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新しい恋。
リリアンナ編③
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バズールとライナ様の仲は今あまり良くなかった。
だからいくらバズールがライナ様を好きでも片想いだとわかっていたから安心していた。
リーリエ嬢もわたしと同じバズール様を好きになってライナ様の所為で辛い思いをしたのだと思っていた。報告書には両親のした事は別として、彼女自身特に悪い事はしていない。だから同情した。
まぁ、会って話を聞いてあまりにも自分勝手な発想で突拍子もなく、話せば話すほど頭が痛くなる娘で、何故連れてきてしまったのだろうと後悔しかなかった。
これは修道院に戻すしかない。
頭を抱えてそう考えていた。
なのに……バズールがライナ様と仲良く話す姿を見かけるようになると心がざわざわと落ち着かない。
そんな時……
「ねぇ冬の長期休暇はどんなふうに過ごすの?よかったらわたし達と一緒に暖かい土地の別荘で過ごさないかしら?」
わたしは今回南の領地へ行くことにしていた。
亡くなったお母様の生まれ育った故郷でゆっくりと過ごすつもりだ。
せっかくだからバズールも一緒に行きたい。行ってもう少し仲を深められればライナ様のことも諦められるのではと思った。
ーー彼女を諦めてわたしを好きになって欲しい。
いつも我儘ばかり言っているわたしなのにバズールの前では強くは言えない。
それでも……
「バズール、良いわよね?」
返事を促すと
「申し訳ありませんが長期休暇は実家に帰るつもりです」
「……そう、ご両親も待ってるわよね」
「はい、帰ってくるようにと手紙が来ましたので」
バズールはなんだか嬉しそうにしていた。
ーー嫌だわ、実家に帰るだけなのにバズールの笑顔がいつもと違う気がする。まさか……
「一人で帰るのよね?」
「いえ、従姉妹と一緒に帰ります」
「いとこ?」
「はい、父上から一緒に帰ってくるように言われました」
「そうなの」
ーー………二人で帰る。
いとこ同士だし同じ国に帰るのだから仕方がない。わかっているのに……どうしてもモヤっとして心の中から黒いものが出てくる。
嫉妬?憎悪?
全てライナ様へと向かう。
そんな時わたしの住む離宮の一部屋で大騒ぎしているリーリエ嬢に出会した。
そろそろお暇してもらおうと考えていたら、我儘放題、さらに使用人のことを下僕のように扱う態度、男性の使用人に体で懐柔する姿に呆れていたが、今回はわたしの側近の一人マッシュにまで手を出していた。
マッシュは見た目の可愛さと儚さに惑わされてリーリエ嬢と体の関係になっていた。16歳の彼女には女としての魅力があるらしい。
うちの男性使用人の数人が彼女が来てから、体の関係になり毎夜誰か男が彼女の部屋へと通っていると聞いた。
わたしは王族として、いくら側近や取り巻きがいても淫らな行為だけはしてこなかった。
なのに……お尻と頭の軽いリーリエ嬢は男を見たら尻尾を振ってお尻を誰にでも突き出しているようだ。
こんな女にバズールが落とされる事はないだろうと納得した。
知性と理性を持った人なら、こんな尻軽女に惑わされる事はない。
今もリーリエ嬢は部屋で暴れている。
「ねぇわたしに似合うドレスが欲しいわ」
彼女のために用意した数枚のドレスでは気に入らないらしく体の関係を持った使用人達におねだりをしていた。
使用人の給金でドレスや宝石など買えるわけもないのに何を言っているのだろう。
それに側近達には婚約者がいる。リーリエ嬢は性の捌け口でしかない。なのに本人は自分はモテていると勘違いしている。
外から見る彼女の姿は滑稽でしかない。
なのにその姿は誰かに似ている。
ーー誰?違和感しかない。誰なのかしら?
