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5話
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エイルくんのご両親はやはりマジール国の侯爵家の方だった。
こちらには仕事がてら旅行に来ていた。
その仕事とは我がフォーダン家との商談だったらしい。
「息子を助けていただきありがとうございました」
マーサン様が何度も頭を下げた。
「おとうさま、おねえちゃまはぼくとおなじまいごだよ」
エイルくんはキョトンとしていた。
「ふふ、迷子さんで同じ」
わたしがエイルくんと笑い合うと兄様が
「ジェシカはほんとよく迷子になるからな」とボソッと言った。
ーーよく迷子になる?どうして兄様が知っているのかしら?
わたしは幼い頃から方向音痴で迷子になってはお兄様や侍女達が探し回った。
でもそれは王都の屋敷でのこと。
わたしがキョトンとすると、またわたしの頭をくしゃっと撫でた。
エイルくん家族がいるホテルにわたしの服が届けられた。
「おねえちゃまのふくかわいかったのに」
エイルくんは残念そうにしていたが、わたしは膝がみえている服をずっと着ているのはさすがに恥ずかしいので急ぎ着替えた。
「ジェシカ、帰ろう」
兄様が着替えたわたしを待ってくれていた。
「今度お食事に招待させてください」
エイルくんのご両親から声をかけられた。
「はい、喜んで伺います」
その後わたしは屋敷に帰った。護衛騎士の人は涙目になりながら「申し訳ありませんでした」と何度も頭を下げられた。
わたしが勝手に迷子になったのに……「気にしないで」と言ったけど、普段のわたしの顔はちょっと冷たく感じるらしく、さらに怖がられて謝り続けられた。
そして………濡れて寒かったからなのか、高熱が出てわたしはしばらく寝込むことになった。
ーーーー
ここは?
なんだか今よりも顔が幼く感じる……
いくつだろう?
あ、この服は、確かお母様が領地から送ってくれたドレス……12歳の誕生日のプレゼントだったかしら……
でもこの服をどうしてお母様のいるグリス領で着ているのかしら?夢だから?
「セルジオ様、このドレスどうかしら?」
「ジェシカ、とても似合っているよ、今日のパーティーがとても楽しみだね」
「ふふ、この髪飾りとても気に入ったの」
「それはよかった、君にとても似合っているよ」
わたしと兄様が笑い合っている。
兄様からプレゼント?そんなもの貰った覚えなんてない。それに、「兄様」のことを「セルジオ様」と呼ぶなんて……
これはやっぱり夢よね?
わたしは熱でうなされながらも意識が目覚めようとしていた。ボーッとした頭で、夢なんだと思いながらまたぐったりとして眠りについた。
熱が少し下がり「喉が渇いたわ」
メイドのジェルがわたしが目覚めたことに気がついて、急いでお水を持ってきてくれた。
ベッドから起き上がり、クッションを背もたれにして座ると、お水を一気に飲んだ。
「けほっ……あ、ありがとう」
一気に飲んでむせたわたしは背中をさすられながら
「お嬢様よかった、熱が下がって……心配しました」
ジェルが慌ててお母様を呼びに行った。
「ジェシカ、目覚めたのね?まだ横になっていてね」
体の弱いお母様に心配をかけてしまってわたしは何度も謝った。
「お母様にご心配をおかけして申し訳ありません。わたしは大丈夫ですので、お母様こそ寝ていてください」
「わたしは大丈夫よ、そばにいさせてほしいの。少しくらい母親でいさせてちょうだい」
「……キツくなったらすぐに横になってくださいね」
ジェルは、お母様のためにベッドの横にソファを移動してくれた。
お母様はソファに座りわたしの寝ている様子をずっとみていてくれた。
「そばにいることしか出来なくてごめんなさい、ジェシカの看病をしてあげたいのだけど、わたしが何かすると周りが逆に心配するから」
「わたしはお母様と同じ時間を過ごせるだけで幸せです。だってお母様とこんなに長い時間一緒にいたことはないのですもの。5歳で別れてから会えるのは一年に一回だけ……だから今がとても幸せなんです」
「………そう、そうね。長い時間……一緒に……そうなのよね」
