短編。

たろ

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さよならのかわりに ブロアとセフィルの恋ーーあなたを愛していますーー

ブロア……あなたを愛しています

 ブロアと初めてちゃんと向き合った。

 今までは好き過ぎて会ってもうまく話せなかった。自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさの中過ごして来た。

 リリアンナには気軽に話せるのに。なんとも思わない相手なら気を遣うこともなく話せるのに……ブロアの前では緊張して話すのが苦手なのにさらに話せなくなる。

 それでも今回は必死だった。

 ただ嘘や誤魔化しはしない。呆れられてもリリアンナのことは正直に答えた。

 それしかブロアに対して向き合えないと思った。カッコつけたいし、ブロアに振り向いて欲しい。

 どんなに惨めでカッコ悪くてもブロアの前ではもう素直に自分の心を打ち明けたい。

 だけどブロアはもう俺のことを見てはくれない。
 呆れられて、帰るように促された。

『リリアンナ様と幸せになって』その言葉が俺の胸に突き刺さる。

 リリアンナに恋愛感情なんてない。断れなかった俺がいけないのはわかってるが、幼馴染以上の感情なんて持てない。

 両親はブロアとの婚約解消を喜んでいた。リリアンナをとても可愛がっている母上にとってはブロアとの婚約をなんとか解消したくて画策していた。

 あのカフェの時も大雨の中仕方なくリリアンナを雨宿りのために連れて行っただけ。
 でも呼び出されそんな姿を見せられればブロアからすれば傷つくのは当たり前。

 俺だって……サイロがいつもブロアのそばにいるのが気に食わない。いつも頼るのはサイロ、俺に頼ろうとはしない。
 だけどそれは俺に原因がある。
 頼られるだけの信頼を彼女から得ることができていない。俺は自分の不甲斐なさに悔しさの中宿へと戻るしかなかった。

 一人宿を出て、食事をしていると近くにいる人の話しの内容にに思わず聞き入ってしまった。

「………ブロア様の……宰相が……なんで……体調が悪い時に……」

 ところどころ聞こえないがどう聞いてもブロアと公爵のことのようだった。公爵がこの国に来ている?

 よく見ると高級な生地で仕立てられた上下のスーツを着た上品な男性と……あれはブロアの主治医?

 思わず席を立った。

「ブロアの主治医の先生ですよね?」

「あなたは………セフィル殿?なぜこの国に?」

「ブロアを探して……」

「今更ですか?ブロア様がいなくなってもう三ヶ月……なぜ今頃会いにくるのですか?」

「言い訳でしかありませんが……遠征に行って帰って来たらブロアが追放されていました。何度も手紙を送ったのですが返事がなく……おかしいと思い急ぎ会いに行ったら……もうブロアはいませんでした。リリアンナの怪しい行動に……疑いを持ち、探っていたら、この国に来ていることがわかり後を追ってこの国へと来ました」

「あなたは……本当にタイミングの悪い人ですね……もうお帰りなさい」

「なぜ?関係のないあなたから言われないといけないのですか?なぜあなたがこの国にいるのですか?いくら主治医とはいえ……追放されたブロアのそばにいるのはおかしいですよね?」

「なぜ?ブロア様の様子を見て何も感じませんでしたか?」

 主治医はそう言うと連れの男性に「行きましょう」と言って店を出て行った。

 フロアを見て?

 とても痩せていた。青白くて……

 …………何か病気?さっき確かに……キツそうにしていた。体調が悪い……?

 なんで気が付かなかったんだ。俺はまた自分のことだけ……ブロアのことを見ていなかった。

 金を払いもう一度ブロアが住んでいる屋敷へ向かった。




「もうブロア様はお会いしないと思います」

 顔見知りのメイド……ウエラがいた。

 ウエラもサイロもブロアが追放されてもそばにいた。

「すまない、もう一度どうしても会いたいんだ」

「無理です」
 ウエラは動じることなくキッパリと断る。

 くそっ。

「やっぱり体調が悪いのか?寝込んでいるんじゃないのか?」

「………ブロア様はあなたにお会いしたせいでお疲れになっております」

「俺の?………そうか……」

 俺は何も言えなくなった。ブロアが嫌な思いをしたのはわかっている。もう俺のことを忘れたいのだろう。元婚約者になんか……いや、まだ婚約解消の書類は提出されていない。だからあの書類を渡そうとしたんだ……

「明日、また会いにくる」

「ブロア様はもうお会いしないと思います」

「それでも……俺はまだ彼女の婚約者なんだ」



 ーーどうしたらいい?素直に解消すればブロアはもう嫌な思いをしなくて済む……

 わかっているのに……






 ーーーーーー

「セフィル様が先ほどまた来られましたが追い返しました」

 ウエラが思い出してイラッとしたのか眉を顰めて「しつこいですよね?」とぶつぶつ言っていた。

「セフィルは……まだ……納得できないのね」

 ーーリリアンナ様のことが誤解だとしても……もう遅い……だって半年後にはもうこの世にはいないのに、今更彼を受け入れることはできない。

 彼には他の人と幸せになって欲しい。もうわたくしのことは忘れて。
 彼を愛している気持ちは今も変わらない、だからこそわたくしから解放してあげたいの。

「少し気分がいいからベランダに出たいわ」

「少しだけですよ?」

 ウエラは最近わたくしより年下なのに、年上になったかのように口うるさくなった。

「ふふっ、ウエラ、大好きよ」

「もう!どうしたんですか?ブロア様のことわたしも大好きです!だからお願いですから……無理はしないで1日でも元気でいてください」

 ウエラはわたしから視線を逸らした。

 声が震えていた。

 わたくしの前では常に明るく気丈に振る舞うウエラは、絶対わたくしの前で悲しそうな顔はしないのに……

 ごめんね、ウエラ。あなたを悲しませて……でも、あと少し……わたくしのそばにいて欲しい。

 ウエラの涙声に気が付かないフリをしてベランダに出た。

「風が……心地いいわ……」

 ーーどうかこのまま穏やかに死なせて欲しい。



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