【完結】裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ

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5話

「お前、ここを出ていくのか?」




 キース兄様が知ったのは私が寮に入る数日前だった。

 それは……

 養父母に寮に入りたいとお願いした時。

「どうかキース兄様には伝えないで欲しいのです」

「何故?」

「自分から話したいんです。お二人がいない間はこの屋敷にいるのはキース兄様と二人。私がいなくなると寂しいと思うんです。ですから自分の口で伝えたいと思っております」

「わかった、私達はまたひと月ほど別の領地へ行くことになる。レインが入学する頃には帰ってくるつもりだ。二人で過ごすのもあと少し。仲が良くてよかった」

 お父様は私達が仲が良いと思って疑わない。

「はい、学園のことをキース兄様に色々教わっておこうと思います」

「そうだな、キースは優秀だから頼るといい。あの子はとても明るくて友人も多いから何かと頼りになると思う。レインももう13歳か……アレックスも16歳、彼にも婚約者が出来た、卒業したら結婚することになる。婚約式は半年後になるだろうから、その時は寮から帰ってきなさい」

 ーーえっ?

「…………はい」




 執務室からどうやって自分の部屋まで帰ってきたのか……

 お父様の前で私顔色を変わったりしてないよね。

 アレックス兄様が……婚約……

 いつかは兄様にも婚約者ができると分かっていた。

 バイセム侯爵家はこの国では格式高い我が国屈指の高位貴族。

 広大な豊かな領地、さらに銀行も運営しており、莫大な財産を有している。

 そんな侯爵家を継ぐアレックス兄様。結婚相手も選び抜かれた優秀な令嬢と決まっていた。

 でもやっぱり……分かっていても……辛い。

 ベッドに寝転がりクッションに顔を埋めた。涙が次から次へと溢れ出した。

 こんなすごい屋敷の養女になれたのは幸運だったと思う。キース兄様は意地悪だし、使用人たちもちょっと…かなり意地悪だけど、別に虐待されているわけではないし、それなりに快適に暮らしている。

 やられたらやり返すし、無視すればいいし。

 でもそれはアレックス兄様が寄宿舎から帰ってきてくれるから。それだけが楽しみでここにいることができた。

 私は養父母から関心を持たれることもない。必要な事は全て与えられるけど愛情を与えてくれたのはアレックス兄様だけ。

 この気持ちは恋じゃないかもしれないけど、兄様が女の人に優しく微笑む姿を見ることになる、そう思うだけで心が痛い。

 その日は泣きすぎて部屋から出られなかった。

 キース兄様は私の気持ちを知ってるかのように態とアレックス兄様の婚約者のことをニヤニヤしながら話してくる。

 ほんと、性格悪いんだから!

「兄上の婚約者はとても綺麗な人らしい」から始まった。

「俺、この前学園で会って話をしたんだ」
「お前と違って可愛らしく笑う人だった」
「兄上と並んで歩く姿はほんとお似合いだった。俺もあんな素敵な人と婚約したい」

 私はいまだにお会いしていない。この屋敷に来た時は何故か私だけ除け者にされている。声をかけてもらえない。

 アレックス兄様も私には会わせたくないのかもしれない。血のつながらない養女だし。

 そしてもうすぐ入学式。私はこの屋敷を出て寮へと入る。

 キース兄様の嫌味なほどのアレックス兄様の婚約者の話にうんざりして返事をしたりする気になれず、それを言い訳に……(関係ないけど)自分が寮に入ることをキース兄様にも使用人たちにも伝えていない。

 私によくしてくれる料理人や庭師のおじちゃん、メイド見習いの数人の子には伝えてある。

 メイド見習いの子達はみんな良い子なのよね。

 寮に持っていく荷物はあまりない。

 制服は特待生なので支給されるし学用品なども揃えてあるらしい。

 自分の服や小物だけトランクに詰めて必要なものはメイド見習いのアンナにまた送ってもらえるようにお願いをした。

 侍女長や家令は流石に私が寮に入る事は知っているけど、あの人達は私にはあまり興味がない。

 私がこの屋敷でどういう立場なのか把握していながら義両親に伝えることもなく静観して……いや、態と気づかないふりをしている。

 おかげで自由にはさせてもらっているので、キース兄様に寮のことも伝えずに済んでいる。

 もし寮に入ることがわかればうるさい。

 色々言ってくるだろうし、もしかしたら寮に入ることもお父様に言って取りやめさせてしまうかもしれない。

 あの人は私がいなくなれば鬱分晴らし出来なくなるもの。

 彼の生きがいは私を虐めることなんだもの。
 もう剣の相手もしなくて済むし嫌みや意地悪もされなくなる。

 あと数日……なのに、バレてしまった。



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