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にじゅうろく
ミレガー伯爵の事件からしばらくの間、イレーナちゃんとミシェリ様は我が家で預かることになった。
イレーナちゃんは検査の結果、心臓は手術さえすれば助かるだろうと言われた。高額な費用はお父様が出してくれることで話はついた。
バイセン様はミレガー伯爵のやって来た密輸のことなど取り調べられることになっていた。
協力者として動いたことが認められて罪に問われることはない。お父様とバズールがバイセン様がいかにわたしのために動いてくれたのか切々と訴えてくれたのだ。
屋敷に居る時は可愛いイレーナちゃんのお顔を見るのが癒しの時間になってきた。
「ライナ様!」ベッドで横になっていることが多いイレーナちゃんに会いに行くと嬉しそうにわたしを見てニコニコ笑う。
まるで尻尾を振っている可愛い子犬に見える。
でも顔色はまだ悪く青白い。
ーーイレーナちゃんの本当の笑顔を見てみたい。
彼女の過ごす時間はベッドの上なので何もすることがなくたくさんの本を読んで過ごしてきたらしい。
だからなのか勉強が好きみたいでわたしが顔を出すとわからないところを聞いてくる。
「ライナ様、ここを教えてください」
「いつか学校へ行くことが夢なんです」
彼女の今の夢は学校へ通うこと、お友達を作ること、8歳の彼女にとって夢であっても叶うことはないと諦めていた夢。
それが叶うかもしれない。
「イレーナちゃんが元気になったらわたしとピクニックに行きましょうね」
「お花が沢山あると言っていた森へ?」
「うん、そうだよ。綺麗なお花が沢山あって空が青くて風が気持ちがいいの」
「お外で過ごせるなんて夢見たい」
「夢じゃない、もうすぐやりたいと思うことは我慢しないで出来るようになるの。一緒にたくさん楽しいことをしようね」
「はい」
そんな話をしていると、部屋にバズールが入ってきた。
「イレーナ、お土産買ってきたぞ」
「バズール様、ありがとうございます」
「なんだ、ライナもいたのか?ついでに食べるか?最近流行っているお店の生パイなんだけど頑張って並んで買ってきたんだ」
「せっかくだからわたしも頂くわ」
バズールはいつの間にかイレーナちゃんと仲良くなっていた。わたしに会いに来るよりもイレーナちゃんに会いに来ることが増えた。
あんなにバイセン様のこと怒っていたくせに、イレーナちゃんの魅力に負けたみたい。
イレーナちゃんも少しずつ明るくなって我が家に慣れてきた。
バイセン様はまだミレガー伯爵のことで事情聴取が行われていて屋敷に戻ることはできない。
そして奥様のミシェリ様は我が家で働き出した。
以前はイレーナちゃんにつきっきりだったけど今はたくさんの使用人に囲まれていて人の出入りも多いのでイレーナちゃんが一人で部屋にいても安心して仕事をすることが出来る。
「少しでもお返しがしたいのです、働くことでしかお返しできなくて申し訳ないのですが」
お母様は「気にしないで、イレーナちゃんのことはわたしが勝手にしていることなのよ」と言って働かなくてもいいと言ったのだけど、ミシェリ様は「何もせずに居させてもらうことはできない」と頑として言い張った。
ーーーーー
いよいよ試験の日。
当日の朝、なぜかバズールが早い時間から屋敷に来ていた。
「ライナ、頑張れよ!」
励ましてくれているつもりなのだろうがにこにこと笑いながら言っている姿はなんだかムカつく。
イレーナちゃんはこっそりベッドから抜け出してわたしの部屋に朝早く来てくれた。
「これ、刺繍したハンカチなんですが…試験頑張ってください」
と、可愛らしい子犬の刺繍をしたハンカチをプレゼントしてくれた。
わたしが「子犬みたいで可愛い」と思わず何度か呟いたので、わたしが子犬好きだと思われている。
「ありがとう、イレーナちゃん。でも無理して歩いたらまた体調悪くなっちゃうわ。お部屋に戻りましょうね」
