【完結】裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ

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22話

 次の日の朝は寝坊することにした。

 家族と顔を合わせるのも疲れる。

「少し体調が悪くて……」
 アリッサにそう言って部屋で大人しく過ごすことにした。

 食事は料理長自らトマトとチーズのリゾットを作ってくれた。

 優しい味のリゾットは疲れた心まで癒してくれた。

 ここに来てからやっぱり精神的に疲れているのよね。

 この部屋は出て行ってからも何も変わっていなかった。

 それがなんだか不思議な感じがした。

 あの時のことは夢でまだここにいても大丈夫だとふと思わせてくれる。でも昨日のお義母様の発言を聞けば私を早く婚約させて嫁に出したいのかとも思う。

 それに私が突然挨拶もなく屋敷を出てなかなか家に近付かなくなったのに心配すらしなくて「久しぶりね」で終わった。

「ははっ……」

 なんだか笑いしか出てこない。

 暇すぎてすることがないから部屋に置いてあった本を読んで過ごそうかと思ったけど、窓から外を見ると庭師のおじちゃんが私の部屋を見上げているのが見えた。

 慌ててベランダに出ておじちゃんに手を振りながら声を掛けた。

「おじちゃん、お久しぶりです!」

「レイン様ぁ!!」

「待ってて!下に行くわ」

 私は慌てて部屋を出た。

 思わず廊下を小走りで走っていると「何してるんだ」と声を掛けてきたキース兄様をチラリと睨みつけた。

 『私に関わらないで』そう言ったはずでしょう?

 そんな顔をした私を見てすぐハッとしたのか「……すまない」と目を背けた。

 せっかく気分よくおじちゃんに会いに行こうと思っているのに。

 庭まで走って「おじちゃん!」と声をかけるとおじちゃんは何故か少し涙を溜めて「お元気で何よりです」と私の手を握った。

 私も握り返して「ここに帰ってきておじちゃん達に会いたかったんです」と笑っていった。

 おじちゃんに「学校でとても仲の良い友達もできました」「勉強も頑張ってるんです」と今の近況報告をした。

 庭師のおじちゃん達と庭に置かれたベンチに座りみんなで庭になっているりんごを丸齧りした。

「美味しい、やっぱりここの果物が一番美味しいわ」

「レイン様のためにここにいろんな果物の木を植樹したんです」

 にこりと笑う庭師長のおじちゃん。他の庭師も「そうそう」と相槌を打っていた。

「みんなのおかげで私はこの屋敷で挫けずに生活できました。私が今幸せに過ごせているのはみんなのおかげです」

「私達はレイン様が大好きなんです。いつも笑顔で話しかけてくださる、それだけで頑張ろうと思えたんです」

「そうです、明るいレイン様の姿を見るのが楽しみでした」

 みんなの言葉が嬉しくて「またここに帰ってくる理由ができちゃいました」と苦笑した。

 もうここには帰ってきたくないのに待ってくれる人がいるのならまた顔を出そう、そう思ってしまう。




「レイン?」

 みんなで楽しく話していたら聞き覚えのある声。

「あ……アレックス兄様」

 声の方へと顔を向けるとアレックス兄様がカリーナ様の腰に手を回しエスコートして庭を歩いていた。

 庭師達は慌てて立つとすぐに頭を下げた。そしてそそくさと去っていった。

 私はベンチからゆっくり立ち上がりお二人に向かい長い髪の毛を耳にかけながらにこりと微笑んだ。

「アレックス兄様、昨日帰ってきました。1週間ほどこちらに滞在させていただきますね」

 チラリとカリーナ様を見ると兄様が気がついた。

「まだレインにはきちんと紹介していなかったね、カリーナ・リドラー、僕の婚約者で伯爵家のご令嬢だよ」

「初めまして、レイン様。たまに学園で顔をお見かけすることがありましたね」

 にこりと私の顔を見た。

 アレックス兄様の手がカリーナ様の腰から離れることはなくピタリと寄り添う姿は恋人同士でお二人の婚約は政略的なものではなく想い合うお二人の姿にしか見えなかった。

 ズキッと胸が痛くなる。

 ずっと家族の中でも特別だった兄様。兄様がいたから、兄様が褒めてくれるから、兄様が大好きだから、この屋敷で頑張れたのに。

 だけど片想いでしかない私の恋心。傷ついたとしても兄様が悪いわけではない。わかっているのに……

「はい……きちんとお会いしていなかったので学園でご挨拶することはできませんでした。これからはよろしくお願い致します」

「アレックス様、レイン様は中等部ではとても有名なんですよ?」

「レインが?」

「はい、レイン様は頭も良くて剣術の腕前も凄くて、とても美しいお方ですもの。高等部でも噂になっておりますわ。婚約者にと言っている方もいるくらいです」

「レインを婚約者に?」

 アレックス兄様が不機嫌な顔をした。

「まだ13歳だ、早すぎるよ。俺の可愛いレインでいて欲しい」

 寄り添う二人の姿を見ていて、そんなことを言われても………嬉しいなんて思えなかった。



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