5 / 32
第5話 ライアン編②
しおりを挟む
ルシアは早速僕に話しかけてきた。
「ライアン様、初めまして。わたしまだこの学園のことがよくわからないんです。色々教えて貰えたら嬉しいです」
栗色の長いツヤのある髪、くりくりした可愛らしい瞳はとても魅力的で僕はドキドキした。
可愛く、ふんわりとした彼女が話しかけてくる。
少し惹かれつつも父上に言われた通りに、態と彼女の言葉にのり、学園を案内した。
ミシェルに見られたらどう言い訳しようか悩みながらも、ルシアとの会話は楽しくて演技のはずがいつの間にか彼女と居るのが当たり前になっていた。
遠くでミシェルがこちらを見ているのに気づくが、彼女が寂しそうにしているのを見るとますますヤキモチを妬いてくれているかもと勝手に思い込み、ヤキモチが嬉しくなってルシアといる時間が増えていった。
ミシェルとはクラスが違ったのもあり、僕とミシェルが会える時間は減っていった。
たまに気になってミシェルの姿を探すといつもロバート殿下達といる事が多いのに気がついた。
ミシェルと殿下、他に生徒会メンバー達と楽しそうに話している姿を見ると自分はルシアといるくせに、イライラした。
そんなある日、僕とルシアが放課後二人で並んで帰る姿を、後ろからミシェルが見ていたのに気がついた。
突然走り去るミシェルを見て僕は思わず追いかけたくなった。
「ルシア、ごめんね。僕忘れ物したから先に帰って」
僕はルシアを置いて、ミシェルを追いかけた。
「ミシェル、また逃げてきたのか?」
「…………少しだけここに居てもいいですか?」
ミシェルは生徒会室に逃げ込んで、友人でもあるロバート殿下の仕事を手伝っていた。
もちろん生徒会室には他にも副会長や書紀、会計の子達も居たが、ミシェルは殿下と親しげに笑いながら話していた。
「ねえ、わたしの仕事を当たり前のように取っておかないで!」
ミシェルはみんなに文句を言いながらも手伝っていた。
「ミシェル、一度ライアンと話し合った方がいいと思うよ」
殿下がミシェル言うと、会計の女の子も心配して言った。
「わたしもそう思うわ。ライアンはミシェルの事をあんなに好きだったのよ、何かがあってすれ違っているのだと思うわ」
「ありがとう、でも、わたしの勘違いだと思えないわ。ルシア様とあんなに近い関係に見えるはずがないもの」
「確かに二人は少し近すぎると思う。でも理由があるのかもしれないわ」
「わたし達の婚約は両家の親達の仕事も絡んでいるから簡単には婚約解消は出来ないわ。このまま気持ちが無くなっても結婚するしかないの」
(気持ちが無くなる?僕をもう好きではなくなるのか?)
僕はミシェルの話しを聞いて部屋の外で呆然と立ち尽くしていた。
それからはあんなに惹かれていたルシアに対して何も感じなくなった。
どんなに体を擦り寄ってこられても、さりげなく躱した。
元々彼女とキスすらしていなかった。
親しげにはしていたし彼女の家に遊びにも行ったが、それはあくまで彼女達男爵家を油断させるためだった。
僕がルシアと親しいので、このままミシェルとは婚約解消をするかもしれないと、男爵に匂わせて油断させた。
そしてその間に、父上はいろんな証拠や証言を集めていた。
公爵に対抗できるだけの証拠もあと少し。
「卒業パーティーのエスコートはルシアにしてくれないか」
と父上に言われた。
「嫌です。もう大体証拠も集まったでしょう。僕はミシェルのそばにいたい。最後の学園の日に好きでもないルシアといたくはないです」
「あと少しなんだ。卒業パーティーに一緒に出るとなれば男爵だけではなく公爵も油断する、頼む」
僕はミシェルへドレスを贈る事も出来なかった。
ミシェルに言い訳もできずに僕はルシアと過ごす。
「ねえ、ライアン。卒業パーティー楽しみだわ。ドレスは貴方の瞳の色に合わせて青色を選んだのよ」
「ルシア、最後の卒業パーティーだ。楽しもう、好きだよ」
僕は心にもない事をルシアに言って愛を囁く。
放課後ミシェルが廊下を歩いて生徒会室へ行くのが見えた。
