15 / 26
15話
お父様から聞かされた話をいくら聞いてもわたしの記憶は戻らなかった。
でもわたしはお父様に嫌われてはいないことだけはなんとなくわかった。
そして次の日お母様と共に領地へ戻る時にわたしにお父様は言った。
「ジェシカ、大丈夫か?わたしが話したことでさらにお前を苦しめることになったかもしれない。
だがお前が本当のことを知りたいと苦しんでいるのならわたしが全て話すべきだと思った……セルジオのことをまた好きになったらいつでも言ってくれ。その時はきちんと婚約させてあげるつもりだ。
もちろんお前が他の人を好きになったらそれでもいい、まだ15歳だ。これから婚約者はゆっくりと探そう」
わたしはお父様の言葉に思わず目を大きく見開いてしまった。
「……すまない、驚かせて」
お父様がシュンとしていると横からお母様が苦笑しながら言った。
「ジェシカ、ごめんなさい。わたしが領地で過ごしている間あなたに辛い思いをさせてしまったわ。
この人は本当に不器用だし無愛想だし、言い方がキツく感じるけどでも子供達のことを彼なりには考えているの。
上手くはいかないけど」
「父上の愛情はわかりにくすぎるからね、俺も理解できるようになったのは最近だ。ジェシカにはまだ無理だよな」
確かにお兄様もお母様も、お父様は不器用だからといつも言っていた。
わたしも人と接するのが苦手なところがある。たぶんわたしが一番お父様に似ているくせに、一番理解できていなかったのかもしれない。
「お父様、ぜひ領地にも顔を出してください。お待ちしております」
「わかった、そちらにも行くとしよう」
お互い避けていた時間を今度は少しずつ取り戻せるような気がする。
「わたしも少しずつ体調も良くなってきたから王都にもたまには帰ってこようと思うのよ、ジャックスの結婚式にも参加したいしね」
お母様は肺が悪い。
空気のいいところで過ごすのが一番体にいい。
でも鉄道が敷かれてからは長い距離を数日かけて悪路を揺れながら帰らなくてよくなったので、お母様の体への負担はずいぶん減る。
これはお父様がお母様に会いやすくなるからとの強い思いが、我が領地に早くに鉄道をと無理を通して敷いたらしい。
お母様が笑いながら話してくれた。
「あの人は口では何も言わないのだけど、わたしのために何がなんでも早く鉄道を!と国王に直談判をしていち早く取り入れたのよ、ジェシカ達がわたしに会いに来やすいようにね」
「お父様にそんな行動力があるのですか?」
とても優秀な方なのは知っている。領地にいち早く鉄道を敷いたことも有名な話だ。
でもその原動力は、お母様のためだったなんて………
「ふふ、わたしのため。でもあなた達のためよ?ジェシカはわたしにいつも会いたがっていたでしょう?」
「確かに……おかげでお母様に会うのは年に一回から二回へと増えました」
お父様は気恥ずかしいのか黙ったままだったがボソッと一言。
「わたしがジェシカやジャックスとお前を引き離してしまった。だからお前達がみ会えるようにしてやりたかったんだ」
「違うわ、わたしの体が弱いから王都の空気が合わなかったのよ、ごめんなさいね二人とも」
こんなふうに家族で話ができるとは思わなかった。
「また会おう」
お父様はわたしをそっと抱きしめてくれた。
ーーーーー
列車の中でお母様はセルジオ兄様のことを色々と話してくれた。
12歳の時に半年間領地で過ごしていた時、わたしと兄様はとても仲良くなった。
お互い意識をしだして、両思いになったこと。
わたしはお母様にそのことを嬉しそうに話したらしい。
毎日会える時は二人で過ごした。
兄様は今は冷たい印象を持たれているけどその頃は優しく微笑む人だったらしい。
本人には騎士になりたいという希望はなかったのに、わたしが騎士になってわたしを守って!と冗談混じりに言った言葉から騎士を目指したらしい。
すぐに高等部に行くことをやめて士官学校へ行くように手続きをした。
兄様のご両親は、とても驚いていたらしいが本人の立っての希望なので認めることになったと聞いた。
わたしの一言が彼の人生を変えた。そして、わたしは彼を裏切り殿下と婚約をしていたのだ。
それも彼のことを完全に忘れて……
お母様に話を聞いてもわたしにとってその話は全て他人の話でしかなかった。
でも、他人の話なのに胸がギュッと苦しくなる。
それは思い出したからではなくて、兄様の優しい顔を思い出すから。
以前の兄様ではなく、今の兄様にわたしは恋をしているんだと話を聞きながら自覚してしまった。
だから、夜会の時にマーガレット様と仲良く話しているのが気になったし、彼がわたし以外の人と踊っているのを見て嫌だったのだ。
わたしにはそれを咎める権利もヤキモチを妬く権利もないのに。
兄様から貰ったブレスレットにそっと触れた。
兄様の瞳の色のサファイア。
お祝いとして貰った意味はないブレスレット。でも夜会の日につけてくれたあの日から外すことが出来なかった。
本当は嬉しくてドキドキしたのに、兄様にはバレないように平然とした顔でいた。
