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ルバート伯爵家。
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宿屋を紹介してもらってルドルフを預かってもらうことにした。ルドルフにとっても長旅だったのでゆっくりと過ごさせてやりたかった。
その宿屋の主人は元騎士だったらしく馬好きで、馬小屋も大きい。
それに干し草だけではなく、放牧場も近くにあり好きなだけ馬の好きな草を食べることもできた。
「ルドルフ、どう?ここなら好きなことができそうかしら?」
ルドルフは鼻をわたしの顔に近づけてきた。
優しく頭を撫でてあげながら。
「別にお別れするわけではないわ。わたしもしばらく宿に泊まるからルドルフはここでゆっくり過ごして欲しいの……これからの二人のことも考えるつもりよ」
ルドルフと二人でこれから生きていくつもりだ。
だからこそ村から出ていくしかなかった。
大きな町なら元貴族令嬢でも暮らしやすいとおじちゃんが話してくれた。
「小さな村じゃしがらみが多いが、大きい町なら人も多いから隠れやすい、女子一人でもなんとかやっていける」
うん、なるほどと納得した。
ルバート伯爵家へ身を寄せるつもりはないけど、運が良ければ働き口くらいなら紹介してもらえるかもしれない。
服屋さんに戻って店主や店員と服を選んでは、どんな組み合わせがいいのか話をした。
ついでにこんな服があったらいいなぁとか、もっと袖に膨らみをつけたら?とか、スカートの長さも変えたら?とか、わたしが生きた前世の時代を思い出しながらいろんなアドバイスをしていたらあっという間に時間が過ぎた。
「楽しかったです、またこんな話ができたらいいですね」
わたしは壁にかかった時計をチラリと見て「じゃあ、ルドルフが待ってますので」と席を立ち店を出ようとした。
「お待ちください!また、明日は?ダメなら明後日?もっと話を聞きたいのです」
店主に引き止められ、少し困ってしまった。
このままズルズルとここに通っているわけにもいかない。
仕事も探さなきゃいけないし、おじちゃんの顔を立てて伯爵家にも行かないといけないし、それに、わたしの持っている宝石も換金しないとそろそろ懐具合も寂しくなってきたし。
「他に予定もありますのであと一日くらいならなんとか大丈夫です」
「よかったわ!デザイン画を何枚か用意しておくわ!それと、仮縫いで何枚かドレスも作るつもりなのでアドバイスが欲しいの」
「あの……わたしはデザイナーでもないし専門的な技術もありませんのでそれはちょっと……」
あまりの情熱的な瞳と強すぎる期待に心が引いてしまう。
だって服装を考えるのは好きだったけど、ある物で考えるだけで創り出すなんてしたことがなくて無理なんだもの。
それでも断っても諦めてもらえず二日後にまた来ることを約束して店を出た。
宿屋に戻る前にルドルフに会いに行った。
ルドルフは放牧場にいた。わたしを見つけると嬉しそうにそばにやってきた。
ずっとお互いの気配を感じる生活を続けてきたので離れているのは寂しい。
「少し一緒に馬場で走る?」
ルドルフはピタリとわたしの横にくっついてきた。
装備も慣れたもの。わたしもいつもの軽装に着替えた。
風を切って走る爽快感は堪らない。
わたしの気持ちがルドルフに伝わる。ルドルフも楽しそうに走っていた。
「ルドルフ、わたし明日は伯爵家を訪ねるつもりなの……先触れを出したら向こうから明日会いたいと返事が来たの。だから明日はここでゆっくりと過ごしていてね」
ルドルフもわかってくれて大人しく馬小屋に帰ってくれた。
わたしはそのまま宿屋に戻り部屋でゆっくりと過ごすことにした。
いつの間にか疲れていたのか眠っていたようだ。あたりが暗くなっているのに気がついてお腹が空いていることを思い出した。
「下に行ってみよう」
宿屋の一階は食事処になっていた。
店主のおじちゃんがわたしの顔を見て「食事?あっちに座りな」と案内してくれた。
夜のお店はお酒を飲む男の人たちが多い。
まだ16歳の女の子のわたしはお店の中で浮いていた。
店主のおじちゃんは心配して厨房の近くで立っていて、料理を運んでいるおばちゃんのそばに座るように案内してくれた。
「お腹が空いたでしょう?何か食べたいものはある?」
「お任せでお願いしてもいいですか?」
「ローストチキンは好き?あと……トマトのスープとサーモンのマリネがあるんだけど食べてみる?」
「はい!ぜひ!」
街はやはり料理もおしゃれになるみたい。田舎ではなかなか食べられないメニューが多い。
おばちゃんはわたしを見守るように立っていてくれて酔っ払いのおじちゃん達が絡んでこようとすると睨み「あっちに行ってなさい」と振り払ってくれた。
「安心して。うちの夫は元騎士だから危ないことは起こらないからね?」
「ありがとうございます」
