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あなたを愛していました
あなたを愛していました。 中編②
三人の笑い声が聞こえる。
わたしは誰もいない夫婦の寝室でずっと横たわる。
動くこともできない。
『幸せになりたい』
そう思ったことは悪いことだったのでしょうか?
バイズが亡くなったと聞いた時、後を追えば良かった。ううん、でも、彼は他の女性を……サリーを愛した。
タイランを愛するようになって……それは良くないことだったのかしら?
もう聴きたくない、もうあの声を……あの幸せそうな声を聞きたくない……タイランに「わたしを愛してる?」返事なんて訊きたくない。
どうかこのまま死なせて………
ーーーーー
拓也はそろそろ帰ったかな?
うとうととまた眠ってしまっていたみたい。
時計を見ると30分くらい寝てた。
喉も渇いたし、アイスのゴミも捨てに下のリビングに行かないといけない。
そっとドアを開けるとプリントはそのまま、お母さんに誤魔化すために持っていくかと思ったけど……諦めたのかな。
階段を降りようとした時背後からいきなり拓也に声をかけられた。
「世莉亜!!」
「えっ?」
驚いたわたしは階段から落ちてしまった。
拓也は隣のお姉ちゃんの部屋にいたようだ。
お姉ちゃん……今日は居なかったよね?
…………………そんなことを冷静に考えながら意識を手放した。
ーーーーー
いったぁ……
………うん?痛くない⁈なんで?
あっ、また夢を見てるんだ………気絶したのかな?
「セシリア、お願いだ……死なないでくれ」
セシリアの手を握りしめるタイラン。
そんな二人をいつものように見ているはずなのに……わたしは……えっ?ええええー!!
タイランが話しかけてるのは……わたし……⁈
わたし、今、死にかけてる?いや、階段から落ちて多分気を失って………またいつもの夢を見ているんだよね?
なのに、タイランはわたしに向かって話しかけてる……わたし……のことセシリアって呼んだ?
思わず閉じた目をチラッとだけ開けてみた。
「セシリア……!」
やばっ、目が合った。もう一度瞳を閉じて寝たフリ。
なに、生タイラン、カッコ良すぎ!夢の中以上に顔面偏差値高いじゃん!
って言うか、わたし、夢の中に入り込んじゃったの?わたし…多分今セシリアだよね?
だってこの体の人の記憶がわたしにもあるんだもの、セシリアの…………。
わたしが何度となくみた夢と同じ記憶がここに………そしてもう死んでしまいたいた泣き続け、心が壊れてしまったセシリアの気持ちまで、手に取るようにわかる。
ーー悲しかったんだ……辛かったんだよね?愛する人に裏切られた。そのうえ、愛していた人からも裏切られた。
目の前で幸せごっこするコイツらなんか捨てちゃえばいいのに、セシリアは自分を捨てようとしたんだ。
だってこの体とても細い。それに怠くてキツい。本当に死にそうなくらい体が弱ってるじゃん。
ーーえっ?わたし今死にかけてる?
思わず閉じてた目を見開いた。
「セシリア!大丈夫か?」
ーーはあーーー、もうっ!コイツ………
「うるさい!!静かにして!セシリア、セシリアって名前をあんたになんか呼ばれたくない!」
大きな声がつい出てしまった。
浮気男のくせになに心配したフリなんかしてるの?意味わかんない!
「セシリア……」
驚き真っ青な顔をするタイラン。
ーーまだ呼ぶのか、コイツ。
「わたし……あなたのためになんか死にたくない。この屋敷を出て行きます、ミラとマイケルを呼んでください」
冷たい声でそう言うと、わたしは重たい体を動かした。フラフラする、まともに力が入らない。
「セシリア……危ない」
タイランがわたしを支えようとする。
「触らないで、気持ち悪い。サリー様を触ったその手でわたしを触らないで、あなたなんか大っ嫌い!」
パシンと彼の手を振り払った。
わたし、今、セシリアの想いと自分の意思が混ざってる。この世界の人じゃないのに、この世界の人のように記憶のおかげで振る舞えていた。
「セシリア様!」
結婚の時について来てくれたメイドのミラと執事のマイケルがわたしの体を支えた。
部屋の近くに待機していたようだ。わたしの言葉を耳にして部屋の中は入って来てくれた。
「わたしを……セルジオのところへ連れて行って欲しいの」
セルジオはセシリアのもう一人の幼馴染。本来なら実家に帰るところだが、セシリアの父親は厳格な人、夫の浮気など当たり前だ、我慢できないお前が悪いと、セシリアを叱るだろう。
今頼れるのはセルジオくらいだ。記憶の中のセシリアのおかげでそう判断できた。
母方の従兄弟で幼い頃からよく遊んだセルジオ。セルジオはまだ独身で婚約者はいない。
それにセルジオの屋敷ならお祖母様も住んでいる。醜聞になることもなく変な噂で彼に迷惑はかけなくて済む。
まあ、セシリアが頼ることには迷惑をかけてしまうのだけど。
ミラはすぐにセシリアを着替えさせてくれた。
ーー体が怠くてまともに着替えもできないわ。歩けるかしら?
なんて心配はいらなかった。マイケルがお姫様抱っこをして馬車に乗せてくれた。
『お姫様抱っこ』
きゃーっ!こんなの瑠美に話したら、興奮しまくる!
セシリアのいるこの世界、イケメン多すぎ!マイケルは30代で大人の色気がすごい!
抱っこされてる間、恥ずかしいし、照れ臭いし、ドキドキするし、体調悪いせいなのか、ただ緊張してしまったのかよく分からないドキドキだった。
あ、ちなみにタイランは「…………」無言だった。
多分、セシリアが死にそうなのに、こんなにはっきりと自分の意思を言って、タイランを嫌い、出て行こうとするのをどうすることも出来なくて固まっていた。
ザマアミロ!!
わたしこの少しの間に『セシリア』が馴染んでしまった。
馬車の中ではミラがわたしを横になれるようにクッションや毛布を敷き詰めて楽な体勢に寝かせてくれた。
馬車……世莉亜的には生まれて初めての経験。思ったより乗り心地は悪くない。多分セシリアの体が馬車に慣れているからだろう。
そういえば……階段から落ちた世莉亜の体はどうなってるのかな?
まさか………………死んでこっちの世界に転生した?なんてことはないよね?
ーーーーー
「世莉亜!危ない」
拓也は階段から落ちた世莉亜がぐったりしているのを見て「おばさん!世莉亜が階段から落ちた!」と叫んだ。
「えっ?」
リビングで夕飯の仕込みを終わらせてのんびりテレビを観ていた母親が慌ててやって来た。
意識のない世莉亜に何度も呼びかける。
「きゅ、救急車………で、電話……どうしよう……世莉亜……」
「おばさん、もう救急車は呼びました、動かさないで待ちましょう」
「そうね……早く、救急車、来てちょうだい」
祈るしかなかった。
ぐったりして意識がない。血は流れていないのに……
世莉亜は何故か意識を取り戻さなかった。
階段から落ちて全身打撲で集中治療室に運ばれた。
拓也は自分が声をかけてしまったことが原因だと泣いて謝った。
周りは拓也を責めることはなかった。声をかけただけなので仕方がないと。
姉の砂莉亜は、「世莉亜が鈍臭いのよ」と心配もせず言い捨てた。
「妹が死にそうなのにあんたはなんでそんなことを言うの?」
母親は妹への言葉に驚き叱った。
「わたし、世莉亜のことウザかったし、別にいなくなってもなんとも思わないわ」
「実の妹になんてことを!」
「お母さんはいつも世莉亜、世莉亜!わたしだってお母さんの娘なのに!素直で明るい世莉亜のことばかり可愛いがって!」
「何を馬鹿なことを言ってるの?二人とも大切な娘よ?それに今こんな状態の世莉亜を心配して何が悪いの?」
「いつもわたしにはお姉ちゃんなんだから我慢しなさいって言って、我儘なんて聞いてくれなかったじゃない。世莉亜の我儘はいつでも笑いながら聞いてたのに!だから世莉亜なんか大っ嫌いだったの。拓也を盗ってザマアミロって思ったわ」
「何を言ってるの?」
母親は娘の言葉を信じられない気持ちで聞いていた。
「拓也と世莉亜が付き合い出したの知ったから、拓也とセックスしているところを世莉亜に見せてやったの。そしたら世莉亜、それからわたしの顔を見ないように避けるようになったわ。あの子の傷ついた顔を見た時スカッとしたの。それからはあの子に対して優位に立ててすっごい気分がいいの。意地悪できなくなったのは残念だけど、うざい妹がいなくなるんだから気分がいいわ」
バシッ!
母親は砂莉亜の頬を叩いた。
父親は「やめなさい」と母親を止めた。
「砂莉亜、お前はもうお見舞いに来なくていい。自分の家に帰りなさい、落ち着いたら話し合おう」
父親は冷静な態度で娘を見下ろした。
ーーこの子がこんな風に思っていたとは。
自分たちの子育てが間違えていたのだと後悔するしかなかった。
母親は世莉亜のそばで泣き崩れた。
ーーーーー
セシリアはセルジオの屋敷で療養しながら過ごしてひと月が経った。
「セシリアもやっと歩けるようになったわね」
お祖母様が髪の毛にくしをいれてくれた。
お祖母様の柔らかな手が髪の毛に触れる。そして優しく頭を撫でてくださった。
屋敷の庭園にある温室の中のテーブルに座り、お祖母様と二人で過ごしていた。
「セシリアの髪の毛はミスティナ(わたしの母)と同じね」
わたしの髪を触るのが大好きなお祖母様は幼い頃からわたしの髪を櫛で梳かすのが大好き。
「セシリア……あなたがタイランと離縁したいならわたしがあなたの後見人になるわ。あなたの父親は離縁したらあなたを受け入れないと思うの、すぐにまた新しい嫁ぎ先を見つけてくるわ。あの人は子供を道具だと思っているだろうから」
ーーやっぱり……絶対そんなのやだ!わたし、この世界では結婚してるけど、世莉亜としてはまだ高校生なんだよ!結婚なんて考えられないよ!処女なのに!あり得ない!
「お祖母様……お願いします……わたしお父様のところへは帰りたくありません」
お母様はもう亡くなっている。守ってくれる人はあの実家には誰もいない。年の離れた兄はまだお父様には頭があがらない。
お祖母様はお父様よりも爵位が上。さすがに文句は言えないみたい。
セルジオも「お前の好きに過ごせ」と言ってくれている。
そんな時……タイランがやって来た。
何度目かの訪問……そして全て門前払いをされているらしい……わたしは知らなかった。
◆ ◆ ◆
3話で終わる予定が無理でした。
次で必ず。ごめんなさい
わたしは誰もいない夫婦の寝室でずっと横たわる。
動くこともできない。
『幸せになりたい』
そう思ったことは悪いことだったのでしょうか?
バイズが亡くなったと聞いた時、後を追えば良かった。ううん、でも、彼は他の女性を……サリーを愛した。
タイランを愛するようになって……それは良くないことだったのかしら?
もう聴きたくない、もうあの声を……あの幸せそうな声を聞きたくない……タイランに「わたしを愛してる?」返事なんて訊きたくない。
どうかこのまま死なせて………
ーーーーー
拓也はそろそろ帰ったかな?
うとうととまた眠ってしまっていたみたい。
時計を見ると30分くらい寝てた。
喉も渇いたし、アイスのゴミも捨てに下のリビングに行かないといけない。
そっとドアを開けるとプリントはそのまま、お母さんに誤魔化すために持っていくかと思ったけど……諦めたのかな。
階段を降りようとした時背後からいきなり拓也に声をかけられた。
「世莉亜!!」
「えっ?」
驚いたわたしは階段から落ちてしまった。
拓也は隣のお姉ちゃんの部屋にいたようだ。
お姉ちゃん……今日は居なかったよね?
…………………そんなことを冷静に考えながら意識を手放した。
ーーーーー
いったぁ……
………うん?痛くない⁈なんで?
あっ、また夢を見てるんだ………気絶したのかな?
「セシリア、お願いだ……死なないでくれ」
セシリアの手を握りしめるタイラン。
そんな二人をいつものように見ているはずなのに……わたしは……えっ?ええええー!!
タイランが話しかけてるのは……わたし……⁈
わたし、今、死にかけてる?いや、階段から落ちて多分気を失って………またいつもの夢を見ているんだよね?
なのに、タイランはわたしに向かって話しかけてる……わたし……のことセシリアって呼んだ?
思わず閉じた目をチラッとだけ開けてみた。
「セシリア……!」
やばっ、目が合った。もう一度瞳を閉じて寝たフリ。
なに、生タイラン、カッコ良すぎ!夢の中以上に顔面偏差値高いじゃん!
って言うか、わたし、夢の中に入り込んじゃったの?わたし…多分今セシリアだよね?
だってこの体の人の記憶がわたしにもあるんだもの、セシリアの…………。
わたしが何度となくみた夢と同じ記憶がここに………そしてもう死んでしまいたいた泣き続け、心が壊れてしまったセシリアの気持ちまで、手に取るようにわかる。
ーー悲しかったんだ……辛かったんだよね?愛する人に裏切られた。そのうえ、愛していた人からも裏切られた。
目の前で幸せごっこするコイツらなんか捨てちゃえばいいのに、セシリアは自分を捨てようとしたんだ。
だってこの体とても細い。それに怠くてキツい。本当に死にそうなくらい体が弱ってるじゃん。
ーーえっ?わたし今死にかけてる?
思わず閉じてた目を見開いた。
「セシリア!大丈夫か?」
ーーはあーーー、もうっ!コイツ………
「うるさい!!静かにして!セシリア、セシリアって名前をあんたになんか呼ばれたくない!」
大きな声がつい出てしまった。
浮気男のくせになに心配したフリなんかしてるの?意味わかんない!
「セシリア……」
驚き真っ青な顔をするタイラン。
ーーまだ呼ぶのか、コイツ。
「わたし……あなたのためになんか死にたくない。この屋敷を出て行きます、ミラとマイケルを呼んでください」
冷たい声でそう言うと、わたしは重たい体を動かした。フラフラする、まともに力が入らない。
「セシリア……危ない」
タイランがわたしを支えようとする。
「触らないで、気持ち悪い。サリー様を触ったその手でわたしを触らないで、あなたなんか大っ嫌い!」
パシンと彼の手を振り払った。
わたし、今、セシリアの想いと自分の意思が混ざってる。この世界の人じゃないのに、この世界の人のように記憶のおかげで振る舞えていた。
「セシリア様!」
結婚の時について来てくれたメイドのミラと執事のマイケルがわたしの体を支えた。
部屋の近くに待機していたようだ。わたしの言葉を耳にして部屋の中は入って来てくれた。
「わたしを……セルジオのところへ連れて行って欲しいの」
セルジオはセシリアのもう一人の幼馴染。本来なら実家に帰るところだが、セシリアの父親は厳格な人、夫の浮気など当たり前だ、我慢できないお前が悪いと、セシリアを叱るだろう。
今頼れるのはセルジオくらいだ。記憶の中のセシリアのおかげでそう判断できた。
母方の従兄弟で幼い頃からよく遊んだセルジオ。セルジオはまだ独身で婚約者はいない。
それにセルジオの屋敷ならお祖母様も住んでいる。醜聞になることもなく変な噂で彼に迷惑はかけなくて済む。
まあ、セシリアが頼ることには迷惑をかけてしまうのだけど。
ミラはすぐにセシリアを着替えさせてくれた。
ーー体が怠くてまともに着替えもできないわ。歩けるかしら?
なんて心配はいらなかった。マイケルがお姫様抱っこをして馬車に乗せてくれた。
『お姫様抱っこ』
きゃーっ!こんなの瑠美に話したら、興奮しまくる!
セシリアのいるこの世界、イケメン多すぎ!マイケルは30代で大人の色気がすごい!
抱っこされてる間、恥ずかしいし、照れ臭いし、ドキドキするし、体調悪いせいなのか、ただ緊張してしまったのかよく分からないドキドキだった。
あ、ちなみにタイランは「…………」無言だった。
多分、セシリアが死にそうなのに、こんなにはっきりと自分の意思を言って、タイランを嫌い、出て行こうとするのをどうすることも出来なくて固まっていた。
ザマアミロ!!
わたしこの少しの間に『セシリア』が馴染んでしまった。
馬車の中ではミラがわたしを横になれるようにクッションや毛布を敷き詰めて楽な体勢に寝かせてくれた。
馬車……世莉亜的には生まれて初めての経験。思ったより乗り心地は悪くない。多分セシリアの体が馬車に慣れているからだろう。
そういえば……階段から落ちた世莉亜の体はどうなってるのかな?
まさか………………死んでこっちの世界に転生した?なんてことはないよね?
ーーーーー
「世莉亜!危ない」
拓也は階段から落ちた世莉亜がぐったりしているのを見て「おばさん!世莉亜が階段から落ちた!」と叫んだ。
「えっ?」
リビングで夕飯の仕込みを終わらせてのんびりテレビを観ていた母親が慌ててやって来た。
意識のない世莉亜に何度も呼びかける。
「きゅ、救急車………で、電話……どうしよう……世莉亜……」
「おばさん、もう救急車は呼びました、動かさないで待ちましょう」
「そうね……早く、救急車、来てちょうだい」
祈るしかなかった。
ぐったりして意識がない。血は流れていないのに……
世莉亜は何故か意識を取り戻さなかった。
階段から落ちて全身打撲で集中治療室に運ばれた。
拓也は自分が声をかけてしまったことが原因だと泣いて謝った。
周りは拓也を責めることはなかった。声をかけただけなので仕方がないと。
姉の砂莉亜は、「世莉亜が鈍臭いのよ」と心配もせず言い捨てた。
「妹が死にそうなのにあんたはなんでそんなことを言うの?」
母親は妹への言葉に驚き叱った。
「わたし、世莉亜のことウザかったし、別にいなくなってもなんとも思わないわ」
「実の妹になんてことを!」
「お母さんはいつも世莉亜、世莉亜!わたしだってお母さんの娘なのに!素直で明るい世莉亜のことばかり可愛いがって!」
「何を馬鹿なことを言ってるの?二人とも大切な娘よ?それに今こんな状態の世莉亜を心配して何が悪いの?」
「いつもわたしにはお姉ちゃんなんだから我慢しなさいって言って、我儘なんて聞いてくれなかったじゃない。世莉亜の我儘はいつでも笑いながら聞いてたのに!だから世莉亜なんか大っ嫌いだったの。拓也を盗ってザマアミロって思ったわ」
「何を言ってるの?」
母親は娘の言葉を信じられない気持ちで聞いていた。
「拓也と世莉亜が付き合い出したの知ったから、拓也とセックスしているところを世莉亜に見せてやったの。そしたら世莉亜、それからわたしの顔を見ないように避けるようになったわ。あの子の傷ついた顔を見た時スカッとしたの。それからはあの子に対して優位に立ててすっごい気分がいいの。意地悪できなくなったのは残念だけど、うざい妹がいなくなるんだから気分がいいわ」
バシッ!
母親は砂莉亜の頬を叩いた。
父親は「やめなさい」と母親を止めた。
「砂莉亜、お前はもうお見舞いに来なくていい。自分の家に帰りなさい、落ち着いたら話し合おう」
父親は冷静な態度で娘を見下ろした。
ーーこの子がこんな風に思っていたとは。
自分たちの子育てが間違えていたのだと後悔するしかなかった。
母親は世莉亜のそばで泣き崩れた。
ーーーーー
セシリアはセルジオの屋敷で療養しながら過ごしてひと月が経った。
「セシリアもやっと歩けるようになったわね」
お祖母様が髪の毛にくしをいれてくれた。
お祖母様の柔らかな手が髪の毛に触れる。そして優しく頭を撫でてくださった。
屋敷の庭園にある温室の中のテーブルに座り、お祖母様と二人で過ごしていた。
「セシリアの髪の毛はミスティナ(わたしの母)と同じね」
わたしの髪を触るのが大好きなお祖母様は幼い頃からわたしの髪を櫛で梳かすのが大好き。
「セシリア……あなたがタイランと離縁したいならわたしがあなたの後見人になるわ。あなたの父親は離縁したらあなたを受け入れないと思うの、すぐにまた新しい嫁ぎ先を見つけてくるわ。あの人は子供を道具だと思っているだろうから」
ーーやっぱり……絶対そんなのやだ!わたし、この世界では結婚してるけど、世莉亜としてはまだ高校生なんだよ!結婚なんて考えられないよ!処女なのに!あり得ない!
「お祖母様……お願いします……わたしお父様のところへは帰りたくありません」
お母様はもう亡くなっている。守ってくれる人はあの実家には誰もいない。年の離れた兄はまだお父様には頭があがらない。
お祖母様はお父様よりも爵位が上。さすがに文句は言えないみたい。
セルジオも「お前の好きに過ごせ」と言ってくれている。
そんな時……タイランがやって来た。
何度目かの訪問……そして全て門前払いをされているらしい……わたしは知らなかった。
◆ ◆ ◆
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