【完結】裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ

文字の大きさ
5 / 116

4話

「レインはどうしてさっきは来なかったの?」

 アレックス兄様が夕食の時間に尋ねた。

「こいつ、いつもこんな感じだよ。父様達がいる時はいい子のふりして顔を出すけど、俺が一人の時はほとんど食事を一緒にしようとしないんだ」

 ーーその理由の一つはあなたが原因でしょ?

 そう言いたいけど黙ってた。使用人の嫌がらせの理由の一つにキース兄様が私を嫌っているからだと思う。

 そう言えばアレックス兄様がどう思うだろう。

 キース兄様のことや使用人のことも怒るだろう。でもそれ以上に自分がここの屋敷で受け入れられていないと言う事実を知られたくはなかった。

 優しくて大人でいつも私にも気を遣ってくれる人。困っていれば手を差し伸べてくれて勉強もみてくれるし、頑張れば褒めてくださる。

 私にとって唯一私をちゃんとみてくれる人。大好きなアレックス兄様に失望されたくない。

 私は仕方なくキース兄様に視線を向ける。
 別にこの人の顔なんて見たくないんだけど。

「申し訳ありません。こちらにキース兄様と二人の時に食事をと思っても、なぜか私のカトラリーがありませんの」

「………ぐっ……」

 そう、私の先にはいつも何もない。

 使用人がではなく、兄様のせいで。私は態とそんなふうに伝えてみた。

「キース?」

「それはお前が来ないからだろう?」

「申し訳ありません。ではこれからはご一緒に食事をさせていただきたく思いますので用意をお願いしても?」

 そう言ってキース兄様と周りにいる使用人へにこりと微笑んでみた。



「わかった」

 周りの使用人も顔を引き攣らせる者、青い顔をする者、私を睨む者もいた。

「かしこまりました」

 彼らの返事にアレックス兄様が「みんなよろしく頼むよ」と少し怖い顔で周囲を見回した。


 アレックス兄様がいる屋敷の中では、気を張ることはなくのんびりと過ごせた。

 アレックス兄様とお話をしたり勉強を教えてもらったり、買い物やお出かけをしては、ドレスを買って貰い綺麗に着飾って過ごした。

 普段はあまり手入れされることがない髪や肌もアレックス兄様がいる間はメイド達が私のために世話をしてくれる。

 魔法がかかった少しの間だけ私はこの屋敷の娘として大切にされ楽しい時間を過ごせる。優しいアレックス兄様が私を幸せにしてくれる。

 おかげで2階の窓から抜け出して野菜を食べなくても済むし、夜中にこっそり朝の料理の仕込みをしている料理人に何か食べ物を分けてもらわなくても済む。

 ふふ、おかげでこの時期はいい感じで体も健康でいられる。

 キース兄様が横目で睨んでくるけどアレックス兄様がいる間は私を邪険に扱わない。

 だからアレックス兄様がいる間に私はお願いをすることにした。

「兄様、もう少ししたらお父様が領地から帰ってきます。その時に私、お父様にお願いしたいことがあるんです」

「どうしたの?」

 二人で昼食後、庭に出てゆっくりと散歩をしていた。

 美しい花々は毎日見ても見飽きない。特にこの屋敷には何ヶ所もこうした庭園がある。それぞれに違う花が咲きお客様もこの屋敷の庭園を見て回ることをとても楽しみにされているお母様のこだわりの場所だ。

 今は薔薇園で白い薔薇やピンクの薔薇、赤い薔薇などたくさんの品種の薔薇を楽しんでいる。

「私ももう13歳です。そろそろ学園に入学する時期です。出来れば寮に入りたいと思っています」

「寮に?ここからなら十分通える距離だよ?キースも僕もこの屋敷から通ったよ?」

「キース兄様はここから通っています。兄様と二人が通うことになれば時間帯が合わなければ馬車が2台必要になったりと使用人達にも手を煩わせることになります。
 出来ればみんなに迷惑をかけたくありません。それに私、特待生の試験を受けて合格したんです。だから寮に入ってもご迷惑をお掛けしなくて済みます」

 そう貴族なら入学は簡単にできる王立学園。でも私は内緒で特待生になるための試験を受けた。

 平民や生活に困窮している生徒はもちろん自分の実力を試したい貴族の子供が受ける。
 私も実力を試したいとお父様に頼んで受けさせてもらった。

 見事狭き門を合格することができた。

「うん、特待生になったことは父に聞いているよ。よく頑張ったね。でもこの屋敷には何台も馬車はあるし使用人たちの手も十分足りているからレインは心配しなくて大丈夫だよ?」

