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21話
夕餉の時間。
アレックス兄様はまだ帰ってきてはいないので養父母とキース兄様と4人でテーブルを囲むことになった。
家族仲が良い(私も以前は一応そう思っていた)こともあり侯爵家では貴族ではありがちな大きくて長いテーブルではなく、敢えて家族が近くに感じるように座るため少し小さめのテーブルで食事をする。
それでも十分普通より大きいのだけど。
私の席はキース兄様の目の前の向かい側の席に座るのがいつもの定位置だ。
養父母は二人一緒に部屋に入ってきた。
「レイン、久しぶりね」
お母様と顔を合わせるのは本当に久しぶり。いつも社交界を忙しく渡り歩き、侯爵夫人として屋敷を取り仕切り、お父様と共に領地へ行きそこでも領民達に会ったり、領地を任せている管理の人たちとの交流を図ったりと忙しく動いて回っている。
ある意味お父様よりお忙しいかもしれないわ。
「ご無沙汰いたしております」
私は幼い頃からお母様が少し苦手だった。いつも撫で回すように私のことを見つめそれから私に声を掛けてくる。
その見つめられるほんの少しなんだけどその時間が苦手だ。
何を考えているのかよくわからない人。そんなイメージがある。
私がこの屋敷を出た後も一番なんの反応もなかったのがお母様だった。
手紙が来るわけでも連絡が来るわけでもなかった。心配すらない。興味すら持ってもらえない。
無関心の優しさ。
入学式の時もお母様だけ来なかった。
どこぞの婦人にお茶会に呼ばれたらしい。義娘の入学式よりどこぞの婦人達と「おほほほほっ」と笑いながらお茶を飲む方が好きらしい。
「レインも学園に通うようになって綺麗になったわね?そろそろ婚約者を探さないといけないかしら?ねぇ、貴方?」
「君がそう言うならそろそろ探すとしよう」
お父様は昔からそうだった。お母様が何を言っても肯定する。
でもここで私は文官になるので婚約者などいらないと言えば、「女の子はお嫁に行くべきだわ」なんて言い出すのが目に見えている。
言い出したら言うことを聞かないお母様は、私への意地悪とかではなく、自分の思い通りになるようにと、すぐに婚約者を勝手に見つけ、16歳の成人の日には結婚させられてしまうだろう。
「お父様、お母様、私はまだ勉強をする身です、婚約はまだ先でいいと思っております」
「あら?女の子の幸せは結婚よ?貴方、少し年上になるけどわたくしが最近親しくしている方の息子さんなんてどうかしら?シュトラル伯爵夫人のところなの」
ふふふっとお父様に微笑むお母様。
「年上?」
キース兄様が初めて口を挟んだ。
「母上、シュトラル伯爵夫人の息子って22歳でしょう?レインより9歳も年上の男と婚約させようとするなんて、ちょっとそれは酷いと思います」
「9歳の差なんて結婚してしまえば大したことないと思うわ、ねぇ貴方?」
「……まぁ慌てる必要はない。レインはまだ13歳なんだ」
お父様も流石にすぐに了承はしなかったので内心ホッとした。
キース兄様がまさか私の味方につくなんて思ってもみなかった。
9歳も年上なんて……私にとってはおじさんに見えてしまうわ。
「レインだって早くお嫁さんになりたいわよね?レインはとても美しいから屋敷に閉じ込めてしまいたくなるんじゃないかしら?あちらの息子さん少しシャイだから」
私はあまり屋敷から出ていないのでシュトラル伯爵夫人の息子さんのことは顔もどんな性格なのかも知らない。
でも、多分、いや絶対、もしその息子さんと結婚したら私の文官になる夢は潰えてしまうだろう。
私はお母様の気分を害さないように黙々と料理を食べることにした。
私は空気。
そう自分に言いながら。
お母様はもうそんな話題をしたことも忘れて、今はどこぞの友人が外国から珍しい食べ物をお土産にといただいたとか、アレックス兄様が首席で卒業できそうだとか、お義父様と二人楽しそうで話題は尽きない。
お二人の会話が盛り上がっているおかげでしっかり食事を食べられた。
