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19話
ジェシカはとても明るい女の子。だけどいつも周りに気を遣う。
「もっと我儘を言っていいのに」と言うと
「セルジオにだけ言ってもいい?」と少し寂しそうに言ったのを忘れられない。
俺はその言葉にグッときた。
顔は笑っているのにどこか寂しそうに言う7歳の女の子。
この子が笑っているのはもしかしたら周りに気を遣っているからかもしれない。自分の気持ちを隠して明るく過ごしているのかも。
そう思うとジェシカの様子を観察するようになった。
王都では我儘を言わないようにお利口に過ごす。
年に一回母親に会いにくる領地では、体の弱い母親に心配かけまいとやはり笑顔で過ごす。
体調が悪い時でも、周りに悟られないようにしていた。
そんなジェシカがだんだん気になるようになった。
「我儘を言っていい」と言ったのに1年経っても2年経っても言ってくることはない。
笑顔という仮面を外すこともしない。
俺は9歳のジェシカにちょっとした意地悪をした。
ジェシカが大事にしていた髪飾りをそっと隠した。もちろんすぐ返すつもりだった。ただいつもの取り繕った笑顔をやめさせたかったから。
大人気ない意地悪にジェシカは、それでも笑顔をやめず
「セルジオ、返して?」と笑って言った。
「ジェシカが俺に怒ってくれたら返す」
「何を言っているの?」
ジェシカは笑顔をやめて眉を顰めた。
「俺はジェシカに無理して笑うのをやめて欲しいと思っている。嫌なことは嫌だ。寂しいなら寂しいと言って欲しい」
「意味がわからないわ」
「以前言っただろう?我儘を言っていいと」
「………我儘って何を言えばいいの?よくわからないわ」
「俺は覚えてるよ、ジェシカが小さい頃は本当によく笑う子だった、今のジェシカは作り笑いしかしない。感情を殺してずっと過ごしているのが見ていてわかる」
「仕方がないじゃない。お母様は体調が悪くて領地にいるのよ?お父様は忙しくてわたしのことを見ようともしない、お兄様だってお忙しいし。わたしは良い子でいないといけないの」
「だからこそ、たまにしか会えないけど俺の前ではその良い子の仮面を外すせばいい」
「仮面?セルジオの言っていることはよくわからない」
ジェシカは悲しそうに俺を見た。
それでも俺は領地にいる間、ジェシカの仮面を外そうとちょっとした意地悪をしたり逆に甘やかしたりしてみた。その度にジェシカは少しずつ「またなの?」と呆れた顔をする。
少しずつ俺にだけ見せるジェシカの顔が増えた。
不機嫌になったり大笑いをしたり。
本気で怒ってきたり。
俺の可愛いジェシカ。
一年のうち会えるのはほんの二月ほど。
俺が父上について王都に来る時とジェシカが領地に来る時くらいだ。
その時間がお互い大切になったのに。
やっとジェシカと両思いになったのにジェシカは俺のことを忘れてしまった。
そしてアンネはしつこく俺に婚約の打診をしてくる。まるで蛇のように俺に纏わりついてくる。
父上にどんなに断ってもらっても懲りずに俺に会いにくる。
王都でジェシカといると睨んでくる鋭い視線。
出来るだけ俺はジェシカの屋敷から出ないでジェシカと過ごすようになった。
すると俺にしつこく手紙を送ってくる。
「お茶会」の誘いを。
「俺は行かないからその手紙は捨てておいて」
ジェシカの屋敷で俺は執事に捨てるように頼んだ。
「ですが……毎日のようにセルジオ様に届いております」
「父上と話してみる」
屋敷に戻ってきた父上とジェシカの父でもある公爵に話をした。
あまりにもしつこい手紙。何度もくる婚約の打診。
ジェシカといるとものすごく睨んでくる視線。
流石に父上も辟易としていたが何かをするわけでもない、子供のことだからと様子を見ることになった。
そしてジェシカが12歳。
