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29話
寮に戻るとさっそく文官になるための手続きに取り掛かることにした。
王城へ行って次は面接がある。寮に書類が届いていたのでしっかりと内容を確認して返信することにした。
結婚については母がどうにかするだろう。
元々私はサインをしていないので婚約には至っていないし、一位通過の私が入省しないなんて有り得ないことだから、もし無理やり結婚となれば調べが入り侯爵家にとっても都合が悪いはず。
デュオス先生にも会えたらお礼を言おう。
先生のアドバイスがなければ多分諦めて結婚していたことだろう。
お母様は私が好き勝手に過ごしていたと思っていたし。
どこから私にお金が回っていると思ったのだろう。全くお金なんてもらっていないのに。
私の今までの生活を調べればわかるはず。私が唯一遊んで過ごしたのはミシェル達の領地に遊びに行く時だけだった。
野原を駆け回りみんなでピクニックをしたり夜は屋敷でみんなで集まってカードゲームやおしゃべりをして楽しむ。
あれを遊び回っていると言うのなら何も言い返せないけど、金銭的な豪遊はしていない。
あ……でも、ミシェルの実家に行く時は何故か毎回列車に乗るようにと切符が送られてきた。もちろん帰りも。
どこからの情報なのだろう。気にもしていなかったけど私の情報はお義父様にだけダダ漏れだったのかもしれない。
お母様への情報は全く違うものになっていたし……考えても仕方がない。
私は学園を卒業すれば自立して働き始める。
だけどバイセム侯爵の名はこれからもずっと私と共に過ごすことになる。それは養女としてお世話になったのだから当たり前のこと。
ならばバイセムの名に恥じないように仕事を頑張ろう。それが恩返しになるだろうから。
でもそれだけ。
静かに時はすぎる。
結局頑張った甲斐があって三年間首席で卒業を決めた私は暇な時間を旧校舎で過ごす。
卒業までのひと月は授業がほとんどなくそれぞれれ寮生も実家へと帰って行った。
ミシェルが一緒にパーカー領へ行こうと言ってくれたけど今回は遠慮した。
ミシェルは卒業したら実家に帰る。
一年後には婚約者との結婚が待っている。そんなバタバタしているのに他人の私がついていくのは憚ってしまった。
同じ学年で寮に残っているのは私だけ。
下の学年や高等部の生徒はもちろんいるので寂しくはないけど昼間はみんな授業がある。
授業のない私は暇なので通いなれた旧校舎の図書室になんとなく通ってしまう。
もうこの落ち着いた大好きな場所に来ることはない。そう思うと自然に足が運ぶ。
受付の方とは顔見知りになりいつも頭を下げれば「いらっしゃい」と笑顔で迎え入れてくれる。
定位置に座り本を読む。
貴族大全集を読み始めた。
周囲にはその頃の新聞も置いている。
旧校舎の図書室だからこそまだ残されている古い新聞。
図書室の奥にひっそりとおかれた新聞達は綺麗に整理されて保存されていた。
王立図書館ならまだしもこんなところに残されているなんて……過去を紐解くことができるかもしれないと心がワクワクすると共に不安で苛まれ胸が痛かった。
もし自分の過去がわかったら……どうなるのだろう。何も変わらないかもしれない。
でも大雨になると不安になる。
子供の頃お父様に尋ねたことがある。
少しの雨なら平気なのに大雨になると体が震えて不安になる。
怖くて一人で部屋にいることができなかった。いつも優しいアレックス兄様のところへ行きくっついて離れようとしなかった。
今はそこまで酷くはないのだけど。
『雨になるとどうしてこんなに怖いの?』
たまたまそばにいたお父様にその時はくっついて離れようとしなかった。
そしてお父様に質問をした。
『レインは大雨の中道で倒れているところを私が助けたんだよ。記憶を失ってもその時のことを体が覚えているのかもしれない』
そう言った。
その時のことを詳しく聞こうとしたけど『思い出さない方がいい』と言われ、それ以上話してもらえなかった。
私のことを心配してのことなのだろうとその時は思った。でもお父様はあの時とても嫌そうな顔をした。
まるでこれ以上聞くなと言わんばかりの顔だった。怖くてこれ以上質問してはいけないと子供ながらに思ったのを覚えている。
だからやっと時間が取れた今調べてみようと思った。
私が引き取られた前後に行方不明になった令嬢がいないか、この頃何か事件が起きていないのか。
私が誰なのか。何者なのか。
