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34話 閑話
「リドラー伯爵は、次はオリソン国のベルン侯爵家を狙うらしい」
「目を向けるのが思ったより早かったな」
「レインとの婚約がなくなってベルン侯爵家にかなりの金が入ったからな。騙して根こそぎ金を持っていくつもりだろう」
「絶対に尻尾を掴んでやる。そして殺された両親の恨みを晴らしてやるんだ」
「慎重に動けよ。あの伯爵、バイセム侯爵家の使用人に金を渡して好き勝手に自分の思い通りに屋敷で動いていたんだ」
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
「俺は絶対に許さない」
セーラが8歳、俺が15歳の時だった。
父はモリス国の伯爵で、広大な領地は肥沃で父は商才があり、他国へ穀物やワインを輸入し巨万の富を得て裕福な暮らしだった。
セーラは「にいさま!大好き」「遊んでくださいまし」と大人に近い歳になった俺に子供の遊びを一緒にしようと強請ってきた。
その度にいい歳した俺は妹に付き合ってカードゲームをしたり妹の下手なピアノを聴かされて教えたりして過ごした。
家族と過ごす時間は温かくいつも笑い合っていた。
そんな時間がとても幸せで、この幸せはずっと続くと思っていた。
それが突然全て一変した。
「三人は私の親友の住むグリス国へ送るからとりあえず必要なものだけ持って馬車へ」
「どうしたんですか?」
「貴方?どうなさったの?」
「とうさま?おでかけ?」
セーラはキョトンとしていた。
俺は父にプレゼントされた懐中時計やなんとなく不安になって宝石箱に入っていた全ての宝石を上着の内ポケットに入れて、着替えを数枚トランクに詰めて馬車に乗り込んだ。
セーラはお気に入りのクマのぬいぐるみと数枚の服をドレスに詰め込んでいた。
母上はやはり持っていた宝石やアクセサリーなど金目になるものを手持ちの鞄に詰めていたみたいだ。
「にいさま、なんだか怖いわ」
馬車の中で隣に座ったセーラは俺のズボンをギュッと握り不安がる。
気が強く少しわがままなところもあるが心根は心優しい。弱い者には愛情深い。ただ相手が強く出てきたり理不尽なことを言う相手には年上でも平気で噛み付いていくので兄としてはいつも心配だった。
周囲からはわがままだと勘違いされることも多い。
つい可愛くて甘やかしてしまう。だけど今のセーラはただ父上の様子を見て不安がっていた。もちろん俺も意味がわからず戸惑っていたが父上の有無を言わさない態度に何も聞けないし反抗もできずにいた。
母上は何かしら知らされていたらしく「二人とも大丈夫ですよ、これから向かう所は私達の親友の屋敷です。とても頼りになるの」
本当は母上も怖いのだろう。手が小刻みに震えているのが見えた。でも俺はあえて聞かなかった。父上は御者と一緒に馬を走らせていたし、母上もセーラの前では話したがらなかった。
馬車を止めて休憩のため馬車から降りると父上が俺を呼んだ。
「突然ですまない。俺はリドラーに嵌められた。何もかも奪われる、だがその前にお前たちだけは逃すつもりだ」
「奪われる?」
「財産全てだ、あの男は言葉巧みに俺に近づいてきて、投資話を持ちこみ信用させて、たくさんの金を儲けることができた。そしてさらに大金を投資するように勧められて、大損させられた。全て罠だったんだ。書類は改竄されて全ての金を奪われる」
「そんな……裁判を起こしましょう」
「無理だ、あの書類にサインをしたのは俺だ。巧妙に作られていた書類だ、まさか書類が二重になっていて下の書類にまでサインしたことになるなんて」
「じゃあ、どうしようもないんですか?」
「ああ、それにセーラを差し出せと言ってきている」
「セーラを?何故ですか?」
「セーラは珍しい紫色の瞳だから……」
「紫色なんて他にもいるじゃないですか!」
「ああ、私もそう思う。だが国内でもセーラの瞳の色ほど鮮やかな紫をした瞳を持つ令嬢はいない。とても珍しい……だから、養女にして商品価値を高め商品として高値で嫁がせたいと言われた」
「それは、道具としてしか見ていないじゃないですか!」
「わかっている、だからお前たちを友人の屋敷に匿ってもらうんだ。財産は全て失くなってもお前たちは失うわけにはいかない。騙されたことを陛下に陳情するつもりだ。そしてセーラを向こうに渡すのを食い止める。それまでグリス国で待っていて欲しい」
そして、あと少しでその屋敷に着くと思っていたのに……
