私は貴方を許さない ~番でも関係ありませんから~

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 王太子が連れていかれた後、私達は椅子に座り気持ちを落ち着けた。私が興奮するとお腹の子に何があるか分からない。折角今妊娠五ヶ月目で安定期に入り落ち着いてきたというのに……。


アクア「大丈夫だ、君は私の花嫁だ。何処にも連れて行かさない」


 彼が優しく私を抱きしめる。

 それだけでいつもなら安心できるのに何故か胸騒ぎがする。


フローラ「アクア……叔父様に伝えて一足先にここから帰りませんか?」

アクア「そうだな・・・だが・・・」


 彼が窓の方に目をやると先程まで曇っていただけだったのに気が付けば大雨が降り始めていた。これでは帰りたくとも帰り道の道中がぬかるんでしまい馬車が動かなくなる可能性もある。

 侯爵家までここから馬車で30分ほどなのだが天候の悪さと風の強さもある。帰りたくとも帰れないだろう。

 胸のざわつきが収まらない。怖い。


アクア「殿下にお伝えして別の部屋を用意してもらう。もしくは緑林の離宮へ移動させてもらおう」


 緑林の離宮とは三世代前の国王が愛した王妃が病で倒れ療養するために作られた自然にか揉まれた王宮から少しだけ離れた場所にある離宮だ。そこは今でも綺麗にされており、王妃の出産やそこでの子育て用に使われていたりする。私も何度か幼いころに遊びに連れて行ってくださったことがあったのだがとても落ち着く場所である。

 彼はそう言うと従者に伝える。

 約30分後に従者が戻ってきて緑林の離宮に今から向かってもよいと連絡があった。

 私達は王宮を出てそこに向かい歩き始める。

 そして歩いて20分ほどの所に緑林の離宮があるのだが、私が今妊婦という事を知っているので普段なら歩いて行ける距離だが小柄の場馬車でそこへ向かう。

 着けば先に来ていたメイドや執事達が出迎えをしてくれた。

 私達は寝室へ向かいそこで一息ついた後、用意された食事を頂いて叔父様からの連絡を待った。

 
アクア「夜遅くなるそうだ……体に障る可能性があるからフローラは先に休んだ方がいい……」

フローラ「でも……」

アクア「大丈夫だ。此処なら安全だ。君が眠るまで傍にいるよ」


 私は少し胸が寂しくなりながらも頷き一足先に入浴を終えてベッドに潜る。彼は手を握りまるで子供をあやすようにして優しく髪を撫でてくれる。

 胸に小さな不安を残しながらも、彼の大きな手で撫でられ私はいつの間にか眠りについていた。

 目が覚めると隣に彼はおらず私は急な不安感で彼の名前を呼ぶ。すると部屋に付いてある浴室から彼は髪を拭きながら出てきた。


アクア「あ、ごめん。起きてしまったのかい?」


 彼は私を見て少し驚いた顔をすると少しだけ駆け足で傍に来てくれる。


アクア「よく眠っていたよ。」

フローラ「今……何時頃なのでしょう?」

アクア「今夕刻前だ。」

フローラ「え!」


 カーテンを開けて外を見ると夕焼けが差し込んできていた。一日近く眠ってしまっていたのに驚き言葉を失う。


アクア「それほど昨日の事がストレスだったのだろう。最近は穏やかな日常を過ごしていたからね。」


 優しく頭を撫でられ彼は笑う。

 お腹に子を宿したと分かってから業務の殆ども両親に任せ時折体調のいい時に行う程度でしたし、最近は今はやりの本を本を読むか刺繍をするか…というぐらいだったと思う。

 私の住む侯爵家が少し街から離れた穏やかな場所に建てられているのもあり緩やかな日々を過ごしていた。

 それに睡眠時間が増え体調を屑いていたこともあり一日寝たきりで動けないこともしばしば……でも仕方ないと思う。だから先程の事に驚いたものの昼過ぎまで眠っていたこともある為その延長戦と今回の疲れで長くな身体睡眠を欲していたのだろう。

 小さく安堵した後、ふと昨日の事で思い出す。


フローラ「昨日……そういえばあの後はどう……?」

アクア「……話は平行線だったらしい。」


 彼は苦い表情を浮かべ顔を少し背ける。


フローラ「………詳しく教えて頂いても……?」

アクア「そう…だな……」


 少し迷った表情をした後、彼は叔父様から聞いた事をポツリポツリと話してくれた。

 私達がこの緑林の離宮で休んでいた頃、隣国の王太子に側近らと国王(叔父様)と王太子(従弟)の話し合いを行っていた。

 隣国の王太子と側近の面々は私が王太子の番という事を強く主張し譲らなかったようだ。運命の番のうえ王太子の番という事もあり此方が何を言っても「離婚させろ」「番の合わせろ」の一点張りだったという。

 彼等の話によると王族で番を見つけるのは困難に近く、約100年ぶりの出来事だという。数年前に此方に来た時、番の匂いや気配がしたものの見当たらず、それ以降この国にいることを確信してから探していたとのこと。

 確かその頃には私達は結婚し、基本的に屋敷で過ごしていたし新しい産業を始めた為必要最低限のお茶会や式典、パーティーにしか参加していなかった。そして最近では妊娠したのもあり大事を取って参加をしていなかったのもある。

 だからこの数年前から探していても見つからなかったのだろう。親戚がいる辺境伯にも妊娠前に少しの間用事でいたこともありましたし……。


アクア「国王陛下が当分の間は此方に顔を見せに来なくていいと言われていた。隣国ともこれをきっかけに何かあるかもしれないからと……」

フローラ「それは……」

アクア「フローラ、君のせいではない。」


 顔を伏せ俯く私の両手を持ち、愛しい貴方は力強い声でそう伝えてくれる。


フローラ「えぇ……」


 でも何処か心の奥にある不安の種が取り除けなかった。
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