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にじゅうご
バズールはずっとバイセン様達夫婦にもミレガー伯爵家の使用人に対しても怒っていたのだけれど、イレーナちゃんの体調の悪そうな姿を見て考えを変えた。
二人がイレーナちゃんの体調を心配している姿はどう見ても演技ではないし同情を買おうとしているわけでもないことがわかる。
8歳には見えない小柄な体、顔色も良くない。それでも子どもなのに空気を読んでいるのかわたし達になんとか笑顔を取り繕って笑おうとしている姿が痛々しい。
こんな三人にミレガー伯爵は断れないことを分かっていて無理やりわたしを誘拐させたのだ。
ーー悪いのはやはり伯爵だと思う。
そして、お父様はバイセン様に呼び出された場所へわたしを助けるために(フリだけど)指定された小さな屋敷へと向かった。
その屋敷はミレガー伯爵の愛人の住む屋敷らしい。
ただ、そのことはバイセン様しか知らない。元使用人のわたしはミレガー伯爵は愛妻家だとずっと思っていたし使用人達はみんなそう思っていたと思う。
そこにバイセン様が待ち受けていてお父様に裁判を取り消すようにと脅した。
「パシェード様、ミレガー伯爵への訴えをやめて欲しいのです。そうすればライナ様は無事にお返しいたします」
「うちの娘は無事なのか?」
「今は無事です。しかし貴方の出方次第ではどうなるかわかりません」
「どうなるかわからない?ふざけるな!娘を返せ!」
隣の部屋でミレガー伯爵とその愛人が二人のやり取りをこっそりと聞いていた。
そこに町の警備隊と王宮騎士がやって来て、ミレガー伯爵を現行犯で捕まえた。
「わたしは何もしていない。ライナ嬢を攫ったのはこの執事のバイセンだ!」
取り乱しながらもバイセン様を指さしながら自分の無実を訴えた。
「わたしはこの屋敷に彼女に会いに来ていたんだ。そこに勝手にやって来て二人が話をしていたんだ!
そうしたらパシェード殿の娘を攫って脅していたんだ!
な?そうだな?バイセン?本当のことを話せ!」
ミレガー伯爵は取り押さえられて両脇を王宮騎士達に掴まれて動けなくなりジタバタさせていた。
「わたしは伯爵だぞ!触るな!お前達後で訴えてやるからな!」
「わたしは、ミレガー伯爵に脅されて、金をやるからライナ様を誘拐してパシェード様に裁判を取り消すように脅せと言われました」
「わたしは言っていない!お前が勝手にやったんだろう?」
「いいえ、バイセン様の仰ったことは本当のことです。わたしはバイセン様に相談されて態と誘拐されました。そしてミレガー伯爵の言う通りにお父様を脅しました。ミレガー伯爵は全てバイセン様のせいにして裁判を取り下げさせてバイセン様を切り捨てるつもりでした」
「な、何を言っている。証拠もないだろう」
「貴方の行動は王家からの影をお借りして全ての話と動きを記録しています。ですから貴方がバイセン様に支持した会話やわたしを最後始末して殺すように支持したことも全て記録されています」
「そんなこと話していない。バイセンが全て勝手にやったことだ。わたしは何も知らない」
ミレガー伯爵は
「そ、そうだ、ライナは男を誑かすのが上手なんだ。とうとう妻子持ちのバイセンまで誑かしやがったんだ、このあばずれが悪いんだ!こいつのせいでわたしは裁判を起こされそうになっている、善良なわたしに対してなんて酷いことを言うんだ!」
苦し紛れに出た言葉かもしれない。
それでも言ってはいけない言葉だった。
だってお父様は真っ赤な顔をして鬼の形相になってミレガー伯爵に殴りかかろうとしているのを、周りの騎士達がなんとか止めている。
バズールもわたしと共に来ていたのだけど、ものすごく険しい顔をしていた。
彼は怒るとかなり怖い。ううん、恐ろしい。
手は怒りで震えてギュッと握りしめて怒鳴るのを我慢しているのがわかった。