私の居場所は……何処にあるのだろう。
王城へ行って次は面接がある。寮に書類が届いていたのでしっかりと内容を確認して返信することにした。
結婚については母がどうにかするだろう。
元々私はサインをしていないので婚約には至っていないし、一位通過の私が入省しないなんて有り得ないことだから、もし無理やり結婚となれば調べが入り侯爵家にとっても都合が悪いはず。
デュオス先生にも会えたらお礼を言おう。
先生のアドバイスがなければ多分諦めて結婚していたことだろう。
お母様は私が好き勝手に過ごしていたと思っていたし。
どこから私にお金が回っていると思ったのだろう。全くお金なんてもらっていないのに。
私の今までの生活を調べればわかるはず。私が唯一遊んで過ごしたのはミシェル達の領地に遊びに行く時だけだった。
野原を駆け回りみんなでピクニックをしたり夜は屋敷でみんなで集まってカードゲームやおしゃべりをして楽しむ。
あれを遊び回っていると言うのなら何も言い返せないけど、金銭的な豪遊はしていない。
あ……でも、ミシェルの実家に行く時は何故か毎回列車に乗るようにと切符が送られてきた。もちろん帰りも。
どこからの情報なのだろう。気にもしていなかったけど私の情報はお義父様にだけダダ漏れだったのかもしれない。
お母様への情報は全く違うものになっていたし……考えても仕方がない。
私は学園を卒業すれば自立して働き始める。
だけどバイセム侯爵の名はこれからもずっと私と共に過ごすことになる。それは養女としてお世話になったのだから当たり前のこと。
ならばバイセムの名に恥じないように仕事を頑張ろう。それが恩返しになるだろうから。
でもそれだけ。
静かに時はすぎる。
結局頑張った甲斐があって三年間首席で卒業を決めた私は暇な時間を旧校舎で過ごす。
卒業までのひと月は授業がほとんどなくそれぞれれ寮生も実家へと帰って行った。
ミシェルが一緒にパーカー領へ行こうと言ってくれたけど今回は遠慮した。
ミシェルは卒業したら実家に帰る。
一年後には婚約者との結婚が待っている。そんなバタバタしているのに他人の私がついていくのは憚ってしまった。
同じ学年で寮に残っているのは私だけ。
下の学年や高等部の生徒はもちろんいるので寂しくはないけど昼間はみんな授業がある。
授業のない私は暇なので通いなれた旧校舎の図書室になんとなく通ってしまう。
もうこの落ち着いた大好きな場所に来ることはない。そう思うと自然に足が運ぶ。
受付の方とは顔見知りになりいつも頭を下げれば「いらっしゃい」と笑顔で迎え入れてくれる。
定位置に座り本を読む。
貴族大全集を読み始めた。
周囲にはその頃の新聞も置いている。
旧校舎の図書室だからこそまだ残されている古い新聞。
図書室の奥にひっそりとおかれた新聞達は綺麗に整理されて保存されていた。
王立図書館ならまだしもこんなところに残されているなんて……過去を紐解くことができるかもしれないと心がワクワクすると共に不安で苛まれ胸が痛かった。
もし自分の過去がわかったら……どうなるのだろう。何も変わらないかもしれない。
でも大雨になると不安になる。
子供の頃お父様に尋ねたことがある。
少しの雨なら平気なのに大雨になると体が震えて不安になる。
怖くて一人で部屋にいることができなかった。いつも優しいアレックス兄様のところへ行きくっついて離れようとしなかった。
今はそこまで酷くはないのだけど。
『雨になるとどうしてこんなに怖いの?』
たまたまそばにいたお父様にその時はくっついて離れようとしなかった。
そしてお父様に質問をした。
『レインは大雨の中道で倒れているところを私が助けたんだよ。記憶を失ってもその時のことを体が覚えているのかもしれない』
そう言った。
その時のことを詳しく聞こうとしたけど『思い出さない方がいい』と言われ、それ以上話してもらえなかった。
私のことを心配してのことなのだろうとその時は思った。でもお父様はあの時とても嫌そうな顔をした。
まるでこれ以上聞くなと言わんばかりの顔だった。怖くてこれ以上質問してはいけないと子供ながらに思ったのを覚えている。
だからやっと時間が取れた今調べてみようと思った。
私が引き取られた前後に行方不明になった令嬢がいないか、この頃何か事件が起きていないのか。
私が誰なのか。何者なのか。
私の居場所は……何処にあるのだろう。
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