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45話
「はいこれ」
レイモンド殿下が笑顔でやって来た。
「これは……」
「うん?もちろん仕事だよ。いくらカイ殿の部屋にいるからって何もしないわけにはいかないのわかってるだろう?もうすぐ諸外国からたくさんの貴賓達をお迎えするんだ。夜会や数々のパーティーも開かれる、のんびりとしている暇がキミにあるわけないだろう?」
そう言って殿下の後ろから次々に先輩達が書類を置いて行った。
小声で「頑張れ」「よろしくな」とすまなそうな顔をしながら。
確か上司は「しばらく休んでもいいからな」と今朝手紙で休暇を許可してくれていたはず。
「………お仕事喜んでさせていただきます」
別に仕事は嫌いではない。この部屋にいてもすることはない。
カイ様は夜寝る前に顔を出してくれた。
「この部屋は俺が使っている客間の一つだ、隣には護衛が控えているし、外の廊下には近衛騎士達が常にウロウロしているから安心できる。しばらくはここにいてくれ。俺はちょっと忙しいからあんまり顔を出せないがレイモンドに声をかけてるからアイツに何かあったら伝言してくれ」
そう言って去って行った。
昨日襲われたことはとても怖いことだった。私にとってはとても大切な貞操の危機でもあって、変な薬を飲まされて犯されてしまうなんて絶対嫌だしもしそんなことされていたら……死んでしまいたい気持ちになったと思う。
もちろんもうあの道を歩くのも怖いし、カリーナ様のことを思い出すだけでさらに恐怖で震えがくる。
あの後どうなったのかカイ様に聞こうか躊躇していると「心配すんな」とだけ言って頭を撫でてくれた。
不思議なくらいそれだけでもう言葉は要らなかった。
レイモンド殿下はカイ様の部屋に来たということは全てを知っていて、敢えて何も聞かないし言うつもりもないのだろう。
軽くため息をついて私は持って来てもらった書類をパラパラとめくった。
明日しようと思っていた仕事の続きが目の前にある。
ああ、日常だ、そう思うと心が落ち着く。
豪華で広いいつもと違う部屋に落ち着けず、かと言って部屋から出るのは怖くて、どうしていいのかわからない私に与えてくださった仕事。
やはり私は仕事が好き。
改めてそう気がついた。
レイモンド殿下も気がつけば少し離れた別のソファに座っていた。優雅にお茶でもしているのかと思ったら、やはり真剣な顔をして書類に目を通していた。
普段私の前では明るくて優しい殿下だけど、仕事になると表情が変わる。
お互い休憩すら取らずに仕事をして、気がつけば昼食の時間になっていた。
「レイン、一旦休憩しよう」
そう声をかけられて我に返った。
「あ………」
顔を上げるとレイモンド殿下が私の顔を覗き込んで笑った。
お互いの目があってドキッとした。
「な、なんですか?何か面白い顔でもしていますか?」
思わずあまりにも笑顔が眩しくてドキッとしたなんて、気づかれたくなくて
「レイモンド殿下、ち、近いです、少し離れてください」と冷たくあしらった。
「レイン、鼻のてっぺんにインクがついてるよ」
クククッと笑いながら殿下に言われ手鏡を渡された。
慌てて受け取り鏡を見ると……
「ほんとだわ!」
もう恥ずかしい!へんに照れてしまったじゃない!
殿下がまじまじ私の顔を見るんだもの。
急いでハンカチを濡らし拭いて綺麗にとれたけど恥ずかしすぎる。
まぁ元々仕事中心であまりオシャレとか化粧とか興味がなくて女の子らしくないけど、やはり男性の前でこれは……今度から少しは気をつけようと心に決めつつ、用意された昼食を見てしまうと、さっきは女の子らしくなんて思ったのだけど………やめた。
「レイモンド殿下、頂いてもよろしいですか?」
「もちろんだよ」
「いただきます!!」
殿下の前で平気で大きな口を開けてパクパク食べ始めた。
「美味しい!あ、殿下、それ美味しかったですよ!これはなんの味かしら?ひとついただいてもいいですか?」
温かい具沢山のスープ、柔らかい焼きたてのパンが数種類、お野菜たくさんの彩りサラダ、サーモンのマリネにローストビーフやアクアパッツァや白身魚とズッキーニのソテーなどいつもの食堂とは全く違う素材にこだわった王宮料理。
実は昨日の夜も今朝も食事を出されてもあまり喉を通らなかった。
昨日は流石に疲れ果てて食欲がない。今朝もまだ胃が受け付けなかったはずなのに、仕事をしたことと、多分一人じゃないから気持ちが全然違う。
それも毎日一緒に昼食を食べていたレイモンド殿下なので気を使うこともなく気兼ねなく食べられる。
会話だってほぼ仕事のことだけど無言になることもなく続く。
私も敢えて昨日の出来事には触れずにモリス国から来られる王族の話をした。
私自身が今回初めて担当する貴賓で失敗は許されない。
カイ様のように気さくな方だったらいいけど、絶対普通カイ様みたいな人はいないのはわかってる。
私が対応を間違えれば国際問題になる。上司にもしっかり釘を刺されているのでモリス国の情報を頭の中に叩き込んでいる。
でもせっかくの昼食の時間。そんなことは今は忘れる。
「殿下、美味しい物を食べるって幸せですね」
ニコニコしながらパクパク食べていると
「キミが笑顔でいてよかった」と殿下は柔らかな笑みで返してくれた。
その後胃がムカムカして気持ち悪くなり痛くなって、結局昼からはレイモンド殿下にはさっさと帰ってもらって、私は寝込んでしまった。
「レイン、美味しいからって食べ過ぎはダメだろう」呆れながら殿下はお医者様を呼んでくれて帰って行った。