8歳にしては小さく体重も軽い体のイレーナちゃんを抱っこして彼女の部屋に行くと途中でサマンサに会いわたし達を見て驚いた。
「ライナ様!どうしたのですか?」
「イレーナちゃんがわたしの部屋に来てくれたの。でもあまり無理するといけないから抱っこして連れて行ってあげようと思って、ね?」
イレーナちゃんは申し訳なさそうにシュンとしてコクコクと頷いた。
「イレーナちゃんはわたしのことを思ってしたことでしょう?だからわたしもあなたのことを思ってだっこしているの。甘えていいのよ」
「ありがとうございます」
バズールとお母様もわたしの顔を見にこようとしていたらしく廊下でわたしがイレーナちゃんを抱っこしているのを見て二人も驚いていた。
「ライナ、何しているんだ。落としたらどうする?」
「落とさないわよ、大切に抱っこしているもの」
「ほらおいで」
バズールはわたしからイレーナちゃんをもらい抱っこしてくれた。
イレーナちゃんは「ライナ様ありがとうございました」と微笑んでお礼を言ってくれた。
ほんと、バズールと違って可愛い。
妹がいたらこんな感じなのだろうか。
お母様がもう一人頑張って今から産んでくれたらいいのに…なんて思っていると
「産むのはあなたよ、もうわたしは産めないわよ。わたしも可愛い孫が欲しいわ、ねえバズール?」
ーーさすがお母様。わたしの顔を見て何も言っていないのにわたしの考えていることがすぐにわかったみたい。
でもどうしてバズールに同意を求めるのかしら?
試験で緊張するはずの朝、バズールやイレーナちゃんのおかげで緊張はほぐれしっかりと問題と向き合えた。
「お父様!たぶんた大丈夫だと思います、思った以上に解けました。シエルとの婚約解消一気に進めてください」
ーーずっと避けていた問題にやっと向き合える。
彼に会おう。会って話してさよならをしよう。
「わかった、だが二人だけで会うのは心配だ。せめて隣の部屋にわたし達がいることだけは許して欲しい」
「はい、ありがとうございます」
そして3日後会うことになった。
イレーナちゃんは検査の結果、心臓は手術さえすれば助かるだろうと言われた。高額な費用はお父様が出してくれることで話はついた。
バイセン様はミレガー伯爵のやって来た密輸のことなど取り調べられることになっていた。
協力者として動いたことが認められて罪に問われることはない。お父様とバズールがバイセン様がいかにわたしのために動いてくれたのか切々と訴えてくれたのだ。
屋敷に居る時は可愛いイレーナちゃんのお顔を見るのが癒しの時間になってきた。
「ライナ様!」ベッドで横になっていることが多いイレーナちゃんに会いに行くと嬉しそうにわたしを見てニコニコ笑う。
まるで尻尾を振っている可愛い子犬に見える。
でも顔色はまだ悪く青白い。
ーーイレーナちゃんの本当の笑顔を見てみたい。
彼女の過ごす時間はベッドの上なので何もすることがなくたくさんの本を読んで過ごしてきたらしい。
だからなのか勉強が好きみたいでわたしが顔を出すとわからないところを聞いてくる。
「ライナ様、ここを教えてください」
「いつか学校へ行くことが夢なんです」
彼女の今の夢は学校へ通うこと、お友達を作ること、8歳の彼女にとって夢であっても叶うことはないと諦めていた夢。
それが叶うかもしれない。
「イレーナちゃんが元気になったらわたしとピクニックに行きましょうね」
「お花が沢山あると言っていた森へ?」
「うん、そうだよ。綺麗なお花が沢山あって空が青くて風が気持ちがいいの」
「お外で過ごせるなんて夢見たい」
「夢じゃない、もうすぐやりたいと思うことは我慢しないで出来るようになるの。一緒にたくさん楽しいことをしようね」
「はい」
そんな話をしていると、部屋にバズールが入ってきた。
「イレーナ、お土産買ってきたぞ」
「バズール様、ありがとうございます」
「なんだ、ライナもいたのか?ついでに食べるか?最近流行っているお店の生パイなんだけど頑張って並んで買ってきたんだ」