旅の間はルドルフがずっと守ってくれた。そして一緒にいられなくて少し不安だけど、とても優しい人たちに出会えた。
洋服屋さんとの出会いのおかげでいい人達と知り合えた。
その宿屋の主人は元騎士だったらしく馬好きで、馬小屋も大きい。
それに干し草だけではなく、放牧場も近くにあり好きなだけ馬の好きな草を食べることもできた。
「ルドルフ、どう?ここなら好きなことができそうかしら?」
ルドルフは鼻をわたしの顔に近づけてきた。
優しく頭を撫でてあげながら。
「別にお別れするわけではないわ。わたしもしばらく宿に泊まるからルドルフはここでゆっくり過ごして欲しいの……これからの二人のことも考えるつもりよ」
ルドルフと二人でこれから生きていくつもりだ。
だからこそ村から出ていくしかなかった。
大きな町なら元貴族令嬢でも暮らしやすいとおじちゃんが話してくれた。
「小さな村じゃしがらみが多いが、大きい町なら人も多いから隠れやすい、女子一人でもなんとかやっていける」
うん、なるほどと納得した。
ルバート伯爵家へ身を寄せるつもりはないけど、運が良ければ働き口くらいなら紹介してもらえるかもしれない。
服屋さんに戻って店主や店員と服を選んでは、どんな組み合わせがいいのか話をした。
ついでにこんな服があったらいいなぁとか、もっと袖に膨らみをつけたら?とか、スカートの長さも変えたら?とか、わたしが生きた前世の時代を思い出しながらいろんなアドバイスをしていたらあっという間に時間が過ぎた。
「楽しかったです、またこんな話ができたらいいですね」
わたしは壁にかかった時計をチラリと見て「じゃあ、ルドルフが待ってますので」と席を立ち店を出ようとした。
「お待ちください!また、明日は?ダメなら明後日?もっと話を聞きたいのです」
店主に引き止められ、少し困ってしまった。
このままズルズルとここに通っているわけにもいかない。
仕事も探さなきゃいけないし、おじちゃんの顔を立てて伯爵家にも行かないといけないし、それに、わたしの持っている宝石も換金しないとそろそろ懐具合も寂しくなってきたし。
「他に予定もありますのであと一日くらいならなんとか大丈夫です」
「よかったわ!デザイン画を何枚か用意しておくわ!それと、仮縫いで何枚かドレスも作るつもりなのでアドバイスが欲しいの」
「あの……わたしはデザイナーでもないし専門的な技術もありませんのでそれはちょっと……」
あまりの情熱的な瞳と強すぎる期待に心が引いてしまう。
だって服装を考えるのは好きだったけど、ある物で考えるだけで創り出すなんてしたことがなくて無理なんだもの。
それでも断っても諦めてもらえず二日後にまた来ることを約束して店を出た。
宿屋に戻る前にルドルフに会いに行った。
ルドルフは放牧場にいた。わたしを見つけると嬉しそうにそばにやってきた。
ずっとお互いの気配を感じる生活を続けてきたので離れているのは寂しい。
「少し一緒に馬場で走る?」
ルドルフはピタリとわたしの横にくっついてきた。
装備も慣れたもの。わたしもいつもの軽装に着替えた。
風を切って走る爽快感は堪らない。
わたしの気持ちがルドルフに伝わる。ルドルフも楽しそうに走っていた。
「ルドルフ、わたし明日は伯爵家を訪ねるつもりなの……先触れを出したら向こうから明日会いたいと返事が来たの。だから明日はここでゆっくりと過ごしていてね」
ルドルフもわかってくれて大人しく馬小屋に帰ってくれた。
わたしはそのまま宿屋に戻り部屋でゆっくりと過ごすことにした。
いつの間にか疲れていたのか眠っていたようだ。あたりが暗くなっているのに気がついてお腹が空いていることを思い出した。
「下に行ってみよう」
宿屋の一階は食事処になっていた。
店主のおじちゃんがわたしの顔を見て「食事?あっちに座りな」と案内してくれた。
夜のお店はお酒を飲む男の人たちが多い。
まだ16歳の女の子のわたしはお店の中で浮いていた。
店主のおじちゃんは心配して厨房の近くで立っていて、料理を運んでいるおばちゃんのそばに座るように案内してくれた。
「お腹が空いたでしょう?何か食べたいものはある?」
「お任せでお願いしてもいいですか?」
「ローストチキンは好き?あと……トマトのスープとサーモンのマリネがあるんだけど食べてみる?」
「はい!ぜひ!」
街はやはり料理もおしゃれになるみたい。田舎ではなかなか食べられないメニューが多い。
おばちゃんはわたしを見守るように立っていてくれて酔っ払いのおじちゃん達が絡んでこようとすると睨み「あっちに行ってなさい」と振り払ってくれた。
「安心して。うちの夫は元騎士だから危ないことは起こらないからね?」
「ありがとうございます」
旅の間はルドルフがずっと守ってくれた。そして一緒にいられなくて少し不安だけど、とても優しい人たちに出会えた。
洋服屋さんとの出会いのおかげでいい人達と知り合えた。
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