俺が15歳の時に婚約したいと父上に伝えるつもりが突然のジェシカとギルス殿下の婚約。
俺は呆然とするしかなかった。
子どもの俺が大人でもどうすることもできない王族からの打診を覆すことなど出来るわけがなかった。
「諦めなさい」父上の言葉。
さらにジェシカが大怪我をして俺との記憶だけを忘れたと言われた。
俺はセルジオから兄様になってしまった。
遠くから見るジェシカは作り笑いすらなくなっていった。
いつも無表情で何を考えているのかわからない顔になっていた。
心が凍ってしまっていた。
でも俺も同じだった。
もう心は動かない。
ジェシカを遠くから見つめることも苦しくなった。
俺は騎士になることだけを考えて過ごした。
もう一度この手にジェシカを取り戻せるとは思っていなかった。
アンネが殿下と恋人になったのは、ジェシカから殿下を取り上げてジェシカが悲しむところを見たいだけだった。
そして殿下はアンネのジェシカへの悪意に気がつき、アンネの底知れぬ不気味さに何をしでかすかわからないのであえてアンネの恋人になりジェシカを守ろうとした。
ジェシカの父親は、そんなアンネのことを調べ上げたが、彼女自身何も悪いことはしていないためどうすることもできずにいた。
だがこのままアンネと付き合う殿下と婚約させていては、いつかジェシカに危害を加えられると思い、婚約を解消することにしたのだ。
そのことはこの前夜会にジェシカをエスコートした時に、殿下に呼ばれて説明された。
俺はアンネがまだ俺に執着しているので出来るだけジェシカのそばから離れないようにした。
なのに……アンネはいつの間にか王都で監視されていたはずなのに監視を掻い潜ってグリス領にきていた。
そして、ジェシカを攫って………
ジェシカはもう俺に会うことを嫌がるだろうか。
殿下はジェシカのために身を引いた。ジェシカのためにアンネと付き合った。
そして婚約解消までした。
なのに俺は?守ることすら出来なかった。
ちっくしょう!俺は苛立ちで何度も壁を叩いた。
「もっと我儘を言っていいのに」と言うと
「セルジオにだけ言ってもいい?」と少し寂しそうに言ったのを忘れられない。
俺はその言葉にグッときた。
顔は笑っているのにどこか寂しそうに言う7歳の女の子。
この子が笑っているのはもしかしたら周りに気を遣っているからかもしれない。自分の気持ちを隠して明るく過ごしているのかも。
そう思うとジェシカの様子を観察するようになった。
王都では我儘を言わないようにお利口に過ごす。
年に一回母親に会いにくる領地では、体の弱い母親に心配かけまいとやはり笑顔で過ごす。
体調が悪い時でも、周りに悟られないようにしていた。
そんなジェシカがだんだん気になるようになった。
「我儘を言っていい」と言ったのに1年経っても2年経っても言ってくることはない。
笑顔という仮面を外すこともしない。
俺は9歳のジェシカにちょっとした意地悪をした。
ジェシカが大事にしていた髪飾りをそっと隠した。もちろんすぐ返すつもりだった。ただいつもの取り繕った笑顔をやめさせたかったから。
大人気ない意地悪にジェシカは、それでも笑顔をやめず
「セルジオ、返して?」と笑って言った。
「ジェシカが俺に怒ってくれたら返す」
「何を言っているの?」
ジェシカは笑顔をやめて眉を顰めた。
「俺はジェシカに無理して笑うのをやめて欲しいと思っている。嫌なことは嫌だ。寂しいなら寂しいと言って欲しい」
「意味がわからないわ」
「以前言っただろう?我儘を言っていいと」
「………我儘って何を言えばいいの?よくわからないわ」
「俺は覚えてるよ、ジェシカが小さい頃は本当によく笑う子だった、今のジェシカは作り笑いしかしない。感情を殺してずっと過ごしているのが見ていてわかる」
「仕方がないじゃない。お母様は体調が悪くて領地にいるのよ?お父様は忙しくてわたしのことを見ようともしない、お兄様だってお忙しいし。わたしは良い子でいないといけないの」
