【完結】裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ

文字の大きさ
35 / 116

34話 閑話

「リドラー伯爵は、次はオリソン国のベルン侯爵家を狙うらしい」

「目を向けるのが思ったより早かったな」

「レインとの婚約がなくなってベルン侯爵家にかなりの金が入ったからな。騙して根こそぎ金を持っていくつもりだろう」

「絶対に尻尾を掴んでやる。そして殺された両親の恨みを晴らしてやるんだ」

「慎重に動けよ。あの伯爵、バイセム侯爵家の使用人に金を渡して好き勝手に自分の思い通りに屋敷で動いていたんだ」




 ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

「俺は絶対に許さない」

 セーラが8歳、俺が15歳の時だった。

 父はモリス国の伯爵で、広大な領地は肥沃で父は商才があり、他国へ穀物やワインを輸入し巨万の富を得て裕福な暮らしだった。

 セーラは「にいさま!大好き」「遊んでくださいまし」と大人に近い歳になった俺に子供の遊びを一緒にしようと強請ってきた。

 その度にいい歳した俺は妹に付き合ってカードゲームをしたり妹の下手なピアノを聴かされて教えたりして過ごした。
 家族と過ごす時間は温かくいつも笑い合っていた。

 そんな時間がとても幸せで、この幸せはずっと続くと思っていた。



 それが突然全て一変した。



「三人は私の親友の住むグリス国へ送るからとりあえず必要なものだけ持って馬車へ」

「どうしたんですか?」
「貴方?どうなさったの?」
「とうさま?おでかけ?」
 セーラはキョトンとしていた。

 俺は父にプレゼントされた懐中時計やなんとなく不安になって宝石箱に入っていた全ての宝石を上着の内ポケットに入れて、着替えを数枚トランクに詰めて馬車に乗り込んだ。

 セーラはお気に入りのクマのぬいぐるみと数枚の服をドレスに詰め込んでいた。

 母上はやはり持っていた宝石やアクセサリーなど金目になるものを手持ちの鞄に詰めていたみたいだ。

「にいさま、なんだか怖いわ」

 馬車の中で隣に座ったセーラは俺のズボンをギュッと握り不安がる。
 気が強く少しわがままなところもあるが心根は心優しい。弱い者には愛情深い。ただ相手が強く出てきたり理不尽なことを言う相手には年上でも平気で噛み付いていくので兄としてはいつも心配だった。

 周囲からはわがままだと勘違いされることも多い。

 つい可愛くて甘やかしてしまう。だけど今のセーラはただ父上の様子を見て不安がっていた。もちろん俺も意味がわからず戸惑っていたが父上の有無を言わさない態度に何も聞けないし反抗もできずにいた。

 母上は何かしら知らされていたらしく「二人とも大丈夫ですよ、これから向かう所は私達の親友の屋敷です。とても頼りになるの」

 本当は母上も怖いのだろう。手が小刻みに震えているのが見えた。でも俺はあえて聞かなかった。父上は御者と一緒に馬を走らせていたし、母上もセーラの前では話したがらなかった。

 馬車を止めて休憩のため馬車から降りると父上が俺を呼んだ。

「突然ですまない。俺はリドラーに嵌められた。何もかも奪われる、だがその前にお前たちだけは逃すつもりだ」

「奪われる?」

「財産全てだ、あの男は言葉巧みに俺に近づいてきて、投資話を持ちこみ信用させて、たくさんの金を儲けることができた。そしてさらに大金を投資するように勧められて、大損させられた。全て罠だったんだ。書類は改竄されて全ての金を奪われる」

「そんな……裁判を起こしましょう」

「無理だ、あの書類にサインをしたのは俺だ。巧妙に作られていた書類だ、まさか書類が二重になっていて下の書類にまでサインしたことになるなんて」

「じゃあ、どうしようもないんですか?」

「ああ、それにセーラを差し出せと言ってきている」

「セーラを?何故ですか?」

「セーラは珍しい紫色の瞳だから……」

「紫色なんて他にもいるじゃないですか!」

「ああ、私もそう思う。だが国内でもセーラの瞳の色ほど鮮やかな紫をした瞳を持つ令嬢はいない。とても珍しい……だから、養女にして商品価値を高め商品として高値で嫁がせたいと言われた」

「それは、道具としてしか見ていないじゃないですか!」

「わかっている、だからお前たちを友人の屋敷に匿ってもらうんだ。財産は全て失くなってもお前たちは失うわけにはいかない。騙されたことを陛下に陳情するつもりだ。そしてセーラを向こうに渡すのを食い止める。それまでグリス国で待っていて欲しい」

 そして、あと少しでその屋敷に着くと思っていたのに……

 雨が降り始めた。







感想 209

あなたにおすすめの小説

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

(完)子供も産めない役立たずと言われて・・・・・・

青空一夏
恋愛
グレイス・カリブ伯爵令嬢である私は、家が没落し父も母も流行病で亡くなり借金だけが残った。アイザック・レイラ準男爵が私の美貌を気に入って、借金を払ってくれた。私は、彼の妻になった。始めは幸せだったけれど、子供がなかなかできず義理の両親から責められる日々が続いた。 夫は愛人を連れてきて一緒に住むようになった。彼女のお腹には夫の子供がいると言う。義理の両親や夫から虐げられ愛人からもばかにされる。「子供も産めない役立たず」と毎日罵られる日々だった。 私には歳の離れた兄がいて、その昔、父と諍いを起こし家を出たのだった。その兄が生きていて、チートな冒険者になっており勇者と共に戻って来た。だが、愛人が私のふりをして・・・・・・ざまぁ。納得の因果応報。 虐げられる美貌の主人公系。 大14回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。ちなみに順位は37位でした。投票して頂きありがとうございました。

(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)

青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。 これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。 ショートショートの予定。 ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。

【完結】旦那様、契約妻の私は放っておいてくださいませ

青空一夏
恋愛
※愛犬家おすすめ! こちらは以前書いたもののリメイク版です。「続きを書いて」と、希望する声があったので、いっそのこと最初から書き直すことにしました。アルファポリスの規約により旧作は非公開にします。  私はエルナン男爵家の長女のアイビーです。両親は人が良いだけで友人の保証人になって大借金を背負うお人好しです。今回もお父様は親友の保証人になってしまい大借金をつくりました。どうしたら良いもにかと悩んでいると、格上貴族が訪ねてきて私に契約を持ちかけるのでした。いわゆる契約妻というお仕事のお話でした。お金の為ですもの。私、頑張りますね!    これはお金が大好きで、綺麗な男性が苦手なヒロインが契約妻の仕事を引き受ける物語です。  ありがちなストーリーのコメディーです。    ※作者独自の異世界恋愛物語。  ※コメディです。  ※途中でタグの変更・追加の可能性あり。  ※最終話に子犬が登場します。

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

苦しい恋はいらない

青空一夏
恋愛
マディソン・プラム伯爵令嬢は幼い頃から大好きだったジョシュア・バーレー侯爵と結婚することができた。 ところが、ジョシュアは元婚約者とベタベタしていて、マディソンには冷たい。 傷ついたマディソンはいつも相談相手にしていた美貌の幼なじみのデイビッド・ストロベン伯爵からプロポーズされるが‥‥ お互いに相思相愛の侯爵夫妻のすれ違いな思いが、溶け合う課程を描く甘いラブストーリー。