あの時にはもう兄様が好きだったのに……
わたしは兄様に二度目の恋をした。
でもわたしはお父様に嫌われてはいないことだけはなんとなくわかった。
そして次の日お母様と共に領地へ戻る時にわたしにお父様は言った。
「ジェシカ、大丈夫か?わたしが話したことでさらにお前を苦しめることになったかもしれない。
だがお前が本当のことを知りたいと苦しんでいるのならわたしが全て話すべきだと思った……セルジオのことをまた好きになったらいつでも言ってくれ。その時はきちんと婚約させてあげるつもりだ。
もちろんお前が他の人を好きになったらそれでもいい、まだ15歳だ。これから婚約者はゆっくりと探そう」
わたしはお父様の言葉に思わず目を大きく見開いてしまった。
「……すまない、驚かせて」
お父様がシュンとしていると横からお母様が苦笑しながら言った。
「ジェシカ、ごめんなさい。わたしが領地で過ごしている間あなたに辛い思いをさせてしまったわ。
この人は本当に不器用だし無愛想だし、言い方がキツく感じるけどでも子供達のことを彼なりには考えているの。
上手くはいかないけど」
「父上の愛情はわかりにくすぎるからね、俺も理解できるようになったのは最近だ。ジェシカにはまだ無理だよな」
確かにお兄様もお母様も、お父様は不器用だからといつも言っていた。
わたしも人と接するのが苦手なところがある。たぶんわたしが一番お父様に似ているくせに、一番理解できていなかったのかもしれない。
「お父様、ぜひ領地にも顔を出してください。お待ちしております」
「わかった、そちらにも行くとしよう」
お互い避けていた時間を今度は少しずつ取り戻せるような気がする。
「わたしも少しずつ体調も良くなってきたから王都にもたまには帰ってこようと思うのよ、ジャックスの結婚式にも参加したいしね」
お母様は肺が悪い。
空気のいいところで過ごすのが一番体にいい。
でも鉄道が敷かれてからは長い距離を数日かけて悪路を揺れながら帰らなくてよくなったので、お母様の体への負担はずいぶん減る。
これはお父様がお母様に会いやすくなるからとの強い思いが、我が領地に早くに鉄道をと無理を通して敷いたらしい。
お母様が笑いながら話してくれた。
「あの人は口では何も言わないのだけど、わたしのために何がなんでも早く鉄道を!と国王に直談判をしていち早く取り入れたのよ、ジェシカ達がわたしに会いに来やすいようにね」
「お父様にそんな行動力があるのですか?」
とても優秀な方なのは知っている。領地にいち早く鉄道を敷いたことも有名な話だ。
でもその原動力は、お母様のためだったなんて………
「ふふ、わたしのため。でもあなた達のためよ?ジェシカはわたしにいつも会いたがっていたでしょう?」
「確かに……おかげでお母様に会うのは年に一回から二回へと増えました」
お父様は気恥ずかしいのか黙ったままだったがボソッと一言。
「わたしがジェシカやジャックスとお前を引き離してしまった。だからお前達がみ会えるようにしてやりたかったんだ」
「違うわ、わたしの体が弱いから王都の空気が合わなかったのよ、ごめんなさいね二人とも」
こんなふうに家族で話ができるとは思わなかった。
「また会おう」
お父様はわたしをそっと抱きしめてくれた。
ーーーーー
列車の中でお母様はセルジオ兄様のことを色々と話してくれた。
12歳の時に半年間領地で過ごしていた時、わたしと兄様はとても仲良くなった。
お互い意識をしだして、両思いになったこと。
わたしはお母様にそのことを嬉しそうに話したらしい。
毎日会える時は二人で過ごした。
兄様は今は冷たい印象を持たれているけどその頃は優しく微笑む人だったらしい。
本人には騎士になりたいという希望はなかったのに、わたしが騎士になってわたしを守って!と冗談混じりに言った言葉から騎士を目指したらしい。
すぐに高等部に行くことをやめて士官学校へ行くように手続きをした。
兄様のご両親は、とても驚いていたらしいが本人の立っての希望なので認めることになったと聞いた。
わたしの一言が彼の人生を変えた。そして、わたしは彼を裏切り殿下と婚約をしていたのだ。
それも彼のことを完全に忘れて……
お母様に話を聞いてもわたしにとってその話は全て他人の話でしかなかった。
でも、他人の話なのに胸がギュッと苦しくなる。
それは思い出したからではなくて、兄様の優しい顔を思い出すから。
以前の兄様ではなく、今の兄様にわたしは恋をしているんだと話を聞きながら自覚してしまった。
だから、夜会の時にマーガレット様と仲良く話しているのが気になったし、彼がわたし以外の人と踊っているのを見て嫌だったのだ。
わたしにはそれを咎める権利もヤキモチを妬く権利もないのに。
兄様から貰ったブレスレットにそっと触れた。
兄様の瞳の色のサファイア。
お祝いとして貰った意味はないブレスレット。でも夜会の日につけてくれたあの日から外すことが出来なかった。
本当は嬉しくてドキドキしたのに、兄様にはバレないように平然とした顔でいた。