「…………私が嫌なんです」

「嫌?」

「はい、この学園を卒業する頃には16歳になっています。私はその時出来れば文官として王城で働きたいと思っています」

「卒業してから働く必要はないよ?嫁に行くまでここにいればいいじゃないか?」

「……いえ」
 私は首を横に振る。
 ここで自分の意思をはっきりさせておかなければ。

「私はこの屋敷を出て働きたいと思っています。私自分が誰なのかどうして記憶を失くしたのか知りたいのです」

 そのためにも王城で働き『私』を知っている人がどこかにいないか、そんな情報がどこかにないか探してみたい。

「でもそれは先の話だろう?」

「ええ、でも、一人でなんでもできるようになっておきたいのです」

 ーー本当はこの屋敷でお世話されていないのでおおかたの事は自分でできるのだけど。

「それで僕に父上を説得するのを手伝ってほしいと?」

「駄目ですか?」

 両手をくんで兄様にうるうるした瞳でお願いポーズをした。

 これでも一応屋敷に訪れる大人の人には可愛らしいお嬢さんだと褒め称えられているので自分の容姿の可愛さはわかっている。

 私は兄様にあざとくて可愛いポーズでお願いした。

「はぁ、でも、週末はこの屋敷に帰ってくること、僕が屋敷に帰ってくる時は必ずレインにもいてほしい。たまにしか会えないんだ、可愛い妹にはこの屋敷にいる時くらいはそばにいて欲しい」

「もちろんです!」

 アレックス兄様がいる時ならこの屋敷にいても過ごしやすいもの。


 こうして私はお父様になんとか寮に入る許可をもらうことができた。

感想 209

あなたにおすすめの小説

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

(完)子供も産めない役立たずと言われて・・・・・・

青空一夏
恋愛
グレイス・カリブ伯爵令嬢である私は、家が没落し父も母も流行病で亡くなり借金だけが残った。アイザック・レイラ準男爵が私の美貌を気に入って、借金を払ってくれた。私は、彼の妻になった。始めは幸せだったけれど、子供がなかなかできず義理の両親から責められる日々が続いた。 夫は愛人を連れてきて一緒に住むようになった。彼女のお腹には夫の子供がいると言う。義理の両親や夫から虐げられ愛人からもばかにされる。「子供も産めない役立たず」と毎日罵られる日々だった。 私には歳の離れた兄がいて、その昔、父と諍いを起こし家を出たのだった。その兄が生きていて、チートな冒険者になっており勇者と共に戻って来た。だが、愛人が私のふりをして・・・・・・ざまぁ。納得の因果応報。 虐げられる美貌の主人公系。 大14回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。ちなみに順位は37位でした。投票して頂きありがとうございました。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

苦しい恋はいらない

青空一夏
恋愛
マディソン・プラム伯爵令嬢は幼い頃から大好きだったジョシュア・バーレー侯爵と結婚することができた。 ところが、ジョシュアは元婚約者とベタベタしていて、マディソンには冷たい。 傷ついたマディソンはいつも相談相手にしていた美貌の幼なじみのデイビッド・ストロベン伯爵からプロポーズされるが‥‥ お互いに相思相愛の侯爵夫妻のすれ違いな思いが、溶け合う課程を描く甘いラブストーリー。

【完結】旦那様、契約妻の私は放っておいてくださいませ

青空一夏
恋愛
※愛犬家おすすめ! こちらは以前書いたもののリメイク版です。「続きを書いて」と、希望する声があったので、いっそのこと最初から書き直すことにしました。アルファポリスの規約により旧作は非公開にします。  私はエルナン男爵家の長女のアイビーです。両親は人が良いだけで友人の保証人になって大借金を背負うお人好しです。今回もお父様は親友の保証人になってしまい大借金をつくりました。どうしたら良いもにかと悩んでいると、格上貴族が訪ねてきて私に契約を持ちかけるのでした。いわゆる契約妻というお仕事のお話でした。お金の為ですもの。私、頑張りますね!    これはお金が大好きで、綺麗な男性が苦手なヒロインが契約妻の仕事を引き受ける物語です。  ありがちなストーリーのコメディーです。    ※作者独自の異世界恋愛物語。  ※コメディです。  ※途中でタグの変更・追加の可能性あり。  ※最終話に子犬が登場します。

(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)

青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。 これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。 ショートショートの予定。 ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。