もう新しい代に代わっていたが、前生徒会のメンバーは今も仲が良くて生徒会室に集まっていた。
今日はまだ誰もいなかった。
ミシェルは生徒会室で一人泣いていた。
僕はミシェルを抱きしめたかった。
だけどルシアといる僕にその資格はない。
そして殿下が生徒会室に来た。
「ミシェル、また泣いているのかい?あの噂を聞いてしまったんだね」
「殿下、わたしが彼に何をしたと言うのでしょうか?彼はわたしを見ていつも不機嫌になって話すらしないで去っていきます。
いつもルシア様と居て、彼女が好きなら彼の方から婚約を解消してくれたらいいのにそれはしてくれません。
わたしを笑いものにして彼は満足なんでしょうか……」
殿下は泣いているミシェルをそっと抱きしめて頭を撫でていた。
僕は二人の前に出て、「違う!愛しているのはミシェルだけだ」
と叫びたかった。
でもずっとルシアを優先してミシェルには会っていない。
ミシェルに会ってしまうと全て話してしまいたくなる。
言い訳をしたい。でも一時期ルシアに気持ちが傾いたのも確かだった。
そして卒業パーティーでは、ミシェルのそばには殿下達が居た。
元生徒会のみんなも一緒にいたのだが、二人が一緒に居ることが気になって仕方がなかった。
自分はルシアとべったりと引っ付いて踊っているのにヤキモチを妬くなんておかしいのは分かっている。
でも、それでも、どうして殿下といつも居るんだ?と聞きたかった。
僕は君だけを愛しているのに……
「ライアン様、初めまして。わたしまだこの学園のことがよくわからないんです。色々教えて貰えたら嬉しいです」
栗色の長いツヤのある髪、くりくりした可愛らしい瞳はとても魅力的で僕はドキドキした。
可愛く、ふんわりとした彼女が話しかけてくる。
少し惹かれつつも父上に言われた通りに、態と彼女の言葉にのり、学園を案内した。
ミシェルに見られたらどう言い訳しようか悩みながらも、ルシアとの会話は楽しくて演技のはずがいつの間にか彼女と居るのが当たり前になっていた。
遠くでミシェルがこちらを見ているのに気づくが、彼女が寂しそうにしているのを見るとますますヤキモチを妬いてくれているかもと勝手に思い込み、ヤキモチが嬉しくなってルシアといる時間が増えていった。
ミシェルとはクラスが違ったのもあり、僕とミシェルが会える時間は減っていった。
たまに気になってミシェルの姿を探すといつもロバート殿下達といる事が多いのに気がついた。
ミシェルと殿下、他に生徒会メンバー達と楽しそうに話している姿を見ると自分はルシアといるくせに、イライラした。
そんなある日、僕とルシアが放課後二人で並んで帰る姿を、後ろからミシェルが見ていたのに気がついた。
突然走り去るミシェルを見て僕は思わず追いかけたくなった。
「ルシア、ごめんね。僕忘れ物したから先に帰って」
僕はルシアを置いて、ミシェルを追いかけた。
「ミシェル、また逃げてきたのか?」
「…………少しだけここに居てもいいですか?」
ミシェルは生徒会室に逃げ込んで、友人でもあるロバート殿下の仕事を手伝っていた。
もちろん生徒会室には他にも副会長や書紀、会計の子達も居たが、ミシェルは殿下と親しげに笑いながら話していた。
「ねえ、わたしの仕事を当たり前のように取っておかないで!」
ミシェルはみんなに文句を言いながらも手伝っていた。
「ミシェル、一度ライアンと話し合った方がいいと思うよ」
殿下がミシェル言うと、会計の女の子も心配して言った。
「わたしもそう思うわ。ライアンはミシェルの事をあんなに好きだったのよ、何かがあってすれ違っているのだと思うわ」
「ありがとう、でも、わたしの勘違いだと思えないわ。ルシア様とあんなに近い関係に見えるはずがないもの」
「確かに二人は少し近すぎると思う。でも理由があるのかもしれないわ」
「わたし達の婚約は両家の親達の仕事も絡んでいるから簡単には婚約解消は出来ないわ。このまま気持ちが無くなっても結婚するしかないの」
(気持ちが無くなる?僕をもう好きではなくなるのか?)