ふと思った。
この娘にライナ様のことを有る事無い事話せばどうなるのだろう。
リーリエ嬢を放って自由にさせればライナ様はわたしの前から姿を消すかもしれない。
わたしが何か悪いことをしたわけではない。
リーリエ嬢の独断。わたしには関係のないこと。
ーーふふ、楽しそう。
良いことを思いついたわたしは久しぶりにリーリエ嬢に会うことにした。
「あら?リリアンナ様、お久しぶりですね?わたし王宮でせっかく過ごしているのにドレスも僅かしかないし宝石なんてほとんど持っていないの。
ねぇ、貴女はたくさん持っているのでしょう?ケチケチしないで少しわたしに分けて欲しいの。ダイヤかルビーが欲しいわ。ドレスは絹の糸で施した刺繍入りが良いわ。そうね、わたしに似合う淡いピンク系が可愛いと思うの。あとこのお部屋客間なのは確かなのだけど、装飾がイマイチなのよね。
壁紙も変えたいし家具なんて高級なだけでセンスなんてあったものではないわ、わたしの好みに全て変えて欲しいの」
ーー出たわ、頭がお花畑の顔だけ女。
もう話してて腹が立つこともなくなった。呆れ果てて相手にするのも馬鹿らしい。
だけど、こんな馬鹿な女だからこそ馬鹿なことを勝手にやってくれるだろう。
「バズールがね、ライナに付き纏われて困っているらしいの。従姉妹だから無碍にもできないし……本当はリーリエ嬢に会いに来たいのに来ることもできないみたい」
「え?バズール様が?ほんとライナって空気読まない子なの。一人いい子のフリしてみんなに愛されていると思い込んでいるの。外見がちょっと良くて親が商会を営んでいるからお金があるのをいいことにバズール様を縛り付けて!少しくらい勉強が出来るからって何よ!女の子は可愛らしさとこの体よ。いかに男達を侍らすかよね?
王女様もその顔と権力でたくさんの男を従えているものね。やっぱり地位とお金が全てなのよね。うちのお父様がちょっとだけ悪い事をした所為でわたしが辛い思いをさせられたの。
でもおかげで今はここで好きなだけ男に愛されて幸せな日々を過ごせているわ。我慢してこんなセンスのない部屋に住んではいるけど、男に愛される日々に不満はないわ。これでバズール様がライナに解放されれば最高よね?わたしバズールに愛されてみたかったの。彼の声を耳元で囁かれるなんてとても幸せだと思うの」
男をたくさん知っている女の顔をする16歳の少女にわたしは呆れていた。
ただ……顔と権力しかわたしには「ない」みたいな発言にイライラしながらも、リーリエ嬢の突拍子もない行動にかけた。
この人なら絶対に好き勝手やってくれるだろう。
「貴女を愛しているはずのバズールが貴女に会えなくて辛いはずなの。どうかバズールのために………「ライナをどうにかしなくっちゃ!」
「そ、そうね」
わたしが言いくるめる前に彼女はニヤッと笑っていた。
だからいくらバズールがライナ様を好きでも片想いだとわかっていたから安心していた。
リーリエ嬢もわたしと同じバズール様を好きになってライナ様の所為で辛い思いをしたのだと思っていた。報告書には両親のした事は別として、彼女自身特に悪い事はしていない。だから同情した。
まぁ、会って話を聞いてあまりにも自分勝手な発想で突拍子もなく、話せば話すほど頭が痛くなる娘で、何故連れてきてしまったのだろうと後悔しかなかった。
これは修道院に戻すしかない。
頭を抱えてそう考えていた。
なのに……バズールがライナ様と仲良く話す姿を見かけるようになると心がざわざわと落ち着かない。
そんな時……
「ねぇ冬の長期休暇はどんなふうに過ごすの?よかったらわたし達と一緒に暖かい土地の別荘で過ごさないかしら?」
わたしは今回南の領地へ行くことにしていた。
亡くなったお母様の生まれ育った故郷でゆっくりと過ごすつもりだ。
せっかくだからバズールも一緒に行きたい。行ってもう少し仲を深められればライナ様のことも諦められるのではと思った。
ーー彼女を諦めてわたしを好きになって欲しい。
いつも我儘ばかり言っているわたしなのにバズールの前では強くは言えない。
それでも……
「バズール、良いわよね?」
返事を促すと
「申し訳ありませんが長期休暇は実家に帰るつもりです」
「……そう、ご両親も待ってるわよね」
「はい、帰ってくるようにと手紙が来ましたので」
バズールはなんだか嬉しそうにしていた。
ーー嫌だわ、実家に帰るだけなのにバズールの笑顔がいつもと違う気がする。まさか……
「一人で帰るのよね?」
「いえ、従姉妹と一緒に帰ります」
「いとこ?」
「はい、父上から一緒に帰ってくるように言われました」
「そうなの」
ーー………二人で帰る。
いとこ同士だし同じ国に帰るのだから仕方がない。わかっているのに……どうしてもモヤっとして心の中から黒いものが出てくる。
嫉妬?憎悪?
