様と話をした。
「おば様、今日の紅茶の味は如何でした?」
「ライナのお勧めに間違いはないわ」
おば様もシエルの言葉を耳にしていたのにわたしと同じように無視することにしたようだ。
二人で話しているとシエルがイライラしたのか
「ライナ、いい加減にしろ。その席をリーリエ様に譲るんだ、そこを退け!」
わたしの頭の上でシエルの怒った声が聞こえてきた。
「ライナ、シエルの言うことを聞いてちょうだい。使用人ごときが座る席ではないわ」
しおらしく出す声にわたしは内心イライラした。
「シエル、リーリエお嬢様を連れて元の席にお戻りなさい」
おば様がシエルに呆れたように言った。
周りのお客様もシエルとリーリエ様の態度に呆れ果て黙って見ていた。
「し、しかし、リーリエ様は母上と話しをしてみたいと言っています。是非リーリエ様を隣の席に座らせてください。あの席ではお可哀想です」
ーーあの席?彼女が座っていたのは彼女と同じくらいの年頃の女の子達が座っているところなので一番居やすいはずでは?
「あの席に何か問題があるのかしら?同じ学校の同じ年頃の方達よ?」
おば様が決めた席に対してどんな不満があるのかと尋ねた。
「リーリエ様はとても繊細なんです。あの子達はとても性格が悪くリーリエ様に対して冷たい態度を取るのです」
「シエルは優しいから見ていられないみたいなのです」
悲しそうに呟くリーリエ様………
「あの子達は性格が悪く冷たい態度を取る?そう……皆様のお子様のことをうちの息子がとても失礼なことを言って申し訳ございません」
おば様は席を立ちまわりに座っている夫人たちに頭を深々と下げた。
「母上?」
シエルはおば様の行動に驚いていた。
「貴方の言ったあの子達とはここにいるお客様のお嬢様達よ。わたしが見ている時は我儘を言ってまわりを振り回していたのはそこにいる貴方のお嬢様だったわ。冷たい態度も無視もしていなかったわ」
まわりの人達は流石に大人だ。怒ることもなく静観している。
「ひ、酷いわ。わたしは我儘なんて言わない。シエルわたしこんなお茶会嫌だわ、帰りたい」
「申し訳ございませんリーリエ様。すぐにお暇しましょう」
そう言うとわたしを睨みつけて去っていった。
彼らの姿が消えた後わたしは先を立ち深々と頭を下げて詫びた。
「皆様申し訳ございませんでした、せっかくの楽しいお茶会の時に嫌な気分にさせてしまったことお詫び申し上げます」
おば様も一人一人に謝罪してまわった。
なんとかお茶会が終わりわたしとおば様の二人になった。
「ごめんなさいライナ。一番嫌な思いをしたのは貴女よね?まさか息子があそこまで酷いとは思っていなかったの……婚約解消は急いで話を進めるわ」
婚約解消がシエルの耳に入らないのもさっさと進まないのもおば様が渋っていたから。
だけど今日のシエルの姿を見て覚悟を決めてくれた。
ほんと、シエルはリーリエ様のことになると後先考えないので頭が痛い。
このままでは彼の評判は良くなることはない、わたしと婚約解消すればさらに悪くなるだろう。
部屋に戻るともう諦めていたはずの感情を思い出してしまい涙が溢れてきた。
「うっ……」
シエルを愛していた。ずっと……
なのに今の彼はわたしのことをリーリエ様と共に蔑んでいるようだった。
彼の中ではまだ婚約者ではないの?わたしは確かに婚約解消を求めているしもうすぐそうなる。
でも彼はそのことを知らない。わたしは彼の婚約者のはずなのに一度もリーリエ様にそのことを伝えていない。
わたしは使用人でしかないように見ている。
もう辞めたのに。
まだわたしはあなた達の中でただの使用人でしかないの?
シエルは自分が伯爵にでもなったつもりなのかしら?リーリエ様の恋人のつもりなの?
メイド仲間だった友人からも悪い噂を聞いていた。
夜な夜なシエルがリーリエ様の部屋へ通っているらしいと。
二人が何をしているのか……考えるだけで気持ちが悪い。
「行かないといけませんか?」
お父様に一応行くことを断ろうとしたのだが、今回だけは行かないとダメだと言われてしまった。
まだ一応婚約者だ。
彼の男爵家主催のお茶会に婚約者として参加しないといけないと言われたのだ。
いや、もうすぐ解消するのに?
そう言いたいけどそのことを知っているのは身内のみ。だから表面的には仲睦まじい二人の姿をまだ見せておかなければいけないらしい。
それに……シエルは何も知らない。
せっかくなので国外から取り寄せた少し変わったデザインのドレスを来てシエルの男爵家へと顔を出した。
おじ様とおば様に挨拶をして席に座った。
そこにはなんとリーリエ様もいらっしゃった。
わたしは元雇主の娘でもあるリーリエ様に挨拶をして席についた。
リーリエ様は儚げで可愛らしい。
少し作法は苦手なようでお茶の頂き方が汚い。音を立てているしカップを持つ時に小指が立っている。
それは……ダメなやつでしょう?
