【完結】氷の騎士は忘れられた愛を取り戻したい〜愛しています〜令嬢はそれぞれの愛に気づかない

たろ

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16話

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王都から帰ってきてからわたしの生活は変わった。

記憶は戻らないけど、全てを知ってからは周りが気を遣いながら話していたことに気がついた。

いつも会話にも気を遣ってくれていた。3年前のことをできるだけ話に出さないようにしてくれていたおじ様とおば様。
お母様も兄様のことは話さないようにしてくれていたしティムもマリーナも思い出話になるようなことはしなかった。

でも今は態と話して聞かせてくれる。

そして兄様の態度が一番変わった。
あまり近付こうとしなかった兄様が今はわたしに会いに来るようになった。

騎士として忙しい兄様は朝食だけは、離れに食べに来る。

「おはよう、ジェシカ」

「おはようございます」

わたしと兄様、お母様と三人でテーブルを囲い昨日は何をしたとか騎士の人たちの話を聞かせてくれる。

わたしにも「ジェシカは今日早く帰れるんだろう?そのあとはどうするの?」と聞いてきた。

「今日は……マリーナ達と図書館へ行こうと話しています」

「うちの領地の図書館はジェシカの父君の公爵閣下のおかげで書籍は充実しているからね、王立図書館に負けないんじゃないかな?」

「はい、わたしもそう思います。向こうにはないものもたくさんこちらにはあります。ですから行くのが楽しみなんです」

お母様はわたしと兄様の話をニコニコしながらいつも聞いている。それがなんだか恥ずかしい。

「俺今日早上がりだから迎えに行くよ」

「え?何処にですか?」

「うん?学校。一緒に図書館に行こう」

マリーナ達と行くと言ったのだけど…でもせっかくの誘いなので
「はい、じゃあ学校で待ってますね」と笑顔で返事をした。


ーーーーー

「マリーナ、今日の図書館なんだけど…」

「ティムに聞いているわ、セルジオ様が迎えに来てくれるんでしょう?わたし達は先にティム達と行くからゆっくり二人で来たらいいわ」
マリーナは、口元を綻ばせて言った。

なんだか恥ずかしくて

「う、うん、じゃあ向こうで会いましょうね」

「わかったわ、ジェシカが読みたがっていたアルク国の伝記の本探しておくから!」

「ありがとう、助かるわ」

「いいのよ、わたしは恋愛小説が読みたいだけだし。ま、読まなくても目の前で見れるからいいんだけどね?」

「へ?」

「ふふふ、わたしの楽しみが増えて今とっても幸せよ」
よくわからない笑みを浮かべるマリーナ。

わたしは兄様が迎えに来るまで学校の中庭でのんびりと持っていた本を読むことにした。

王都の学校と違ってこの学校はあまり貴族と平民の差がない。みんな仲が良くてわたし自身も居心地がいい。

「ジェシカさん、マリーナは?」
「先に図書館にいったわ」
「そうなんだ、一人でいるの珍しいよね?」

返事をしようと思ったら、後ろから声が聞こえた。

「ジェシカ遅くなってごめん」

急いできた兄様。
その姿に同級生達は驚いていた。

「セ、セルジオ様?」

「やあ、こんにちは。ジェシカの友達?」
兄様がこんなふうに人に話しかけることは今までなかった。
流石にわたしも驚いてボーッと見ていると

「ジェシカ?どうした?体調が悪いのか?」

わたしのおでこに手を当てて熱を測り

「熱はないな?どうした?急いで帰ろうか?」
わたしをそっと立たせてくれた。そして抱っこしようとしたので
「にいさま!やめて!」
わたしは恥ずかしくて必死で抵抗した。

「うん?ジェシカ?歩ける?」

「はい、もちろんです。体調は全く問題ありませんわ、さあ図書館へ行きましょう」

周りに気づかれないように動揺を隠してみんなに「さよなら」を言ってわたしは兄様の手を握りしめて急いで馬車を停めてある場所へと向かった。

「ジェシカ、そんなに急がなくても大丈夫だよ?」

その言葉にハッとして足をとめた。

「兄様、な、なんか最近少し様子がおかしいのでは?」
恥ずかしさもあるけど今までと余りにも違いすぎて戸惑う。

「うん?もうやめたんだ」

「やめた?」

「そう、君を諦めることを。これからはちゃんとわかってもらおうと思ってる。俺は前の君も今の君も好きだよ?」

「前と今?」

「記憶を失う前は明るくて活発な子だった。いつも目をくるくるとさせて何を見ても嬉しそうでいつも笑っていた。そんなジェシカに惹かれた。今の君は笑うことが苦手で周りに気を遣って、でも君の瞳だけは変わらない。やっぱり笑うと昔のままなんだ。どんなに表情を殺していても君の瞳はとても優しいし美しい。だから俺はもう一度君に恋をしたんだ」

「兄様……わたしはどんなに思い出そうとしても記憶が戻らないのです。でもここにいると王都では感じなかった安心感と幸せを感じます。
兄様のことも…出来ればもう一度あなたを好きになってもいいですか?」

「兄様ではなく、セルジオと呼んで欲しい」

「………ううっ、それはまだ無理です。恥ずかしすぎます」

「嫌ではない?」

「はい」

兄様と二人の馬車の中、告白を思い出しては恥ずかしくて話すこともできずにいた。そんなわたしを兄様はニコニコしながら見ていた。

クールであまり笑わないはずの兄様がこんなに優しく至近距離で見つめてくると、どきどきして直視できない。   

「ジェシカ、次は街に買い物に行かないか?」

「行ってみたいです」
彼のほうに顔を向けると彼の愛情が伝わる柔らかな笑み。
思わず私は息を呑んで見とれてしまった。




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