お母様は少し辛そうにしていた。
わたしの言葉に傷ついたのかしら?わたしが一緒にいたことがないと言ったから……
わたしは熱が下がらなくて、ずっとウトウトしながら数日を過ごした。
お母様は体調が良い時はわたしの部屋に来て、そばにいてくれた。
ティムがひょっこりと顔を出した。
「まだジェシカは寝込んでいるのか?そろそろ元気になったかと思ったのに」
明るい声で話すティムになんだか元気を貰う。
「お母様やみんなが心配してベッドから出してくれないの。わたしもそろそろ動きたいのに」
わたしが愚痴ると、「駄目です!やっと今日熱が下がりましたが、またいつ熱が上がるか分かりません。今日までは大人しくしていてください!」
「ジェシカもジェルには敵わないな」
ティムがジェルの勢いに圧倒されて苦笑い。
わたしも釣られて苦笑いをした。
「兄貴が心配してるんだ、今、護衛の仕事が忙しいらしくて会いに来れないから代わりに行ってきてくれって言われたんだ」
「あら?ティムはわたしのこと心配して会いに来てくれたのではないの?兄様に頼まれて仕方なく来てくれたの?」
「ち、違うよ!心配してきたんだ…あ!マリーナも心配してた。明日くらいマリーナも連れて来ていいかな?」
わたしはジェルをチラリと見ると
「明日なら体調も落ち着いていると思いますのでお会いしてもいいと思います」
「ジェルの許可を貰ったので是非明日はマリーナに会いたいわ」
「わかった、熱をぶり返さないように気をつけて!明日はマリーナ達を連れてくるから」
「うん、ありがとう」
その夜わたしは久しぶりに入浴して、スッキリとした。
熱も下がり、まだ怠いがお母様の前では出来るだけ元気な姿でいたい。
この夜はうなされる事なく眠ることが出来た。
今日はあの苦しくて切ない、なのにあったかい夢をみなかった。
ーー寝込んでいる間見た夢は起きてしまうと忘れてしまうのに何故か忘れてしまってはいけないと感じてしまう。
心の中がチクチクとして痛い。
頭の中で何度も思い出して!と言っているのに何故か記憶には残っていない。
◆ ◆ ◆
本日17時にもう1話投稿予定です。
皆様読んで頂きありがとうございます
こちらには仕事がてら旅行に来ていた。
その仕事とは我がフォーダン家との商談だったらしい。
「息子を助けていただきありがとうございました」
マーサン様が何度も頭を下げた。
「おとうさま、おねえちゃまはぼくとおなじまいごだよ」
エイルくんはキョトンとしていた。
「ふふ、迷子さんで同じ」
わたしがエイルくんと笑い合うと兄様が
「ジェシカはほんとよく迷子になるからな」とボソッと言った。
ーーよく迷子になる?どうして兄様が知っているのかしら?
わたしは幼い頃から方向音痴で迷子になってはお兄様や侍女達が探し回った。
でもそれは王都の屋敷でのこと。
わたしがキョトンとすると、またわたしの頭をくしゃっと撫でた。
エイルくん家族がいるホテルにわたしの服が届けられた。
「おねえちゃまのふくかわいかったのに」
エイルくんは残念そうにしていたが、わたしは膝がみえている服をずっと着ているのはさすがに恥ずかしいので急ぎ着替えた。
「ジェシカ、帰ろう」
兄様が着替えたわたしを待ってくれていた。
「今度お食事に招待させてください」
エイルくんのご両親から声をかけられた。
「はい、喜んで伺います」
その後わたしは屋敷に帰った。護衛騎士の人は涙目になりながら「申し訳ありませんでした」と何度も頭を下げられた。
わたしが勝手に迷子になったのに……「気にしないで」と言ったけど、普段のわたしの顔はちょっと冷たく感じるらしく、さらに怖がられて謝り続けられた。
そして………濡れて寒かったからなのか、高熱が出てわたしはしばらく寝込むことになった。
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ここは?
なんだか今よりも顔が幼く感じる……
いくつだろう?
あ、この服は、確かお母様が領地から送ってくれたドレス……12歳の誕生日のプレゼントだったかしら……
でもこの服をどうしてお母様のいるグリス領で着ているのかしら?夢だから?
