短編。

たろ

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さよならのかわりに ブロアとセフィルの恋ーーあなたを愛していますーー

もう少しだけ。

「ミリナちゃん……?」

 頭が重たい……体もだるいし…

 わたくし……

 みんなの涙にキョトンとしていると
「お嬢、あんた死にかけてたんですよ!」

「サイロ……そんな大きな声出さないで……うるさいわ」

 思わず文句を言い返すと、サイロの隣にセフィルがいるのに気がついた。

 ーーセフィル……?

 ……が、どうしているの?

 もう会いにくることはないと思ったのに……

「ブロア……よかった……」

 ーーよかった?

 フラフラしながら先生がわたくしのそばに寄ってきた。

「ブロア様……薬が効いてきたみたいです……顔色も良くなって……みんなが山に薬草を採りに行ってくれたんです……あなたの命を救いたいと……あなたのことを思って……だからあなたは生きないといけない……辛いことばかりじゃないんです……あなたを思ってくれている人はたくさんいます。あなたがこれまで頑張ってきたことをきちんと理解してくれている人もたくさんいるんです」

「先生………」

 みんなが……泣いている。

 わたくしのことを想って……

 もう死んでもいいと思っていたのに……全てが今更だと思っていたのに……

「わたくし……生きても……いいの?」

「当たり前ですよ!」

 ウエラが泣き出した。

「お嬢って頭いいくせに馬鹿ですか?」
 いつものサイロの口の悪さが出てる。

「ブロア様……また一緒に海に行きたい……来年は海で泳ぎましょうね?」
 ミリナちゃんがわたしの手を握りしめて泣いていた。

 セフィルは少し離れたところで立ったまま泣いていた。

 そして………かなり離れた場所で俯いていたのは……

「お父様?」

 もうわたくしのことなど放って国に帰ったと思ったのに……何故?

 わたくしの声にお父様が顔を上げた。

 ーー泣いている………あのいつも表情も変えず冷たい人だと思っていたお父様が……


「ブロア………もうお前が生きていてくれたらそれだけでいい……国に帰ってこなくても、セフィルと婚約解消しても、お前の好きにしていい……サイロとウエラはわたしが一生公爵家で雇う……そしてそのままお前のそばで仕えてもらう……二人ともお願いできるか?」

「はい」「わかりました」

 二人がわたくしのそばにこれからも?

 セフィルはお父様の言葉を聞いて……

「俺はブロアに任せる……もうしつこく言わない……でも……それでも……君を愛してる……だから生きて欲しい」

 目覚めたばかりで頭の中が混乱して、すぐに返事ができなかった。

 それに気がついた先生が
「ブロア様は少しずつ回復していくとは思う……だがまだ薬は飲み続けなければいけないし、まだまだ体調はすぐれない。だからゆっくり時間をかけてブロア様も気持ちを整理したらいい、ウエラとサイロがそばにいてくれる、そしてわたしもブロア様の主治医として最後までそばにいて完治させるつもりだ。
 これからのことは完治してから考えればいい」

「先生、これからもよろしくお願いしますね」

 ーーなんだかまた疲れたわ……


「少し寝てもいいかしら?」









 わたくしは眠りについた。


 とても幸せな夢を……あれだけ辛かった日々はもうどこにもない。

 セフィルとの幸せな結婚、お父様は孫を可愛がりサイロとウエラは結婚して家庭を持っていた。

 ミリナちゃんももう大人になっていて、もうすぐ商会で働く青年と結婚するらしい。

 リリアンナ様は色々と問題を起こして規律の厳しい修道院で一生を暮らすことになった。

 セフィルの両親はわたくしのことを誤解していたと謝罪してくれた。今も少し距離はあるけどまぁなんとか上手く過ごしている。

 殿下は……夫婦で必死で政務を行なっている。出来なければ廃太子となるしかない。

 誰も助けてはくれないもの。


 夢はいい。好き勝手に考えて好き勝手に見れる。

 わたくしはこのまま夢の中でずっと暮らしていたい。








「ブロア……君は幸せそうに眠り続けているんだね」

 ーーセフィルの優しい声が遠くから聞こえるの。でも夢の中の幸せな日々を失いたくなくて……わたくしは眠り続けるわ。

 これもまた『生きている』と言うことではないかしら?




「ブロア……俺は君をずっと待ってる……いつか眠りから覚めるまで……1年でも10年でも……待ってるから……生き続けて欲しい、君を愛しているんだ」









「セフィル………?」

ーーふふっ、なんだか顔が大人っぽくなったわね?

「おはよう、眠り姫………待ってたよ」

「そうなの?ずっと一緒に暮らしていたじゃない」

ーーえ?何かがおかしいわ?

「君は俺と夢の中で暮らしていたのか?」

「何言ってるの?…………夢?」

「君が眠り続けて……2年。ずっと目覚めるのを待ってた……」

「わたくし………あなたの声がずっと聞こえていたの……いつも『ブロア、愛しているよ』って。なのに夢の中にいるのが幸せで……でもあなたが……泣いてるような気がして……なんとか起きようとしたんだけど……起きられなくて……遅くなってごめんなさい……わたくしもあなたを愛しているわ」

「俺もブロアだけを愛してるよ」




「貴方と海を見たいわ」




         終


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