【完結】氷の騎士は忘れられた愛を取り戻したい〜愛しています〜令嬢はそれぞれの愛に気づかない

たろ

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7話

貴族の子供達にとって社交界デビューは逃げることはできない。

婚約解消されてまだ醜聞が収まらないわたしだけど、15歳の時にするのが習わし。
それならば夏休みの間にマリーナが一緒に夜会に参加すれば守ってあげられるからと、彼女からの提案で今回の夜会に出席にすることにしたのだ。

お母様は一人楽しんで、デザイナーの人と話し合いながらわたしとマリーナのドレスを作ってくれた。
マリーナは男爵家の娘、ただ、お母様は早くに亡くされていてお父様は再婚していないので母親がいない。
だからお母様がマリーナのお父様に話を通してマリーナのドレスも一緒に作ったのだった。
もちろんマリーナとわたしの意見も聞いてもらいながら作ってもらったので出来映えに二人は大満足だった。

そして夏休みに入ると、お母様も含めわたしとマリーナ、ティムは王都の我が家に向かった。

セルジオ兄様は仕事があるので、少し遅れてから来ることになっている。

久しぶりの我が家。
お父様にお会いするのは怖いし不安がある。でもお母様もいるし何か言われることは少ないだろうと少しだけ安心もしている。そう少しだけ……


ーーー

「ただいま」

私たちを出迎えた使用人たちはお母様の顔を見ると涙ぐむ人もいた。

10年ぶりの公爵邸の中はなんだか活気づいたようだった。
お兄様もお母様に抱きついて

「母上、お疲れでしょう?まずはゆっくりとしてください」
と言って部屋へと案内した。

やはり長旅はお母様の体力を奪っていた。

「少し横になるわ」

ふらふらとしていたお母様をお兄様は抱き抱えてすぐに部屋へ連れて行ってしまった。

その夜はやはりお母様は熱を出して寝込んでしまった。いくら鉄道が出来て早くなったとはいえ、二日間の列車移動は堪えたようだ。

でも次の日には熱は下がった。

「お母様しばらく安静にしていてくださいね」
お父様は王城での仕事が忙しいようでここ数日帰ってきていないらしい。

「あの人にいつ会えるかしら?」
お母様はお父様が帰ってこられるのを楽しみにしている。

「ジェシカ、あの人は厳しい人だけど愛情深い方なのよ」
お母様のこの言葉にわたしは苦笑いしかでなかった。

ーーー

マリーナはわたしの部屋で寝泊まりすることになった。
もちろん客間もあるのだけど、マリーナは広すぎる部屋が落ち着かないとわたしに訴えてきたのだった。
せっかくだから一緒に過ごすことになったのだ。わたしも王都にはあまりいい思い出がないけどマリーナのおかげで楽しく過ごせている。

ティムと三人で夜会の日までいろんなところを回った。
王都で今流行っているカフェやレストラン、行列のできるケーキ屋さんも三人で並べば楽しかった。

「うわぁ、これみんなにも食べさせたい」
領地ではなかなか食べられない新作スイーツがたくさんある。
二人は王都の街並みを楽しんでくれた。
かく言うわたしも、そんなに街中に出てまわったことがないので、マリーナ達と反応は変わらなかったけど。

領地でもよく乗馬はしたけど、今度王都の外れにある森まで行くことになった。
兄様がもうすぐこちらに来る。
四人で出かけようと話している。

お父様は忙しい仕事の合間に屋敷に帰ってくることが増えた。もちろんお母様のために。
お母様はとても嬉しそう、一緒に来て良かった。
でもわたしを見るお父様の目は少し怖い。無理にわたしに話しかけることはない、その無言がさらに怖く感じてしまう。

「あの人は不器用なのよ」
お母様はよくそう言うけど、一体何を不器用だと言うのだろう。
わたしには理解できなかった。


ーーー
セルジオ兄様が1週間遅れてやってきた。
最近はわたしとは会話をしてくれる。
初めのうちはとっつき難くてどうしようかと思っていたけど、今ではお互い話さなくても一緒にいて不思議に居心地がいい。

今も屋敷の庭で二人でお茶をしている。

マリーナとティムは、お店に頼んでおいたケーキを取りに行った。使用人が取りに行くと言ったのだが、理由をつけて街へ出かけたい二人は使用人の申し出を断った。

わたしは今日は一日ゆっくりしたいので昼間は庭の四阿で読書をしていた。

「ジェシカ?君は出掛けなかったの?」
兄様が私が居るので驚いていた。

「今日は断ったの。ゆっくり本を読んで過したかったから」

「まあ、あの気忙しい二人とずっと一緒だと疲れるだろう?」

「とても楽しいわ、わたし領地で暮らせて今は幸せなんです」

「……婚約解消して半年近く経つけど君が夜会に参加すれば注目されるだろう。出来るだけそばにいるから離れないで」

「兄様、心配しないで。わたしに嫌味を直接言いに来る人は少ないわ。陰で話されることの方が多いと思うの。これでもフォーダン公爵令嬢だもの、敵に回したくはないと思うの……
学園に行っていれば色々言われていたかもしれないけど」

学園では身分はあまり関係ない。
なので陰どころか直接酷いことも言われたかもしれない。

でも夜会は大人の社交場。
みんな品位だけはしっかり持って行動する。
とくに女性は扇子で顔を隠して表情を相手に見せない。
笑っているのか嘲笑っているのか……とても怖いけど、直接の攻撃は少ないだろう。

「それでも何があるかわからないからね」

「ありがとう」

兄様といると何故かそわそわとした気持ちになる。よくわからないこの感情、でも気にしても仕方ない。


ーーー

夜会の日。

わたしもマリーナも体じゅう磨かれて、髪をセットされた。
わたしは髪を下ろして編み込みをゆるくいくつかしてもらいサイドを上げてふんわりとした雰囲気にしてもらった。

マリーナは複雑に編み込んでもらい高い位置でアップにしてもらった。

お揃いのドレスにお揃いのネックレス。

「ジェシカ、綺麗よ」
「マリーナこそ綺麗よ」

お互い褒め合って、顔を合わせて笑った。

「さあ、今日は気合を入れて頑張るわ」
わたしの言葉に

「なんか戦いにでも行くみたいだな」
と呆れていたティム。

ティムも本当はわたしのことを心配してくれている。茶化すけど「なんかあったらすぐに俺たちに頼れよ」
と言ってくれた。

兄様はわたしの手を優しく握り耳元で囁いた。

「ジェシカ、綺麗だよ」

そしてわたしの腕にブレスレットをしてくれた。
セルジオ兄様の瞳の青い宝石、サファイアが使われていた。
「慈愛、誠実、真理、貞操、友情」の石言葉がある。

彼はわたしにどの言葉の意味を伝えたいのだろう?何も考えずに渡してくれたのかしら?

なんて馬鹿なことを思ったけど、従姉妹へのただのお祝いのプレゼントだろう。
意味なんてあるわけない。

わたしは兄様にお礼を言って、四人で馬車に乗り王宮へと向かった。




★少しタイトルを変更致しました。

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