と突っ込みたいところだけど、わたしはおば様の隣に柔かに笑顔で座っていた。
するとわたしのところにリーリエ様がわざわざ来て
「ライナはどうしてここにいるの?シエルとはどういう関係?たかが使用人ごときが貴族のお茶会に来るなんて恥ずかしくないの?」
ーーいや、親戚に伯爵家がいると言いましたよね?
ということはわたしも貴族だとは思わないのかしら?
それもわたしとシエルが婚約していること知らないの?ーーーもうすぐ解消するけど。
「リーリエ様、わたしとシエルは幼馴染なのです。そしてわたしは元使用人ではありますが、パシェード男爵の娘でもあります」
婚約者であることは言うのをやめておいた。だってもうすぐ解消されるのだし。
「ふうんそうなの」
わたしの話を聞いても興味がないのか自分の髪の毛を指でくるくると巻きつけて遊んでいた。
ーーこの人は一体何がしたいのかしら?
黙って彼女を見ているシエルがリーリエ様のそばに来て
「リーリエ様、そんなところに立っていたら疲れるでしょう?母上の隣に是非お座りください」
ーーうん?おば様の隣?
それはわたしか反対側の伯爵夫人の席に座ると言うことよね?
と言うことは……わたしに「退け!」と言いたいのね。
わたしはシエルの言葉を無視しておば様と話をした。
「おば様、今日の紅茶の味は如何でした?」
「ライナのお勧めに間違いはないわ」
おば様もシエルの言葉を耳にしていたのにわたしと同じように無視することにしたようだ。
二人で話しているとシエルがイライラしたのか
「ライナ、いい加減にしろ。その席をリーリエ様に譲るんだ、そこを退け!」
わたしの頭の上でシエルの怒った声が聞こえてきた。
「ライナ、シエルの言うことを聞いてちょうだい。使用人ごときが座る席ではないわ」
しおらしく出す声にわたしは内心イライラした。
「シエル、リーリエお嬢様を連れて元の席にお戻りなさい」
おば様がシエルに呆れたように言った。
周りのお客様もシエルとリーリエ様の態度に呆れ果て黙って見ていた。
「し、しかし、リーリエ様は母上と話しをしてみたいと言っています。是非リーリエ様を隣の席に座らせてください。あの席ではお可哀想です」
ーーあの席?彼女が座っていたのは彼女と同じくらいの年頃の女の子達が座っているところなので一番居やすいはずでは?
「あの席に何か問題があるのかしら?同じ学校の同じ年頃の方達よ?」
おば様が決めた席に対してどんな不満があるのかと尋ねた。
「リーリエ様はとても繊細なんです。あの子達はとても性格が悪くリーリエ様に対して冷たい態度を取るのです」
「シエルは優しいから見ていられないみたいなのです」
悲しそうに呟くリーリエ様………
「あの子達は性格が悪く冷たい態度を取る?そう……皆様のお子様のことをうちの息子がとても失礼なことを言って申し訳ございません」
おば様は席を立ちまわりに座っている夫人たちに頭を深々と下げた。
「母上?」
シエルはおば様の行動に驚いていた。
「貴方の言ったあの子達とはここにいるお客様のお嬢様達よ。わたしが見ている時は我儘を言ってまわりを振り回していたのはそこにいる貴方のお嬢様だったわ。冷たい態度も無視もしていなかったわ」
まわりの人達は流石に大人だ。怒ることもなく静観している。
「ひ、酷いわ。わたしは我儘なんて言わない。シエルわたしこんなお茶会嫌だわ、帰りたい」
「申し訳ございませんリーリエ様。すぐにお暇しましょう」
そう言うとわたしを睨みつけて去っていった。
彼らの姿が消えた後わたしは先を立ち深々と頭を下げて詫びた。
「皆様申し訳ございませんでした、せっかくの楽しいお茶会の時に嫌な気分にさせてしまったことお詫び申し上げます」
おば様も一人一人に謝罪してまわった。
なんとかお茶会が終わりわたしとおば様の二人になった。
「ごめんなさいライナ。一番嫌な思いをしたのは貴女よね?まさか息子があそこまで酷いとは思っていなかったの……婚約解消は急いで話を進めるわ」
婚約解消がシエルの耳に入らないのもさっさと進まないのもおば様が渋っていたから。
だけど今日のシエルの姿を見て覚悟を決めてくれた。
ほんと、シエルはリーリエ様のことになると後先考えないので頭が痛い。
このままでは彼の評判は良くなることはない、わたしと婚約解消すればさらに悪くなるだろう。
部屋に戻るともう諦めていたはずの感情を思い出してしまい涙が溢れてきた。
「うっ……」
シエルを愛していた。ずっと……
なのに今の彼はわたしのことをリーリエ様と共に蔑んでいるようだった。
彼の中ではまだ婚約者ではないの?わたしは確かに婚約解消を求めているしもうすぐそうなる。
でも彼はそのことを知らない。わたしは彼の婚約者のはずなのに一度もリーリエ様にそのことを伝えていない。
わたしは使用人でしかないように見ている。
もう辞めたのに。
まだわたしはあなた達の中でただの使用人でしかないの?
シエルは自分が伯爵にでもなったつもりなのかしら?リーリエ様の恋人のつもりなの?
メイド仲間だった友人からも悪い噂を聞いていた。
夜な夜なシエルがリーリエ様の部屋へ通っているらしいと。
二人が何をしているのか……考えるだけで気持ちが悪い。
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