【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ

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お父様との和解

「セレン、今日はどこに行こうか?」

「ライオネル様、わたしは今日から実家に帰ります」

「え?俺を置いて?」

「いやいや、貴方とはなんの関係もないじゃないですか?わたしはお父様がエリノアとサムエル、そして赤ちゃんを連れて帰って来ると聞いたので顔を出しに行くんです」

「あー、デキ婚したと言っていた新しいお母様?」

「今更お母様とは呼べませんけど、エリノアはわたしにとって姉のような存在でした。サムエルはわたしの大切な癒しでしたし。まさか家族になるなんて思ってもいませんでした。クソ親父にはムカつきましたが今になって考えると良かったのかなと思っています」

「どうして?」

「独身のわたしに家族が増えてしかも可愛い赤ちゃんまで増えたんですよ?おかげで今度商売として子供服のお店をマリノアと始める事になりました」

 しっかり稼いで老後資金を貯めないと!

「俺が食べさせてやるから嫁に来い」

「もうその言葉は飽きました。最近は財務部のエミーさんと仲良しではなかったのですか?」

「あーーフラれた」

「あら?わたしが知ってるだけでもう四人目ですね?」

「なんでこんなにかっこよくて優しいのにフラれるんだろう?」

「それはたぶん本当に相手を好きではないからですよ」

「俺は本気でセレンが好きだよ?」

「本気で好きなのに他の子と付き合えるんですもの。わたしを好きなのは本気ではなく気のせいだと思います」

「じゃあセレンは誰とも付き合わないの?これからもう誰も好きにならないの?」

「心が動かないんです……」

 たぶん一生独身だろうな。


 ーー俺じゃあダメなんだ……だから他の子に行くしかないんだーー
 ライオネル様がボソッと呟いた。

「うん?何か言いました?」

「いや、セレン、実家に帰ったら報告待ってるよ」

「報告?ふふっ、可愛い赤ちゃんの話を聞かせてあげますね?」

 そして久しぶりに実家に顔を出した。

 相変わらず変わらない屋敷の中、兄様が結婚したと報告があったがわたしは会いには来なかった。

「お兄様ご無沙汰しております」
 数年ぶりの兄はわたしを見るなり「セレン?」と言って抱きしめて来た。

「セレン、手紙しか寄越さない、もう二度と会えないとずっと諦めていたんだ」

「ごめんなさい、一度縁を切ってしまったのでもう一度会いに来るのに勇気がいりました」

「お前にずっと嫌な思いをさせたんだ。謝るのは俺たちだ」

「ううん貴族の娘が政略で嫁ぐのは当たり前だったのに……八つ当たりしてました」



 それから客間に案内されてお兄様の奥様に挨拶する事になった。

「初めましてセレンと申します」

「こちらこそ、セレン、わたしは貴女に命を助けてもらった一人なんです。しかも家族も」

「わたしがですか?」

「ええ、ストマが流行って重症患者の家々を訪問して治療してくれたでしょう?」

「そんなこともありましたね」

「貴女はたくさんの人を助けたから当たり前のことをしたまでだと思っているでしょうけどわたし達助けられた者には一生忘れられない出来事だったの。
 …………もう死を受け入れるしかなかった……歳の離れた弟は瀕死の状態だったのに……突然元気になったのよ?
 どんなに嬉しかったか、本当にありがとう」

「助けた人たちが幸せに暮らしてくれているって、とても嬉しいです」

 心の中がふわっと温かくなった。直接感謝されるとやっぱりもっと頑張ろうと思ってしまう。

 義姉様と話をしていると部屋にエリノアが入ってきた。そしてサムエルが義妹を抱っこして。

「セレン様、お久しぶりです」

「エリノア……お義母様?かな。今更ですみません。ご結婚ご出産おめでとうございます」

「お義母様はやめてください。今まで通りエリノアで十分です。サムエルこっちに」

 サムエルが赤ちゃんをわたしに渡してくれた。

 生後半年くらい。ぷくぷくして頬はぱんぱんになっている。わたしの顔を見てニコニコ笑ってくれる。

「か、可愛いすぎだわ」

「セレノアと言います。セレン様のように美しく賢く、そして優しい娘に育って欲しいとセレン様の名前からつけました」

「セレノア……よろしくね」

 みんなでソファに座りたくさん話した。

 ーーお父様だけまだ挨拶をしていない。

「お父様はまだ帰って来られないのかしら?」

「セレン様が帰って来るからと張り切って自らケーキを買いに行ったっきりなんです。でも少し遅いですね」

「ほんと、何してるのかしら?お父様」
 わたしもやっと和解するつもりで会いに来たのに肝心のお父様がいないので気が抜けてしまっていた。

 そんな時、部屋の外が騒がしくなった。

「セレン、来てくれ」

「兄様どうしたんですか?」

「馬車の事故で父上が大怪我をしているんだ!診てくれないか?」

「すぐに行くわ」

 わたしは玄関の方へと駆け出した。

 命さえあれば助けられる。

 今までもたくさんの人を助けた。だから大丈夫。

 玄関に運ばれて来たのは全身血だらけで意識のないお父様だった。

 そして運んできたのは……スティーブ様。

「セレン、助けられるか?まだなんとか心臓は動いているんだ」

 スティーブ様は、毛布を敷いた床にお父様を下ろした。わたしは駆け寄りすぐに癒しの魔法をかけ始めた。デイドレスが血だらけになった。

 だけどそんなことどうでもいい。
 お父様を助けなきゃ。一心不乱に癒しの魔法をかけた。

 後ろでは「あと数人怪我人がいる。セレン他の人も頼む」と簡単に言って来る。

 スティーブ様、人をなんだと思っているの!と思いつつも必死で助けた。

 他人だと淡々と助けられるのにやはり身内と顔を知っている使用人が怪我をしているのでわたしも動揺が走った。


「はあ、怪我人はもういませんか?」

周りを見てスティーブ様に聞いた。

「大丈夫だ。馬が暴走して馬車が建物にぶつかり衝撃で馬車はぐしゃっとなったんだ。たまたま馬車に乗って走っていたんで追いかけて助けようとしたんだが遅かった」

「そうだったんですね」

「君が実家に帰っていると怪我が軽い使用人が教えてくれたんで一番酷かった君の父親をここに運んできた」

「助けてくださってありがとうございます」

「じゃあ俺はこれで」

「待って!貴方も血だらけで怪我もしていますよね」

「ああ、助ける時壊れた馬車の扉を無理やり開けたから……大したことはないよ」

「確かに人の血もついていますが自分の血も出てるじゃないですか!」

「とにかく座ってください!治療しますから!」

無理矢理引き留めて治療をして

「ではお風呂に入って汚れているので綺麗にして来てください」

「治してくれただけで十分だ」

「そんな汚い格好で外には出れません!」

新しい服に着替えてもらった。

お父様や使用人たちは怪我が治りしっかり歩けるようになっていた。

「セレン助けてくれてありがとう、お前が居なかったわたしは今頃あの世へ行っていただろうな」
お父様がわたしを見るなり頭を下げた。

「わたしにお礼を言う前にスティーブ様にお礼を言ってください。彼は怪我をしながらみんなを助けてくれたんですから!彼がいなければ助けてあげることも出来なかったんですよ」

「スティーブ殿、感謝する。ありがとう」

「目の前にいた怪我人を助けたまでです、当たり前のことですから」


「とりあえずひと段落したのでひと息つきませんか?」とわたしが提案した。

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