雨が降り始めた。
「目を向けるのが思ったより早かったな」
「レインとの婚約がなくなってベルン侯爵家にかなりの金が入ったからな。騙して根こそぎ金を持っていくつもりだろう」
「絶対に尻尾を掴んでやる。そして殺された両親の恨みを晴らしてやるんだ」
「慎重に動けよ。あの伯爵、バイセム侯爵家の使用人に金を渡して好き勝手に自分の思い通りに屋敷で動いていたんだ」
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「俺は絶対に許さない」
セーラが8歳、俺が15歳の時だった。
父はモリス国の伯爵で、広大な領地は肥沃で父は商才があり、他国へ穀物やワインを輸入し巨万の富を得て裕福な暮らしだった。
セーラは「にいさま!大好き」「遊んでくださいまし」と大人に近い歳になった俺に子供の遊びを一緒にしようと強請ってきた。
その度にいい歳した俺は妹に付き合ってカードゲームをしたり妹の下手なピアノを聴かされて教えたりして過ごした。
家族と過ごす時間は温かくいつも笑い合っていた。
そんな時間がとても幸せで、この幸せはずっと続くと思っていた。
それが突然全て一変した。
「三人は私の親友の住むグリス国へ送るからとりあえず必要なものだけ持って馬車へ」
「どうしたんですか?」
「貴方?どうなさったの?」
「とうさま?おでかけ?」
セーラはキョトンとしていた。
俺は父にプレゼントされた懐中時計やなんとなく不安になって宝石箱に入っていた全ての宝石を上着の内ポケットに入れて、着替えを数枚トランクに詰めて馬車に乗り込んだ。
セーラはお気に入りのクマのぬいぐるみと数枚の服をドレスに詰め込んでいた。
母上はやはり持っていた宝石やアクセサリーなど金目になるものを手持ちの鞄に詰めていたみたいだ。
「にいさま、なんだか怖いわ」
馬車の中で隣に座ったセーラは俺のズボンをギュッと握り不安がる。
気が強く少しわがままなところもあるが心根は心優しい。弱い者には愛情深い。ただ相手が強く出てきたり理不尽なことを言う相手には年上でも平気で噛み付いていくので兄としてはいつも心配だった。
周囲からはわがままだと勘違いされることも多い。
つい可愛くて甘やかしてしまう。だけど今のセーラはただ父上の様子を見て不安がっていた。もちろん俺も意味がわからず戸惑っていたが父上の有無を言わさない態度に何も聞けないし反抗もできずにいた。
母上は何かしら知らされていたらしく「二人とも大丈夫ですよ、これから向かう所は私達の親友の屋敷です。とても頼りになるの」
本当は母上も怖いのだろう。手が小刻みに震えているのが見えた。でも俺はあえて聞かなかった。父上は御者と一緒に馬を走らせていたし、母上もセーラの前では話したがらなかった。
馬車を止めて休憩のため馬車から降りると父上が俺を呼んだ。
「突然ですまない。俺はリドラーに嵌められた。何もかも奪われる、だがその前にお前たちだけは逃すつもりだ」
「奪われる?」
「財産全てだ、あの男は言葉巧みに俺に近づいてきて、投資話を持ちこみ信用させて、たくさんの金を儲けることができた。そしてさらに大金を投資するように勧められて、大損させられた。全て罠だったんだ。書類は改竄されて全ての金を奪われる」
「そんな……裁判を起こしましょう」
「無理だ、あの書類にサインをしたのは俺だ。巧妙に作られていた書類だ、まさか書類が二重になっていて下の書類にまでサインしたことになるなんて」
「じゃあ、どうしようもないんですか?」
「ああ、それにセーラを差し出せと言ってきている」
「セーラを?何故ですか?」
「セーラは珍しい紫色の瞳だから……」
「紫色なんて他にもいるじゃないですか!」
「ああ、私もそう思う。だが国内でもセーラの瞳の色ほど鮮やかな紫をした瞳を持つ令嬢はいない。とても珍しい……だから、養女にして商品価値を高め商品として高値で嫁がせたいと言われた」
「それは、道具としてしか見ていないじゃないですか!」
「わかっている、だからお前たちを友人の屋敷に匿ってもらうんだ。財産は全て失くなってもお前たちは失うわけにはいかない。騙されたことを陛下に陳情するつもりだ。そしてセーラを向こうに渡すのを食い止める。それまでグリス国で待っていて欲しい」
そして、あと少しでその屋敷に着くと思っていたのに……
雨が降り始めた。
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