レイモンド殿下が笑顔でやって来た。
「これは……」
「うん?もちろん仕事だよ。いくらカイ殿の部屋にいるからって何もしないわけにはいかないのわかってるだろう?もうすぐ諸外国からたくさんの貴賓達をお迎えするんだ。夜会や数々のパーティーも開かれる、のんびりとしている暇がキミにあるわけないだろう?」
そう言って殿下の後ろから次々に先輩達が書類を置いて行った。
小声で「頑張れ」「よろしくな」とすまなそうな顔をしながら。
確か上司は「しばらく休んでもいいからな」と今朝手紙で休暇を許可してくれていたはず。
「………お仕事喜んでさせていただきます」
別に仕事は嫌いではない。この部屋にいてもすることはない。
カイ様は夜寝る前に顔を出してくれた。
「この部屋は俺が使っている客間の一つだ、隣には護衛が控えているし、外の廊下には近衛騎士達が常にウロウロしているから安心できる。しばらくはここにいてくれ。俺はちょっと忙しいからあんまり顔を出せないがレイモンドに声をかけてるからアイツに何かあったら伝言してくれ」
そう言って去って行った。
昨日襲われたことはとても怖いことだった。私にとってはとても大切な貞操の危機でもあって、変な薬を飲まされて犯されてしまうなんて絶対嫌だしもしそんなことされていたら……死んでしまいたい気持ちになったと思う。
もちろんもうあの道を歩くのも怖いし、カリーナ様のことを思い出すだけでさらに恐怖で震えがくる。
あの後どうなったのかカイ様に聞こうか躊躇していると「心配すんな」とだけ言って頭を撫でてくれた。
不思議なくらいそれだけでもう言葉は要らなかった。
レイモンド殿下はカイ様の部屋に来たということは全てを知っていて、敢えて何も聞かないし言うつもりもないのだろう。
軽くため息をついて私は持って来てもらった書類をパラパラとめくった。
明日しようと思っていた仕事の続きが目の前にある。
ああ、日常だ、そう思うと心が落ち着く。
豪華で広いいつもと違う部屋に落ち着けず、かと言って部屋から出るのは怖くて、どうしていいのかわからない私に与えてくださった仕事。
やはり私は仕事が好き。
改めてそう気がついた。
レイモンド殿下も気がつけば少し離れた別のソファに座っていた。優雅にお茶でもしているのかと思ったら、やはり真剣な顔をして書類に目を通していた。
普段私の前では明るくて優しい殿下だけど、仕事になると表情が変わる。
お互い休憩すら取らずに仕事をして、気がつけば昼食の時間になっていた。
「レイン、一旦休憩しよう」
そう声をかけられて我に返った。
「あ………」
顔を上げるとレイモンド殿下が私の顔を覗き込んで笑った。
お互いの目があってドキッとした。
「な、なんですか?何か面白い顔でもしていますか?」
思わずあまりにも笑顔が眩しくてドキッとしたなんて、気づかれたくなくて
「レイモンド殿下、ち、近いです、少し離れてください」と冷たくあしらった。
「レイン、鼻のてっぺんにインクがついてるよ」
クククッと笑いながら殿下に言われ手鏡を渡された。
慌てて受け取り鏡を見ると……
「ほんとだわ!」
もう恥ずかしい!へんに照れてしまったじゃない!
殿下がまじまじ私の顔を見るんだもの。
急いでハンカチを濡らし拭いて綺麗にとれたけど恥ずかしすぎる。
まぁ元々仕事中心であまりオシャレとか化粧とか興味がなくて女の子らしくないけど、やはり男性の前でこれは……今度から少しは気をつけようと心に決めつつ、用意された昼食を見てしまうと、さっきは女の子らしくなんて思ったのだけど………やめた。
「レイモンド殿下、頂いてもよろしいですか?」
「もちろんだよ」
「いただきます!!」
殿下の前で平気で大きな口を開けてパクパク食べ始めた。
「美味しい!あ、殿下、それ美味しかったですよ!これはなんの味かしら?ひとついただいてもいいですか?」
温かい具沢山のスープ、柔らかい焼きたてのパンが数種類、お野菜たくさんの彩りサラダ、サーモンのマリネにローストビーフやアクアパッツァや白身魚とズッキーニのソテーなどいつもの食堂とは全く違う素材にこだわった王宮料理。
実は昨日の夜も今朝も食事を出されてもあまり喉を通らなかった。
昨日は流石に疲れ果てて食欲がない。今朝もまだ胃が受け付けなかったはずなのに、仕事をしたことと、多分一人じゃないから気持ちが全然違う。
それも毎日一緒に昼食を食べていたレイモンド殿下なので気を使うこともなく気兼ねなく食べられる。
会話だってほぼ仕事のことだけど無言になることもなく続く。
私も敢えて昨日の出来事には触れずにモリス国から来られる王族の話をした。
私自身が今回初めて担当する貴賓で失敗は許されない。
カイ様のように気さくな方だったらいいけど、絶対普通カイ様みたいな人はいないのはわかってる。
私が対応を間違えれば国際問題になる。上司にもしっかり釘を刺されているのでモリス国の情報を頭の中に叩き込んでいる。
でもせっかくの昼食の時間。そんなことは今は忘れる。
「殿下、美味しい物を食べるって幸せですね」
ニコニコしながらパクパク食べていると
「キミが笑顔でいてよかった」と殿下は柔らかな笑みで返してくれた。
その後胃がムカムカして気持ち悪くなり痛くなって、結局昼からはレイモンド殿下にはさっさと帰ってもらって、私は寝込んでしまった。
「レイン、美味しいからって食べ過ぎはダメだろう」呆れながら殿下はお医者様を呼んでくれて帰って行った。
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