短編。

たろ

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さよならのかわりに ブロアとセフィルの恋ーーあなたを愛していますーー

生きて。

 二人は急いでブロアの部屋に訪れた。
 拒絶されて会えなくなってまだ十日ほど。

 なのにベッドに横たわるブロアはさらに痩せ細っていつ息をしなくなってしまうのだろうと思えるほど衰弱していた。

「どうしてこんなに……」

「ブロア………」

 二人とも絶句するしかなかった。

 想いをブロアに告げることが遅過ぎた。

 彼女に『今更』だと言われた。

 それでも………諦めたくなかった。

 ブロアの命だけでも………助かるなら……娘に二度と会えなくてもいい。

 助かるなら……ブロアが望むなら婚約は解消する。

 そう思って山に薬草を探して回った。
 それしか助かる道はないから。

 ミリナが小さな体で真っ青な顔をして震えていた。エイリヒは屋敷での使用人達の話を聞いて怒りに震えていた。

 だが、彼らにきちんと伝えていなかったのも事実。特にブロアの国は、自国の民からは嫌われていた。

 弱小の自国を貪る国、そう思われ嫌悪されていた。そんなブロアの国を変えようとしたのがブロアだった。だけど平民の使用人達にその話を伝えるのは政治のことや醜聞も絡み、難し過ぎて話さずにいた。

 使用人は厚かましく過ごすブロアに冷遇はしないが好意的に世話をすることはなかった。

 ただそれだけ、酷いことをしたわけではない。

 エイリヒは公爵と婚約者であるセフィルに頭を下げた。

「我が家の使用人達の仕出かしたことです。ブロア様は濡れた服のまま過ごされ元々弱っていた体のため高熱を出されました……使用人達はブロア様の世話を頼まれていたにも関わらず全く部屋に寄り付きませんでした……申し訳ありません」

「ふざけるな!申し訳ありませんで済むわけがないだろう?」

 公爵は手を握りしめ体を震わせて耐えていた。殴りつけたかった。しかし今までの自分もブロアに対して変わらない仕打ちをしていた。

 何が違うというのか……そう思うと自分に対しても怒りが湧いてきた。

 セフィルはブロアに触りたかったがその資格すらないと少し離れたところでブロアの様子を見守るしかなかった。

「ブロアは助かるのですか?」

 誰にともなくそう聞いた。

 サイロが悔しそうに言った。

「解熱剤は飲ませました……ただ……最近かなり衰弱が激しく……今日見つかった薬草だけが最後の頼りです……先生が今必死で薬を作ってくれています……でも薬草がまだまだ不足しているようです」

 さっきサイロは先生の部屋を訪ねた。

「くそっ、薬草が足りない……」
 机を叩いて悔しそうに言っていた。

「さっき薬草を追加で渡したんだがまだ足りないのか?」

「調合が上手くいかなくて何度も作り直さなければいけないらしい」
 サイロが悔しそうに言った。

 それだけ新しい薬を作り出すのは難しい。

「明日の朝では間に合わない……今からまた山に入るつもりです」

「こんな暗くなったら危険だ」

「俺の命なんかどうでもいいんです!ブロア様のためなら……」

「わかった、俺も行く。一人では危険だが二人ならなんとかなる。この1週間山の中に入ったからある程度道もわかる、行こう」

 セフィルはサイロともう一度山に入ることにした。
 周りには危ないからと止められた。

「ブロアの命を何がなんでも助けたい」
 二人は灯石をいくつか体につけて山に入って行った。

 この灯石は暗闇の中で光るので夜出歩く時にこの国では持って歩く人が多い。

 エイリヒ商会にある灯石を服にいくつも縫い付けて山に入ることにした。

 二人で入る予定だったがみんなで入ればなんとかなるだろうまたみんなが山に入ることにした。
 女性達は危険だから流石に許可されなかった。

「歩いたら間隔をあけて灯石を落として行ってください、そうすれば迷子にならずに無事に山を降りれます」

 エイリヒはセフィル達にそう言うと数人の山に詳しい男を案内につけた。

「申し訳ないのですがわたしは体力には全く自信がないので足手纏いにしかなりません。だからここで待たせてもらいます」
 エイリヒは何度も頭を下げて詫びた。

「灯石をこんなにいただけるだけで十分です、おかげで安心して山に入れます。ブロアのこと頼みます」








「ブロア様……お願い、絶対生きたいと……もう一度みんなで海を見て笑い合いたいと…強く…願ってください」

 ウエラは何度もブロアの手を握りしめた。

 公爵は少し離れた場所で見守った。もし目覚めた時自分の顔を見たら不快になるかもしれない。そう思うとブロアのそばには近づくことができなかった。

 嫌っていると思われていた。嫌ってなんかいない、愛していた、でもそれをブロアに素直に表現することはできなかった。

 今は完全に嫌われている。だからもう会わなくても……そう思っていた。だけど、死にかけている娘のそばから離れることもできずにいた。

 叶うなら代わりに自分が死ねたら……そう思わずにいられなかった。


 翌朝………先生が目の下にクマを作りながら部屋から出てきた。

「たぶん……完成しました……ただ……薬草が……これだけしか作れなかったので、毎日飲むには足りませんが……少しでも症状が改善することを期待して飲ませてみましょう」

 ウエラが眠るブロアの体を起こして背中にクッションをあてた。

 意識がないブロアの口に少しずつ薬を流し入れた。

「ブロア様……飲んでください」

 遅くまで起きていたミリナはソファでスヤスヤと眠ってしまっていた。

 まだセフィル達は山から帰ってきていない。

 外は朝日で明るくなり始めていた。

 ブロアが薬を飲んでしばらく様子を見ることになった。

 まだ意識はなく呼吸も浅い。顔色も悪いがなんとか高熱から微熱へと下がった。







「ゲホッゲホッ」

 咳き込む声が聞こえた。

 ウエラが「ブロア様?」と声をかけた。

「…………ウエラ?どうしたの?………泣いてるわ」
 小さな声が聞こえた。

「ブロア様!目覚めた瞬間、人の心配なんてしないでください!わたしのことなんてどうでもいいんです!ブロア様がお元気なら……よかったぁ………うっ……もう、心配かけないでください……生きてください……お願いだから死ぬなんて考えないで……もっと一緒にお話ししたり笑ったりしましょう、もう絶対死なせませんからね」

 ウエラがわんわん泣きながらブロアにしがみついた。

「……ウエラ……大好きよ」

「当たり前じゃないですか!わたしだってブロア様が一番好きなんですから!」

そしてミリナもウエラの声にやっと目を覚ました。そしてブロアと目が合うとこちらも大泣きしながらブロアに抱きついた。

「ブロア様ぁ!!」

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