「せっかくだからわたしも頂くわ」
バズールはいつの間にかイレーナちゃんと仲良くなっていた。わたしに会いに来るよりもイレーナちゃんに会いに来ることが増えた。
あんなにバイセン様のこと怒っていたくせに、イレーナちゃんの魅力に負けたみたい。
イレーナちゃんも少しずつ明るくなって我が家に慣れてきた。
バイセン様はまだミレガー伯爵のことで事情聴取が行われていて屋敷に戻ることはできない。
そして奥様のミシェリ様は我が家で働き出した。
以前はイレーナちゃんにつきっきりだったけど今はたくさんの使用人に囲まれていて人の出入りも多いのでイレーナちゃんが一人で部屋にいても安心して仕事をすることが出来る。
「少しでもお返しがしたいのです、働くことでしかお返しできなくて申し訳ないのですが」
お母様は「気にしないで、イレーナちゃんのことはわたしが勝手にしていることなのよ」と言って働かなくてもいいと言ったのだけど、ミシェリ様は「何もせずに居させてもらうことはできない」と頑として言い張った。
ーーーーー
いよいよ試験の日。
当日の朝、なぜかバズールが早い時間から屋敷に来ていた。
「ライナ、頑張れよ!」
励ましてくれているつもりなのだろうがにこにこと笑いながら言っている姿はなんだかムカつく。
イレーナちゃんはこっそりベッドから抜け出してわたしの部屋に朝早く来てくれた。
「これ、刺繍したハンカチなんですが…試験頑張ってください」
と、可愛らしい子犬の刺繍をしたハンカチをプレゼントしてくれた。
わたしが「子犬みたいで可愛い」と思わず何度か呟いたので、わたしが子犬好きだと思われている。
「ありがとう、イレーナちゃん。でも無理して歩いたらまた体調悪くなっちゃうわ。お部屋に戻りましょうね」
8歳にしては小さく体重も軽い体のイレーナちゃんを抱っこして彼女の部屋に行くと途中でサマンサに会いわたし達を見て驚いた。
「ライナ様!どうしたのですか?」
「イレーナちゃんがわたしの部屋に来てくれたの。でもあまり無理するといけないから抱っこして連れて行ってあげようと思って、ね?」
イレーナちゃんは申し訳なさそうにシュンとしてコクコクと頷いた。
「イレーナちゃんはわたしのことを思ってしたことでしょう?だからわたしもあなたのことを思ってだっこしているの。甘えていいのよ」
「ありがとうございます」
バズールとお母様もわたしの顔を見にこようとしていたらしく廊下でわたしがイレーナちゃんを抱っこしているのを見て二人も驚いていた。
「ライナ、何しているんだ。落としたらどうする?」
「落とさないわよ、大切に抱っこしているもの」
「ほらおいで」
バズールはわたしからイレーナちゃんをもらい抱っこしてくれた。
イレーナちゃんは「ライナ様ありがとうございました」と微笑んでお礼を言ってくれた。
ほんと、バズールと違って可愛い。
妹がいたらこんな感じなのだろうか。
お母様がもう一人頑張って今から産んでくれたらいいのに…なんて思っていると
「産むのはあなたよ、もうわたしは産めないわよ。わたしも可愛い孫が欲しいわ、ねえバズール?」
ーーさすがお母様。わたしの顔を見て何も言っていないのにわたしの考えていることがすぐにわかったみたい。
でもどうしてバズールに同意を求めるのかしら?
試験で緊張するはずの朝、バズールやイレーナちゃんのおかげで緊張はほぐれしっかりと問題と向き合えた。
「お父様!たぶんた大丈夫だと思います、思った以上に解けました。シエルとの婚約解消一気に進めてください」
ーーずっと避けていた問題にやっと向き合える。
彼に会おう。会って話してさよならをしよう。
「わかった、だが二人だけで会うのは心配だ。せめて隣の部屋にわたし達がいることだけは許して欲しい」
「はい、ありがとうございます」
そして3日後会うことになった。
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