キース兄様は私の様子を窺いながらも話しかけてくることは今のところなかった。
アレックス兄様はまだ帰ってきてはいないので養父母とキース兄様と4人でテーブルを囲むことになった。
家族仲が良い(私も以前は一応そう思っていた)こともあり侯爵家では貴族ではありがちな大きくて長いテーブルではなく、敢えて家族が近くに感じるように座るため少し小さめのテーブルで食事をする。
それでも十分普通より大きいのだけど。
私の席はキース兄様の目の前の向かい側の席に座るのがいつもの定位置だ。
養父母は二人一緒に部屋に入ってきた。
「レイン、久しぶりね」
お母様と顔を合わせるのは本当に久しぶり。いつも社交界を忙しく渡り歩き、侯爵夫人として屋敷を取り仕切り、お父様と共に領地へ行きそこでも領民達に会ったり、領地を任せている管理の人たちとの交流を図ったりと忙しく動いて回っている。
ある意味お父様よりお忙しいかもしれないわ。
「ご無沙汰いたしております」
私は幼い頃からお母様が少し苦手だった。いつも撫で回すように私のことを見つめそれから私に声を掛けてくる。
その見つめられるほんの少しなんだけどその時間が苦手だ。
何を考えているのかよくわからない人。そんなイメージがある。
私がこの屋敷を出た後も一番なんの反応もなかったのがお母様だった。
手紙が来るわけでも連絡が来るわけでもなかった。心配すらない。興味すら持ってもらえない。
無関心の優しさ。
入学式の時もお母様だけ来なかった。
どこぞの婦人にお茶会に呼ばれたらしい。義娘の入学式よりどこぞの婦人達と「おほほほほっ」と笑いながらお茶を飲む方が好きらしい。
「レインも学園に通うようになって綺麗になったわね?そろそろ婚約者を探さないといけないかしら?ねぇ、貴方?」
「君がそう言うならそろそろ探すとしよう」
お父様は昔からそうだった。お母様が何を言っても肯定する。
でもここで私は文官になるので婚約者などいらないと言えば、「女の子はお嫁に行くべきだわ」なんて言い出すのが目に見えている。
言い出したら言うことを聞かないお母様は、私への意地悪とかではなく、自分の思い通りになるようにと、すぐに婚約者を勝手に見つけ、16歳の成人の日には結婚させられてしまうだろう。
「お父様、お母様、私はまだ勉強をする身です、婚約はまだ先でいいと思っております」
「あら?女の子の幸せは結婚よ?貴方、少し年上になるけどわたくしが最近親しくしている方の息子さんなんてどうかしら?シュトラル伯爵夫人のところなの」
ふふふっとお父様に微笑むお母様。
「年上?」
キース兄様が初めて口を挟んだ。
「母上、シュトラル伯爵夫人の息子って22歳でしょう?レインより9歳も年上の男と婚約させようとするなんて、ちょっとそれは酷いと思います」
「9歳の差なんて結婚してしまえば大したことないと思うわ、ねぇ貴方?」
「……まぁ慌てる必要はない。レインはまだ13歳なんだ」
お父様も流石にすぐに了承はしなかったので内心ホッとした。
キース兄様がまさか私の味方につくなんて思ってもみなかった。
9歳も年上なんて……私にとってはおじさんに見えてしまうわ。
「レインだって早くお嫁さんになりたいわよね?レインはとても美しいから屋敷に閉じ込めてしまいたくなるんじゃないかしら?あちらの息子さん少しシャイだから」
私はあまり屋敷から出ていないのでシュトラル伯爵夫人の息子さんのことは顔もどんな性格なのかも知らない。
でも、多分、いや絶対、もしその息子さんと結婚したら私の文官になる夢は潰えてしまうだろう。
私はお母様の気分を害さないように黙々と料理を食べることにした。
私は空気。
そう自分に言いながら。
お母様はもうそんな話題をしたことも忘れて、今はどこぞの友人が外国から珍しい食べ物をお土産にといただいたとか、アレックス兄様が首席で卒業できそうだとか、お義父様と二人楽しそうで話題は尽きない。
お二人の会話が盛り上がっているおかげでしっかり食事を食べられた。
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