僕はミシェルの話しを聞いて部屋の外で呆然と立ち尽くしていた。
それからはあんなに惹かれていたルシアに対して何も感じなくなった。
どんなに体を擦り寄ってこられても、さりげなく躱した。
元々彼女とキスすらしていなかった。
親しげにはしていたし彼女の家に遊びにも行ったが、それはあくまで彼女達男爵家を油断させるためだった。
僕がルシアと親しいので、このままミシェルとは婚約解消をするかもしれないと、男爵に匂わせて油断させた。
そしてその間に、父上はいろんな証拠や証言を集めていた。
公爵に対抗できるだけの証拠もあと少し。
「卒業パーティーのエスコートはルシアにしてくれないか」
と父上に言われた。
「嫌です。もう大体証拠も集まったでしょう。僕はミシェルのそばにいたい。最後の学園の日に好きでもないルシアといたくはないです」
「あと少しなんだ。卒業パーティーに一緒に出るとなれば男爵だけではなく公爵も油断する、頼む」
僕はミシェルへドレスを贈る事も出来なかった。
ミシェルに言い訳もできずに僕はルシアと過ごす。
「ねえ、ライアン。卒業パーティー楽しみだわ。ドレスは貴方の瞳の色に合わせて青色を選んだのよ」
「ルシア、最後の卒業パーティーだ。楽しもう、好きだよ」
僕は心にもない事をルシアに言って愛を囁く。
放課後ミシェルが廊下を歩いて生徒会室へ行くのが見えた。
もう新しい代に代わっていたが、前生徒会のメンバーは今も仲が良くて生徒会室に集まっていた。
今日はまだ誰もいなかった。
ミシェルは生徒会室で一人泣いていた。
僕はミシェルを抱きしめたかった。
だけどルシアといる僕にその資格はない。
そして殿下が生徒会室に来た。
「ミシェル、また泣いているのかい?あの噂を聞いてしまったんだね」
「殿下、わたしが彼に何をしたと言うのでしょうか?彼はわたしを見ていつも不機嫌になって話すらしないで去っていきます。
いつもルシア様と居て、彼女が好きなら彼の方から婚約を解消してくれたらいいのにそれはしてくれません。
わたしを笑いものにして彼は満足なんでしょうか……」
殿下は泣いているミシェルをそっと抱きしめて頭を撫でていた。
僕は二人の前に出て、「違う!愛しているのはミシェルだけだ」
と叫びたかった。
でもずっとルシアを優先してミシェルには会っていない。
ミシェルに会ってしまうと全て話してしまいたくなる。
言い訳をしたい。でも一時期ルシアに気持ちが傾いたのも確かだった。
そして卒業パーティーでは、ミシェルのそばには殿下達が居た。
元生徒会のみんなも一緒にいたのだが、二人が一緒に居ることが気になって仕方がなかった。
自分はルシアとべったりと引っ付いて踊っているのにヤキモチを妬くなんておかしいのは分かっている。
でも、それでも、どうして殿下といつも居るんだ?と聞きたかった。
僕は君だけを愛しているのに……
88
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる
吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」
――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。
最初の三年間は幸せだった。
けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり――
気づけば七年の歳月が流れていた。
二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。
未来を選ぶ年齢。
だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。
結婚式を目前にした夜。
失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。
「……リリアナ。迎えに来た」
七年の沈黙を破って現れた騎士。
赦せるのか、それとも拒むのか。
揺れる心が最後に選ぶのは――
かつての誓いか、それとも新しい愛か。
お知らせ
※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。
直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる