短編。

たろ

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さよならのかわりに ブロアとセフィルの恋ーーあなたを愛していますーー

お父様とセフィルとリリアンナ様と。

「何故ブロアがモリス国へ行っていないんだ?」

「……そ、それは……」

 執事には確かにブロアを次の日にはこの屋敷から連れ出すように言った。しかし、それは妻の実家があるモリス国へ送るようにと伝えていたはずだ。

 ひと月も経つのにまだ着いていないと妻の実家から連絡が入っていたのにその手紙すらわたしには届いていなかった。

 あまりにも心配した妻の実家から使いの者がやってきて全てが明るみに出た。

 執事は額の汗を必死で拭きながらなんとか言い訳をしようとしていた。

「ずっとおかしいと思ってはいたんだ……しかしまさか使用人達がブロアに対して嫌がらせをしたり仕事を放棄しているなど思ってはいなかった……」

 わたしが屋敷にいる時は使用人達はよく働いてくれた。ただわたしの秘書からの報告でブロアに対してはあまり良い感情を持っていないと聞いていた。でもそれが態度に出ているとは思っていなかった。

 わたしは殿下がこれ以上ブロアに付き纏ったり無理やり王城に軟禁しないように妻の実家に避難させるつもりだった。

 それがいつの間にか話が変わり追い出すことになっていた。

「ブロアはどこへ行ったんだ?サイロは?ブロアの護衛騎士ならなにか知ってるだろう?」

「そ、それが……ブロア様がいなくなって……サイロとウエラはここをやめて姿を消してしまったんです」

「二人はブロアを探したんだろう」

「…………そうだと思います」

「ブロアがどこに行ったか探し出すんだ」

 公爵家の騎士団にブロアを探し出すように言った。使用人達は一人ずつ取り調べ、ブロアに対してあまりにも酷い態度をとった者は警ら隊に突き出すことにした。

 特にブロアのものを盗んだ者達は許してはおけない。それはこの屋敷を任せていた執事やメイド長達も盗みを働いていて見逃すことはできない。

 仕事ばかりして何も見えていなかったわたしはこの屋敷でのブロアの現状を知って愕然とするしかなかった。




 ーーーー

 何度手紙を書いても返事が来ない。

 遠征からひと月。

 あと少しで帰ることができる。帰ったらとにかく急いでブロアに会いに行こう。

 リリアンナからはしつこく手紙が送られて来た。幼馴染で無下には出来ないが、愛してもいない女性にあまり優しくしすぎるのは誤解を招くだけ。俺はそんな当たり前のことに気がつかず、リリアンナを妹のように可愛がってブロアを傷つけていた。

 こんな俺だから婚約を解消しようと言われてしまった。

 俺はみんなと帰ると時間がかかるため、ひと足先に帰ることにした。

「申し訳ありません、婚約者と全く連絡が取れません。急ぎ会いに行きたいのです」
 上官に素直に頭を下げた。

 婚約解消を告げられ離れて会えない時間が俺にとってはかなり苦痛で、そして、自分のして来たことを反省する時間でもあった。

 話すのが苦手でブロアに対して愛しているのに上手く態度に出せなかった。リリアンナとは幼馴染で気を使うこともなく話せた。それがさらにブロアに誤解を生むことになったのに、気がついたのが今。

 今更ながら反省しかない。ブロアにどれだけ謝ってどれだけ言葉を尽くしてももう遅いのかもしれない。それでも……諦めたくない。

 俺はまだブロアの病気のことも知らず、国から出てしまったことも知らず、急ぎ馬を走らせブロアに会いに向かっていた。







 ーーーー


 酷い!
 セフィルったらいくら手紙を送ってもまともに返事が来なくなった。

 なにかあったんじゃないかしら?そう思って心配でたまらないのに。

 やっと邪魔なブロア様がこの国から出て行った。
 ロザンナ妃とは幼い頃から親しくさせてもらっている。
 ブロア様が王太子殿下に婚約破棄されたことも知っていた。そしてわたしの大切なセフィルを奪った。
 だからロザンナ妃に囁いたのだ。
 ブロア様に執務を押し付けたらいいと。ロザンナ妃は可愛い息子と愛する夫のためだけに生きて、ブロア様に面倒な仕事を押し付ければいいのだと。

『ロザンナ様……そんなにお疲れで……体調は大丈夫ですかぁ?体のことが心配なんですぅ。そう言えば……ブロア様………セフィルと婚約解消するらしいんです……もう誰も相手にしなくなるでしょうね?それならいっそ王城に呼んで彼女に仕事を差し上げたらいいのではぁ?そしたらロザンナ様も楽になるし、王太子殿下もロザンナ様との時間をゆっくりと取ることができますよ?』

 心配でたまらないの。と瞳をうるうるさせてロザンナ妃に言えば、少し考え込んでいたロザンナ妃。

 その後、ブロア様の屋敷に殿下が来たことはブロア様の使用人に聞いた。公爵家の使用人はブロア様を嫌っているし見下している。

 お金を握らせればいくらでも情報を渡してくれるし、お願いすれば楽しんでブロア様を冷遇してくれる。

 いい気味よ。わたしの大切なセフィルを奪ったんだから。

 執事に今回は多めにお金を渡したら、セフィルからの手紙も始末してくれた。ブロア様に届くことはない。

 ふふ、わたしの思い通りにならないことなんて何もないの。

 まさかブロア様が余命一年と宣告されているなんて……執事に聞いた時は……思わず笑ってしまった。

 執事はブロア様を追い出したらしい。父親である公爵様は使用人がどんなにブロア様に酷い態度をとっても気がつかないらしい。ブロア様も泣きつくこともないと聞いた。

 悪女と呼ばれるブロア様らしい。

 このままのたれ死ねばいいのよ。



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