あの時にはもう兄様が好きだったのに……
わたしは兄様に二度目の恋をした。
あなたにおすすめの小説
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
「静かで、退屈な婚約者だった」と切り捨てられたので、最後くらい全部言って去ることにしました
桃我タロー
恋愛
「静かで、退屈な婚約者だった」
婚約破棄のその日、王太子は広間でそう言い捨てた。
三年間、失言を隠し、場を整え、黙って支えてきたのに。
どうやら私に必要だったのは婚約者ではなく、“便利な人”という役割だけだったらしい。
しかも隣には、つい三日前まで殿下の従兄に求婚していた令嬢まで立っていて――。
ならばもう、黙っている理由はない。
これは、最後まで笑って終わるつもりだった令嬢が、自分の声を取り戻す話。
五度目の人生でも「君を愛することはない」と言われたので、私も愛を捨てました
たると
恋愛
「ルチア、私は君を愛することはない。この婚約は単なる義務だ」
冷徹な公爵、アルベルトの声が夜会会場の片隅で響く。
これで、五度目だ。
私は深く、そして軽やかに一礼した。
「承知いたしました。では、今後はそのように」
これまでは泣いて縋り、彼を振り向かせようと必死に尽くしてきた。
だが、死に戻りを五回も繰り返せば、流石に飽きる。
私は彼を愛することを、きっぱりと辞めた。
婚約破棄されたので、前世で倒した魔王を婿にします
なかすあき
恋愛
王宮の舞踏会で、王太子ユリウスから公開の婚約破棄を告げられた公爵令嬢フィオナ。
正式な破棄のために持ち出された王家の宝具「破婚の鏡」は、なぜか黒くひび割れ、彼女の前世の記憶を呼び覚ます。
前世のフィオナは、勇者一行の聖職者として魔王を討った女だった。
だがその瞬間、破婚の鏡は異界への門へと変わり、かつて自ら倒したはずの魔王ゼルヴァンが現れる。
「ようやく、直接会えた。結婚しろ、フィオナ」
軽い恋に酔って婚約者を切り捨てた王太子。
前世で討たれてなお、今世で彼女を探し続けていた魔王。
婚約を失った夜に始まったのは、失恋ではなく、
前世から続く、とびきり厄介な求婚の続きだった。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、家族も元婚約者もすべて失いました
あう
恋愛
「真実の愛を見つけた。君との婚約は破棄する」
王都の夜会でそう告げられたのは、公爵令嬢セリシア・ルヴァリエ。
隣に立っていたのは、かねてより彼女を陥れてきた義妹ミレイナだった。
継母は義妹を溺愛し、父は家の利益のために沈黙を貫く。
味方は誰一人いない――まさに四面楚歌。
だが、セリシアは涙を流さなかった。
「婚約破棄、謹んでお受けいたしますわ」
それは絶望ではなく、すべてを覆す反撃の始まりだった。
やがて明らかになる数々の真実。
裏切り者たちは自らの罪によって転落していき、セリシアは新たな出会いとともに、自らの人生を切り開いていく。
これは、誇り高き令嬢が四面楚歌から大逆転を果たし、裏切った者たちに救済なき断罪を下す物語。
そして最後に手にするのは――本当の愛と、揺るがぬ幸せ。
---
■キャッチコピー案(任意で使用可能)
「救済なし、後悔だけをあなたに。」
「すべてを奪ったつもりでしたか? 最後に失うのはあなた方です。」
「四面楚歌の令嬢による、華麗なる大逆転劇。」
【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜
桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」
私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。
私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。
王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした…
そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。
平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか?
なので離縁させていただけませんか?
旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
あなたが後悔しても、私の愛はもう戻りません
藤原遊
恋愛
婚約者のアルベルトは、優しい人だった。
ただ――いつも、私より優先する存在がいただけで。
「君は分かってくれると思っていた」
その一言で、リーシェは気づいてしまう。
私は、最初から選ばれていなかったのだと。
これは、奪われた恋を取り戻す物語ではない。
後悔する彼と、もう戻らないと決めた私、
そして“私を選ぶ人”に出会うまでの、静かな恋の終わりと始まりの物語。