「だからこそ、たまにしか会えないけど俺の前ではその良い子の仮面を外すせばいい」
「仮面?セルジオの言っていることはよくわからない」
ジェシカは悲しそうに俺を見た。
それでも俺は領地にいる間、ジェシカの仮面を外そうとちょっとした意地悪をしたり逆に甘やかしたりしてみた。その度にジェシカは少しずつ「またなの?」と呆れた顔をする。
少しずつ俺にだけ見せるジェシカの顔が増えた。
不機嫌になったり大笑いをしたり。
本気で怒ってきたり。
俺の可愛いジェシカ。
一年のうち会えるのはほんの二月ほど。
俺が父上について王都に来る時とジェシカが領地に来る時くらいだ。
その時間がお互い大切になったのに。
やっとジェシカと両思いになったのにジェシカは俺のことを忘れてしまった。
そしてアンネはしつこく俺に婚約の打診をしてくる。まるで蛇のように俺に纏わりついてくる。
父上にどんなに断ってもらっても懲りずに俺に会いにくる。
王都でジェシカといると睨んでくる鋭い視線。
出来るだけ俺はジェシカの屋敷から出ないでジェシカと過ごすようになった。
すると俺にしつこく手紙を送ってくる。
「お茶会」の誘いを。
「俺は行かないからその手紙は捨てておいて」
ジェシカの屋敷で俺は執事に捨てるように頼んだ。
「ですが……毎日のようにセルジオ様に届いております」
「父上と話してみる」
屋敷に戻ってきた父上とジェシカの父でもある公爵に話をした。
あまりにもしつこい手紙。何度もくる婚約の打診。
ジェシカといるとものすごく睨んでくる視線。
流石に父上も辟易としていたが何かをするわけでもない、子供のことだからと様子を見ることになった。
そしてジェシカが12歳。
俺が15歳の時に婚約したいと父上に伝えるつもりが突然のジェシカとギルス殿下の婚約。
俺は呆然とするしかなかった。
子どもの俺が大人でもどうすることもできない王族からの打診を覆すことなど出来るわけがなかった。
「諦めなさい」父上の言葉。
さらにジェシカが大怪我をして俺との記憶だけを忘れたと言われた。
俺はセルジオから兄様になってしまった。
遠くから見るジェシカは作り笑いすらなくなっていった。
いつも無表情で何を考えているのかわからない顔になっていた。
心が凍ってしまっていた。
でも俺も同じだった。
もう心は動かない。
ジェシカを遠くから見つめることも苦しくなった。
俺は騎士になることだけを考えて過ごした。
もう一度この手にジェシカを取り戻せるとは思っていなかった。
アンネが殿下と恋人になったのは、ジェシカから殿下を取り上げてジェシカが悲しむところを見たいだけだった。
そして殿下はアンネのジェシカへの悪意に気がつき、アンネの底知れぬ不気味さに何をしでかすかわからないのであえてアンネの恋人になりジェシカを守ろうとした。
ジェシカの父親は、そんなアンネのことを調べ上げたが、彼女自身何も悪いことはしていないためどうすることもできずにいた。
だがこのままアンネと付き合う殿下と婚約させていては、いつかジェシカに危害を加えられると思い、婚約を解消することにしたのだ。
そのことはこの前夜会にジェシカをエスコートした時に、殿下に呼ばれて説明された。
俺はアンネがまだ俺に執着しているので出来るだけジェシカのそばから離れないようにした。
なのに……アンネはいつの間にか王都で監視されていたはずなのに監視を掻い潜ってグリス領にきていた。
そして、ジェシカを攫って………
ジェシカはもう俺に会うことを嫌がるだろうか。
殿下はジェシカのために身を引いた。ジェシカのためにアンネと付き合った。
そして婚約解消までした。
なのに俺は?守ることすら出来なかった。
ちっくしょう!俺は苛立ちで何度も壁を叩いた。
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