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28話
お母様との話はあまりにも驚くことばかりで言葉が出なかった。
お母様は私が学園でわがまま三昧、楽しく暮らしていたと思っているようだった。
だから十分学園生活を楽しんだのだろうと思い結婚して落ち着いて欲しいと思っていたらしい。
何を見てそう思ったのか……私のことなど全く見ていなかったことがわかる。
屋敷を出て寮で暮らし、たくさんのお金を毎月使い切って楽しんでいたのだと思い込んでいたお母様。
私の言葉を信じたのか信じていないのか。
「調べてみるわ」
今度こそお母様に私のこれまでの生活をきちんと知ってもらえるかもしれないと思った。
そしてさっさと私から離れてどこかへ行ってしまった。
あ………私は……私の結婚はなくなったのかしら?
聞きたいけど追いかけて聞くこともできず私はお母様の後ろ姿を呆然と立って見送った。
母の背中を見つめながらふと思った。
私って愛されていないのね。
倒れた私に一度も『大丈夫?』とは言われなかった。心配すらしてもらえない。それはお母様が私に無関心だと突き付けられているのと同じだった。
料理長はそんな私の頭をそっと撫でてくれた。
これはここにいた時から料理長がしてくれたこと。私が寂しそうにしているといつも頭を撫でてくれる。
本当は抱きしめてあげたいけど、私がこの屋敷のお嬢様なのでそれはできない。だけど『頭を撫でるくらいならいいよな』と言って撫でてくれる。
その大きな優しい手がどれだけ私の心を掬い上げてくれたか。
「料理長~、私この屋敷にいるだけで心が擦り減っていってしまうわ」
俯いていると思わずポロッと本音が出てしまった。涙も少し。
またなんだかフラフラとしてきて座り込んだ。
「美味しいものを食べれば心もあったかくなるから。待っててください」
私を椅子に座らせると何か作り出した。
今度はヨーグルトにりんごのコンポートとバナナを添えて「どうぞ」と出してくれた。
「胃に負担がかからないようにしていますので安心して食べてください」
「ありがとう」
お腹はまだ空いているのに色々考えすぎて食欲がない。でも料理長の作ってくれたものは不思議にスプーンがすすんだ。
「美味しい」
一口また一口と食べ進めペロリと食べ終わった。
突然厨房にやってきたキース兄様。
「レイン、お前大丈夫なのか?」
キース兄様が私の手首を掴んで私の顔を覗き込んだ。
「痛っ!」
もう、心配だからっていきなり手首を掴むなんて!だから他人に勘違いされるのよ!
兄様も我に返って慌てて手を離してくれた。
兄様がこんなわかりやすく心配してくれるなんて珍しい。いつもツンツンしている兄様なのに。
ただやっぱり少し乱暴だけど。
「あっ……すまない。昨日医者に診てもらったんだが疲労と栄養不足だと言われた。お前いくら結婚したくないからと言って無理してどうするんだ」
私の結婚話、知ってるんだ。じゃあそれを回避するために試験勉強を頑張ったことも知ってるのね。
「キース兄様……が昨日助けてくださったんですね?」
倒れる時、聞こえた声はキース兄様だった。あれだけ嫌って関わらないでと酷いことを言ったのにキース兄様はどうして助けてくださったのだろう。
「門の前でお前が立っているのが見えて心配になって行ってみたら俺の目の前で倒れたんだ。慌てて屋敷に連れて帰って医者に診せたんだ」
「ありがとうございました」
いつも突っぱねてキース兄様には酷い態度しか取らない私だけど助けてもらったんだし素直にお礼は言っておかないと。
「お、おう」
キース兄様は素直に私がお礼を言ったのに驚いて戸惑っていた。
なんだかその様子が面白くてつい笑ってしまった。
「お前、笑うな!せっかく心配してやったのに」
「私だってせっかくお礼を言ってあげたのに!」
お互い目を合わせると、なんだかくすぐったくて、恥ずかしくて……苦笑しながらも笑い合った。
そう言えば、幼い頃は一つ年上のキース兄様とはいつもこんな感じだった。
いつからかキース兄様の態度が酷くなって意地悪になった。私も素直じゃないから突っぱねてキース兄様を受け入れられなくなった。
お父様は仕事で屋敷にいなかった。アレックス兄様は騎士団の仕事で帰ってきていないらしい。
お母様にとりあえず報告?らしき話にはなったので帰ることにした。
「おい!病人のくせに歩いて帰るのか?馬車を出すからそれに乗って帰れ!」
「歩いても50分くらいしかかからないから大丈夫ですよ?歩き慣れていますので」
ケロッとした顔でそう告げた。
「……いいから馬車に乗れ!命令だ」
命令……私を気遣うために言った言葉。
「はぁー、仕方ないから乗って差し上げます」
「おう!乗って帰れ」
まだお互いぎこちないけどなんとなく以前よりキース兄様を受け入れてもいいかなと思えるようになった。
「キース兄様、私は多分もうこの屋敷に帰ってくることはないと思います。今までありがとうございました」
馬車に乗る時、振り返り別れの言葉を告げた。
意地悪からでも突っぱねるためでもなく、素直に兄にそう伝えたかった。
「レイン………」
キース兄様は「おめでとう。お前が努力して勝ち取った場所だ。がんばれ」と言ってくれた。
「だけど俺はお前のことが大切だ、いくら嫌われても……だから……お前が嫌だと言っても俺はお前に関わることにしたから」
お母様は私が学園でわがまま三昧、楽しく暮らしていたと思っているようだった。
だから十分学園生活を楽しんだのだろうと思い結婚して落ち着いて欲しいと思っていたらしい。
何を見てそう思ったのか……私のことなど全く見ていなかったことがわかる。
屋敷を出て寮で暮らし、たくさんのお金を毎月使い切って楽しんでいたのだと思い込んでいたお母様。
私の言葉を信じたのか信じていないのか。
「調べてみるわ」
今度こそお母様に私のこれまでの生活をきちんと知ってもらえるかもしれないと思った。
そしてさっさと私から離れてどこかへ行ってしまった。
あ………私は……私の結婚はなくなったのかしら?