リーリエ様への冷たい態度なんかまだ可愛いほうだ。今回は何かしでかしそう。だって王家の影を借りたのも彼だ。
親しくしている殿下に誘拐のことを話して借りて来てしまったのだから。
「こいつを連れて行ってくれ!」お父様はもうこれ以上話したくないと、吐き捨てるように言った。
バイセン様はわたしを見て
「すみません、わたしのせいで嫌なことばかり言われて。屋敷でもライナ様の噂をわたしが率先してやめさせなければいけなかったのに、リーリエ様のご機嫌を損ねるのが怖くて何もできませんでした」
「いえ、わたしは知っています。リーリエ様がわたしに変に絡まないようにわたしをできるだけ遠ざけてくださっていたのはバイセン様でした。おかげで屋敷では仕事がしやすかったです。それに噂はたっていても、酷いことはされませんでした」
ーー今になって考えるとバイセン様が指示する仕事は全てリーリエ様と絡まないようにと気遣ってくれていた。リーリエ様がシエルのことをお気に入りとしてそばに置いていたから、わたしを出来るだけ遠けていた。その時はわからなかったけど、今ならその意味がわかる。あの頃のわたしはシエルのことしか見ていなかった。
仕事は確かに真面目に頑張ってはいたけどいつもわたしの中心にはシエルがいた。
そんなわたしの行動が、誰にも婚約者であることを話していなくても周りは気づいてしまって、呆れたり妬んだりされていたのかもしれない。
それがリーリエ様の悪意からくる噂でも、みんなも面白おかしく受け入れたのだろう。
バズールはわたしの頭をポンっと軽く叩いて、「帰ろう」と言ってくれた。
これからしばらくはミレガー伯爵の取り調べが始まり、ミレガー家は大変なことになるだろう。
リーリエ様も奥様も今まで通りには生活はできないだろう。使用人達のことはお父様とバズールのお父様である伯父様がなんとかしてくれる。
その中にはシエルやカイゼンさんもいる。彼らは貴族なのでまぁ仕事はなんとでもなるだろう。
シエルのことを思い出しても最近はあの苦しくて切なくなる気持ちが減っていることに気がついた。
あんなに彼の言葉に傷ついていたのに……勉強や今回の事件などでそんな感情すら忘れていた。
試験が終わったらこれ以上先延ばししないで彼に会おうと決心した。
二人がイレーナちゃんの体調を心配している姿はどう見ても演技ではないし同情を買おうとしているわけでもないことがわかる。
8歳には見えない小柄な体、顔色も良くない。それでも子どもなのに空気を読んでいるのかわたし達になんとか笑顔を取り繕って笑おうとしている姿が痛々しい。
こんな三人にミレガー伯爵は断れないことを分かっていて無理やりわたしを誘拐させたのだ。
ーー悪いのはやはり伯爵だと思う。
そして、お父様はバイセン様に呼び出された場所へわたしを助けるために(フリだけど)指定された小さな屋敷へと向かった。
その屋敷はミレガー伯爵の愛人の住む屋敷らしい。
ただ、そのことはバイセン様しか知らない。元使用人のわたしはミレガー伯爵は愛妻家だとずっと思っていたし使用人達はみんなそう思っていたと思う。
そこにバイセン様が待ち受けていてお父様に裁判を取り消すようにと脅した。
「パシェード様、ミレガー伯爵への訴えをやめて欲しいのです。そうすればライナ様は無事にお返しいたします」
「うちの娘は無事なのか?」
「今は無事です。しかし貴方の出方次第ではどうなるかわかりません」
「どうなるかわからない?ふざけるな!娘を返せ!」
隣の部屋でミレガー伯爵とその愛人が二人のやり取りをこっそりと聞いていた。
そこに町の警備隊と王宮騎士がやって来て、ミレガー伯爵を現行犯で捕まえた。
「わたしは何もしていない。ライナ嬢を攫ったのはこの執事のバイセンだ!」
取り乱しながらもバイセン様を指さしながら自分の無実を訴えた。
「わたしはこの屋敷に彼女に会いに来ていたんだ。そこに勝手にやって来て二人が話をしていたんだ!
そうしたらパシェード殿の娘を攫って脅していたんだ!