「セルジオ様、このドレスどうかしら?」
「ジェシカ、とても似合っているよ、今日のパーティーがとても楽しみだね」
「ふふ、この髪飾りとても気に入ったの」
「それはよかった、君にとても似合っているよ」
わたしと兄様が笑い合っている。
兄様からプレゼント?そんなもの貰った覚えなんてない。それに、「兄様」のことを「セルジオ様」と呼ぶなんて……
これはやっぱり夢よね?
わたしは熱でうなされながらも意識が目覚めようとしていた。ボーッとした頭で、夢なんだと思いながらまたぐったりとして眠りについた。
熱が少し下がり「喉が渇いたわ」
メイドのジェルがわたしが目覚めたことに気がついて、急いでお水を持ってきてくれた。
ベッドから起き上がり、クッションを背もたれにして座ると、お水を一気に飲んだ。
「けほっ……あ、ありがとう」
一気に飲んでむせたわたしは背中をさすられながら
「お嬢様よかった、熱が下がって……心配しました」
ジェルが慌ててお母様を呼びに行った。
「ジェシカ、目覚めたのね?まだ横になっていてね」
体の弱いお母様に心配をかけてしまってわたしは何度も謝った。
「お母様にご心配をおかけして申し訳ありません。わたしは大丈夫ですので、お母様こそ寝ていてください」
「わたしは大丈夫よ、そばにいさせてほしいの。少しくらい母親でいさせてちょうだい」
「……キツくなったらすぐに横になってくださいね」
ジェルは、お母様のためにベッドの横にソファを移動してくれた。
お母様はソファに座りわたしの寝ている様子をずっとみていてくれた。
「そばにいることしか出来なくてごめんなさい、ジェシカの看病をしてあげたいのだけど、わたしが何かすると周りが逆に心配するから」
「わたしはお母様と同じ時間を過ごせるだけで幸せです。だってお母様とこんなに長い時間一緒にいたことはないのですもの。5歳で別れてから会えるのは一年に一回だけ……だから今がとても幸せなんです」
「………そう、そうね。長い時間……一緒に……そうなのよね」
お母様は少し辛そうにしていた。
わたしの言葉に傷ついたのかしら?わたしが一緒にいたことがないと言ったから……
わたしは熱が下がらなくて、ずっとウトウトしながら数日を過ごした。
お母様は体調が良い時はわたしの部屋に来て、そばにいてくれた。
ティムがひょっこりと顔を出した。
「まだジェシカは寝込んでいるのか?そろそろ元気になったかと思ったのに」
明るい声で話すティムになんだか元気を貰う。
「お母様やみんなが心配してベッドから出してくれないの。わたしもそろそろ動きたいのに」
わたしが愚痴ると、「駄目です!やっと今日熱が下がりましたが、またいつ熱が上がるか分かりません。今日までは大人しくしていてください!」
「ジェシカもジェルには敵わないな」
ティムがジェルの勢いに圧倒されて苦笑い。
わたしも釣られて苦笑いをした。
「兄貴が心配してるんだ、今、護衛の仕事が忙しいらしくて会いに来れないから代わりに行ってきてくれって言われたんだ」
「あら?ティムはわたしのこと心配して会いに来てくれたのではないの?兄様に頼まれて仕方なく来てくれたの?」
「ち、違うよ!心配してきたんだ…あ!マリーナも心配してた。明日くらいマリーナも連れて来ていいかな?」
わたしはジェルをチラリと見ると
「明日なら体調も落ち着いていると思いますのでお会いしてもいいと思います」
「ジェルの許可を貰ったので是非明日はマリーナに会いたいわ」
「わかった、熱をぶり返さないように気をつけて!明日はマリーナ達を連れてくるから」
「うん、ありがとう」
その夜わたしは久しぶりに入浴して、スッキリとした。
熱も下がり、まだ怠いがお母様の前では出来るだけ元気な姿でいたい。
この夜はうなされる事なく眠ることが出来た。
今日はあの苦しくて切ない、なのにあったかい夢をみなかった。
ーー寝込んでいる間見た夢は起きてしまうと忘れてしまうのに何故か忘れてしまってはいけないと感じてしまう。
心の中がチクチクとして痛い。
頭の中で何度も思い出して!と言っているのに何故か記憶には残っていない。
◆ ◆ ◆
本日17時にもう1話投稿予定です。
皆様読んで頂きありがとうございます
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