聞きたいけど追いかけて聞くこともできず私はお母様の後ろ姿を呆然と立って見送った。
母の背中を見つめながらふと思った。
私って愛されていないのね。
倒れた私に一度も『大丈夫?』とは言われなかった。心配すらしてもらえない。それはお母様が私に無関心だと突き付けられているのと同じだった。
料理長はそんな私の頭をそっと撫でてくれた。
これはここにいた時から料理長がしてくれたこと。私が寂しそうにしているといつも頭を撫でてくれる。
本当は抱きしめてあげたいけど、私がこの屋敷のお嬢様なのでそれはできない。だけど『頭を撫でるくらいならいいよな』と言って撫でてくれる。
その大きな優しい手がどれだけ私の心を掬い上げてくれたか。
「料理長~、私この屋敷にいるだけで心が擦り減っていってしまうわ」
俯いていると思わずポロッと本音が出てしまった。涙も少し。
またなんだかフラフラとしてきて座り込んだ。
「美味しいものを食べれば心もあったかくなるから。待っててください」
私を椅子に座らせると何か作り出した。
今度はヨーグルトにりんごのコンポートとバナナを添えて「どうぞ」と出してくれた。
「胃に負担がかからないようにしていますので安心して食べてください」
「ありがとう」
お腹はまだ空いているのに色々考えすぎて食欲がない。でも料理長の作ってくれたものは不思議にスプーンがすすんだ。
「美味しい」
一口また一口と食べ進めペロリと食べ終わった。
突然厨房にやってきたキース兄様。
「レイン、お前大丈夫なのか?」
キース兄様が私の手首を掴んで私の顔を覗き込んだ。
「痛っ!」
もう、心配だからっていきなり手首を掴むなんて!だから他人に勘違いされるのよ!
兄様も我に返って慌てて手を離してくれた。
兄様がこんなわかりやすく心配してくれるなんて珍しい。いつもツンツンしている兄様なのに。
ただやっぱり少し乱暴だけど。
「あっ……すまない。昨日医者に診てもらったんだが疲労と栄養不足だと言われた。お前いくら結婚したくないからと言って無理してどうするんだ」
私の結婚話、知ってるんだ。じゃあそれを回避するために試験勉強を頑張ったことも知ってるのね。
「キース兄様……が昨日助けてくださったんですね?」
倒れる時、聞こえた声はキース兄様だった。あれだけ嫌って関わらないでと酷いことを言ったのにキース兄様はどうして助けてくださったのだろう。
「門の前でお前が立っているのが見えて心配になって行ってみたら俺の目の前で倒れたんだ。慌てて屋敷に連れて帰って医者に診せたんだ」
「ありがとうございました」
いつも突っぱねてキース兄様には酷い態度しか取らない私だけど助けてもらったんだし素直にお礼は言っておかないと。
「お、おう」
キース兄様は素直に私がお礼を言ったのに驚いて戸惑っていた。
なんだかその様子が面白くてつい笑ってしまった。
「お前、笑うな!せっかく心配してやったのに」
「私だってせっかくお礼を言ってあげたのに!」
お互い目を合わせると、なんだかくすぐったくて、恥ずかしくて……苦笑しながらも笑い合った。
そう言えば、幼い頃は一つ年上のキース兄様とはいつもこんな感じだった。
いつからかキース兄様の態度が酷くなって意地悪になった。私も素直じゃないから突っぱねてキース兄様を受け入れられなくなった。
お父様は仕事で屋敷にいなかった。アレックス兄様は騎士団の仕事で帰ってきていないらしい。
お母様にとりあえず報告?らしき話にはなったので帰ることにした。
「おい!病人のくせに歩いて帰るのか?馬車を出すからそれに乗って帰れ!」
「歩いても50分くらいしかかからないから大丈夫ですよ?歩き慣れていますので」
ケロッとした顔でそう告げた。
「……いいから馬車に乗れ!命令だ」
命令……私を気遣うために言った言葉。
「はぁー、仕方ないから乗って差し上げます」
「おう!乗って帰れ」
まだお互いぎこちないけどなんとなく以前よりキース兄様を受け入れてもいいかなと思えるようになった。
「キース兄様、私は多分もうこの屋敷に帰ってくることはないと思います。今までありがとうございました」
馬車に乗る時、振り返り別れの言葉を告げた。
意地悪からでも突っぱねるためでもなく、素直に兄にそう伝えたかった。
「レイン………」
キース兄様は「おめでとう。お前が努力して勝ち取った場所だ。がんばれ」と言ってくれた。
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