全てライナ様へと向かう。
そんな時わたしの住む離宮の一部屋で大騒ぎしているリーリエ嬢に出会した。
そろそろお暇してもらおうと考えていたら、我儘放題、さらに使用人のことを下僕のように扱う態度、男性の使用人に体で懐柔する姿に呆れていたが、今回はわたしの側近の一人マッシュにまで手を出していた。
マッシュは見た目の可愛さと儚さに惑わされてリーリエ嬢と体の関係になっていた。16歳の彼女には女としての魅力があるらしい。
うちの男性使用人の数人が彼女が来てから、体の関係になり毎夜誰か男が彼女の部屋へと通っていると聞いた。
わたしは王族として、いくら側近や取り巻きがいても淫らな行為だけはしてこなかった。
なのに……お尻と頭の軽いリーリエ嬢は男を見たら尻尾を振ってお尻を誰にでも突き出しているようだ。
こんな女にバズールが落とされる事はないだろうと納得した。
知性と理性を持った人なら、こんな尻軽女に惑わされる事はない。
今もリーリエ嬢は部屋で暴れている。
「ねぇわたしに似合うドレスが欲しいわ」
彼女のために用意した数枚のドレスでは気に入らないらしく体の関係を持った使用人達におねだりをしていた。
使用人の給金でドレスや宝石など買えるわけもないのに何を言っているのだろう。
それに側近達には婚約者がいる。リーリエ嬢は性の捌け口でしかない。なのに本人は自分はモテていると勘違いしている。
外から見る彼女の姿は滑稽でしかない。
なのにその姿は誰かに似ている。
ーー誰?違和感しかない。誰なのかしら?
ふと思った。
この娘にライナ様のことを有る事無い事話せばどうなるのだろう。
リーリエ嬢を放って自由にさせればライナ様はわたしの前から姿を消すかもしれない。
わたしが何か悪いことをしたわけではない。
リーリエ嬢の独断。わたしには関係のないこと。
ーーふふ、楽しそう。
良いことを思いついたわたしは久しぶりにリーリエ嬢に会うことにした。
「あら?リリアンナ様、お久しぶりですね?わたし王宮でせっかく過ごしているのにドレスも僅かしかないし宝石なんてほとんど持っていないの。
ねぇ、貴女はたくさん持っているのでしょう?ケチケチしないで少しわたしに分けて欲しいの。ダイヤかルビーが欲しいわ。ドレスは絹の糸で施した刺繍入りが良いわ。そうね、わたしに似合う淡いピンク系が可愛いと思うの。あとこのお部屋客間なのは確かなのだけど、装飾がイマイチなのよね。
壁紙も変えたいし家具なんて高級なだけでセンスなんてあったものではないわ、わたしの好みに全て変えて欲しいの」
ーー出たわ、頭がお花畑の顔だけ女。
もう話してて腹が立つこともなくなった。呆れ果てて相手にするのも馬鹿らしい。
だけど、こんな馬鹿な女だからこそ馬鹿なことを勝手にやってくれるだろう。
「バズールがね、ライナに付き纏われて困っているらしいの。従姉妹だから無碍にもできないし……本当はリーリエ嬢に会いに来たいのに来ることもできないみたい」
「え?バズール様が?ほんとライナって空気読まない子なの。一人いい子のフリしてみんなに愛されていると思い込んでいるの。外見がちょっと良くて親が商会を営んでいるからお金があるのをいいことにバズール様を縛り付けて!少しくらい勉強が出来るからって何よ!女の子は可愛らしさとこの体よ。いかに男達を侍らすかよね?
王女様もその顔と権力でたくさんの男を従えているものね。やっぱり地位とお金が全てなのよね。うちのお父様がちょっとだけ悪い事をした所為でわたしが辛い思いをさせられたの。
でもおかげで今はここで好きなだけ男に愛されて幸せな日々を過ごせているわ。我慢してこんなセンスのない部屋に住んではいるけど、男に愛される日々に不満はないわ。これでバズール様がライナに解放されれば最高よね?わたしバズールに愛されてみたかったの。彼の声を耳元で囁かれるなんてとても幸せだと思うの」
男をたくさん知っている女の顔をする16歳の少女にわたしは呆れていた。
ただ……顔と権力しかわたしには「ない」みたいな発言にイライラしながらも、リーリエ嬢の突拍子もない行動にかけた。
この人なら絶対に好き勝手やってくれるだろう。
「貴女を愛しているはずのバズールが貴女に会えなくて辛いはずなの。どうかバズールのために………「ライナをどうにかしなくっちゃ!」
「そ、そうね」
わたしが言いくるめる前に彼女はニヤッと笑っていた。
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