【完結】氷の騎士は忘れられた愛を取り戻したい〜愛しています〜令嬢はそれぞれの愛に気づかない

たろ

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22話

ジェシカとして過ごすことにやっと慣れたわたし。
屋敷の人達はとても優しくて強張って人を拒絶していた最初の頃から比べて今は楽しく屋敷で過ごせるようになった。

わたしが驚いたのはこの国の第2王子であるギルス殿下がわたしのお見舞いに来たことだった。

顔すら知らない名前も知らない殿下が

「ジェシカ、大丈夫だったかい?」と優しく聞かれて

「は、はい」としか返事が出来なかった。

殿下はわたしに何か言いたそうにしていたけど結局お茶を飲んでお母様と話をして帰られた。

「ジェシカ何かあったらいつでも頼ってくれ」
そう言ってくれたけど、殿下に何を頼れと言うのだろうと思った。

そして殿下が帰ったあとにお母様が教えてくれた。
わたしと殿下は幼馴染で仲が良かったこと。
殿下とわたしが婚約していて、解消していたこと。

知らなかった、だから殿下はあんなに優しくわたしに話しかけたのか……でも殿下には好きな人が出来てわたしと婚約を解消したらしい。

でもその人とは別れてしまって今は婚約者がいない。

ちなみに記憶がなくなる前のわたしにも婚約者はいなかったらしい。

ついでにセルジオ様にもティムにも全くいないらしい。

聞くところによるとこの国は以前ほど政略結婚は減ってきているらしく自由恋愛も増えてきていると聞いた。
それに伴い結婚適齢期の年齢も少し上がって、今は女性が20歳から24歳くらい、男性は22歳から28歳くらいになったとお母様が教えてくれた。

政略結婚が多い頃は10代の結婚が多かったらしい。

ただ今でも王族は早く結婚することが多く、妃教育をしなければいけない女性は大変なので、やはり幼い頃から婚約を結んでいる人がいるらしい。
だからギルス殿下の婚約者は今のところなかなか決まらないと言っていた。
わたしの時でも遅くわたしは苦労したとお母様が言っていた。
たぶん他国の王族との婚約になるのではないかとお母様が言った。それならばこの国の文化さえ覚えてしまえばなんとか王子妃としてやっていけるだろうからと。

帰り際、殿下はわたしの顔を見て最後に泣きそうな顔で私を見つめていた。
ーーどうしてそんな顔をするのだろう?

そう思った。でもそれはもしかしてわたしが元婚約者だったから?多少の情は残っていたのかもしれない、態々わたしに会いにきてくれたのだから。               

「ジェシカのことを心配してくれたのよ。あなたのことを幼馴染として今も思ってくれているの」
わたしが、殿下がお見舞いに来てくれたことが不思議だったのを感じたのか、お母様がわたしに向かってそう言った。

「そんなに仲が良かったのですね?では殿下に恋人ができた時わたしは苦しんだのでしょうね?だから殿下はお詫びも兼ねて会いにこられたのかしら?」

「………それは違うわ、ジェシカは殿下のことを幼馴染としてしか好きではなかったわ。恋人が出来て愛し合っている二人を見て羨ましいと思っていたとわたしに話してくれたもの」

「そうなんですか?」

わたしはその言葉に驚きつつもなんとなく腑に落ちた。だって殿下に対して心が騒つくことも胸が痛むこともない。

セルジオ様と話す時は落ち着かなくていつも心がザワザワとしているもの。

それに街を案内してくれた時もたくさんの女性がセルジオ様を目で追っているのもとても嫌な感じがした。セルジオ様自身は興味もないのか慣れているのかそんな視線を全て冷たい瞳で払いのけていだけど。

ーーよくわからないわ

記憶をなくしてからのわたしは未だにどうして良いのかわからなくて屋敷でじっと過ごしている。

セルジオ様やティムが時間がある時に相手をしてくれる。そして最近はマリーナ様がわたしに会いにきてくれるようになった。

「ジェシカはわたしと親友だったのよ」
と、初めて会った時に教えてくれた。

「親友?」わたしがキョトンとしていると

「そうよ!とっても仲が良かったの!」
わたしの手を握ったと思ったら抱きしめてきた。
でもその体は小刻みに震えていた。

「ジェシカがいなくなってしまうと思って怖かったんだよ?生きていてくれてありがとう」

その言葉に何故か涙が出そうになった。

階段から落ちて記憶をなくしてみんなに心配をかけていたんだと今更ながら感じた。なのに記憶がなくて周りを信じられなくて酷い態度ばかり取っていた。

そんな自分に反省した。

「マリーナ様、以前のジェシカはもういませんがわたしは今のジェシカとして生きていこうと思います。だから今のわたしでもよければお友達になって下さると嬉しいです」

「当たり前じゃない?ジェシカが記憶をなくそうと以前のジェシカと違っていようと変わらないわ。あなたはわたしの親友よ?だってこんなに大好きなんだもの」

「わたしも……マリーナ様のことは好きになれそう」

「ふふ、愛の告白をしているみたい」

「たしかに……」

それからはマリーナ様がわたしに会いにきてくれるようになった。

二月ほどそんな時間が流れてわたしは学校へと戻っていった。不思議に学校でも違和感なく戻ることができた。記憶はないけどみんなが「ジェシカおかえり!」と声をかけてくれる。

マリーナ様が前もって教えてくれていたので、おかげで友達の顔と名前はすぐに一致した。

「ジェシカ、早く!」
マリーナ様はわたしの手を繋ぐと急いで食堂へと向かった。

「ほら、ここよ!ここがわたし達の特等席なの」
よくわからないけどたくさんあるテーブル席の中の左角のテーブルが私たちのお気に入りの場所だったらしい。そこに座るために授業が終わるとダッシュで行くのだと教えてもらった。

お昼に食べるのはAランチか日替わり定食をよく頼んでいたと聞いた。

「今日はわたしの奢りよ!」
そう言ってわたしに日替わり定食をドンっと目の前に置いてくれた。
2個の丸いパンにサラダ、デザート、スープ。メインは白身魚のバターソテー、たくさんの種類の野菜を刻まれたソースがかかっていた。

「美味しそう」

「美味しいのよ」

「マリーナは本当にジェシカが好きなのね?今日は一日中ジェシカ、ジェシカってうるさいくらいベッタリくっついているもの」

「だってやっとジェシカが学校に来るようになったのよ?とっても嬉しいの」

素直に喜んでくれるマリーナ様に「わたしも嬉しい」と返事をするとマリーナ様は「ジェシカ大好き」とまたわたしを抱きしめてくれた。

みんなは呆れていたけどこんなやりとりがとても居心地良くてこれからの毎日がとても楽しみだと感じた。

学校へ通うことになって行きと帰りはおじ様が護衛騎士をわたしにつけてくれることになった。

おじ様曰く、わたしは公爵令嬢なのに記憶がないから知らない人から声をかけられても、実際相手はわたしが記憶がないことを知らないので本当は知り合いかもしれないし、悪意があって近づいているかもしれないので一人での行動は危険だと言われた。

もちろんできるだけマリーナ様達と行動する予定だけど一人になることもあるかもしれないので常に数人が学校でわたしの動きを見守ってくれている。
邪魔にならない程度に護衛騎士達は姿を見せないようにはしてくれている。

大袈裟だと思ったけど、何も覚えていないわたしを攫うのは簡単なことだと思う。
一応公爵令嬢だから、それを考えると身の安全を守ることも大切なんだと思った。








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