な?そうだな?バイセン?本当のことを話せ!」
ミレガー伯爵は取り押さえられて両脇を王宮騎士達に掴まれて動けなくなりジタバタさせていた。
「わたしは伯爵だぞ!触るな!お前達後で訴えてやるからな!」
「わたしは、ミレガー伯爵に脅されて、金をやるからライナ様を誘拐してパシェード様に裁判を取り消すように脅せと言われました」
「わたしは言っていない!お前が勝手にやったんだろう?」
「いいえ、バイセン様の仰ったことは本当のことです。わたしはバイセン様に相談されて態と誘拐されました。そしてミレガー伯爵の言う通りにお父様を脅しました。ミレガー伯爵は全てバイセン様のせいにして裁判を取り下げさせてバイセン様を切り捨てるつもりでした」
「な、何を言っている。証拠もないだろう」
「貴方の行動は王家からの影をお借りして全ての話と動きを記録しています。ですから貴方がバイセン様に支持した会話やわたしを最後始末して殺すように支持したことも全て記録されています」
「そんなこと話していない。バイセンが全て勝手にやったことだ。わたしは何も知らない」
ミレガー伯爵は
「そ、そうだ、ライナは男を誑かすのが上手なんだ。とうとう妻子持ちのバイセンまで誑かしやがったんだ、このあばずれが悪いんだ!こいつのせいでわたしは裁判を起こされそうになっている、善良なわたしに対してなんて酷いことを言うんだ!」
苦し紛れに出た言葉かもしれない。
それでも言ってはいけない言葉だった。
だってお父様は真っ赤な顔をして鬼の形相になってミレガー伯爵に殴りかかろうとしているのを、周りの騎士達がなんとか止めている。
バズールもわたしと共に来ていたのだけど、ものすごく険しい顔をしていた。
彼は怒るとかなり怖い。ううん、恐ろしい。
手は怒りで震えてギュッと握りしめて怒鳴るのを我慢しているのがわかった。
リーリエ様への冷たい態度なんかまだ可愛いほうだ。今回は何かしでかしそう。だって王家の影を借りたのも彼だ。
親しくしている殿下に誘拐のことを話して借りて来てしまったのだから。
「こいつを連れて行ってくれ!」お父様はもうこれ以上話したくないと、吐き捨てるように言った。
バイセン様はわたしを見て
「すみません、わたしのせいで嫌なことばかり言われて。屋敷でもライナ様の噂をわたしが率先してやめさせなければいけなかったのに、リーリエ様のご機嫌を損ねるのが怖くて何もできませんでした」
「いえ、わたしは知っています。リーリエ様がわたしに変に絡まないようにわたしをできるだけ遠ざけてくださっていたのはバイセン様でした。おかげで屋敷では仕事がしやすかったです。それに噂はたっていても、酷いことはされませんでした」
ーー今になって考えるとバイセン様が指示する仕事は全てリーリエ様と絡まないようにと気遣ってくれていた。リーリエ様がシエルのことをお気に入りとしてそばに置いていたから、わたしを出来るだけ遠けていた。その時はわからなかったけど、今ならその意味がわかる。あの頃のわたしはシエルのことしか見ていなかった。
仕事は確かに真面目に頑張ってはいたけどいつもわたしの中心にはシエルがいた。
そんなわたしの行動が、誰にも婚約者であることを話していなくても周りは気づいてしまって、呆れたり妬んだりされていたのかもしれない。
それがリーリエ様の悪意からくる噂でも、みんなも面白おかしく受け入れたのだろう。
バズールはわたしの頭をポンっと軽く叩いて、「帰ろう」と言ってくれた。
これからしばらくはミレガー伯爵の取り調べが始まり、ミレガー家は大変なことになるだろう。
リーリエ様も奥様も今まで通りには生活はできないだろう。使用人達のことはお父様とバズールのお父様である伯父様がなんとかしてくれる。
その中にはシエルやカイゼンさんもいる。彼らは貴族なのでまぁ仕事はなんとでもなるだろう。
シエルのことを思い出しても最近はあの苦しくて切なくなる気持ちが減っていることに気がついた。
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