3 / 7
願いは
しおりを挟む
王太子が連れていかれた後、私達は椅子に座り気持ちを落ち着けた。私が興奮するとお腹の子に何があるか分からない。折角今妊娠五ヶ月目で安定期に入り落ち着いてきたというのに……。
アクア「大丈夫だ、君は私の花嫁だ。何処にも連れて行かさない」
彼が優しく私を抱きしめる。
それだけでいつもなら安心できるのに何故か胸騒ぎがする。
フローラ「アクア……叔父様に伝えて一足先にここから帰りませんか?」
アクア「そうだな・・・だが・・・」
彼が窓の方に目をやると先程まで曇っていただけだったのに気が付けば大雨が降り始めていた。これでは帰りたくとも帰り道の道中がぬかるんでしまい馬車が動かなくなる可能性もある。
侯爵家までここから馬車で30分ほどなのだが天候の悪さと風の強さもある。帰りたくとも帰れないだろう。
胸のざわつきが収まらない。怖い。
アクア「殿下にお伝えして別の部屋を用意してもらう。もしくは緑林の離宮へ移動させてもらおう」
緑林の離宮とは三世代前の国王が愛した王妃が病で倒れ療養するために作られた自然にか揉まれた王宮から少しだけ離れた場所にある離宮だ。そこは今でも綺麗にされており、王妃の出産やそこでの子育て用に使われていたりする。私も何度か幼いころに遊びに連れて行ってくださったことがあったのだがとても落ち着く場所である。
彼はそう言うと従者に伝える。
約30分後に従者が戻ってきて緑林の離宮に今から向かってもよいと連絡があった。
私達は王宮を出てそこに向かい歩き始める。
そして歩いて20分ほどの所に緑林の離宮があるのだが、私が今妊婦という事を知っているので普段なら歩いて行ける距離だが小柄の場馬車でそこへ向かう。
着けば先に来ていたメイドや執事達が出迎えをしてくれた。
私達は寝室へ向かいそこで一息ついた後、用意された食事を頂いて叔父様からの連絡を待った。
アクア「夜遅くなるそうだ……体に障る可能性があるからフローラは先に休んだ方がいい……」
フローラ「でも……」
アクア「大丈夫だ。此処なら安全だ。君が眠るまで傍にいるよ」
私は少し胸が寂しくなりながらも頷き一足先に入浴を終えてベッドに潜る。彼は手を握りまるで子供をあやすようにして優しく髪を撫でてくれる。
胸に小さな不安を残しながらも、彼の大きな手で撫でられ私はいつの間にか眠りについていた。
目が覚めると隣に彼はおらず私は急な不安感で彼の名前を呼ぶ。すると部屋に付いてある浴室から彼は髪を拭きながら出てきた。
アクア「あ、ごめん。起きてしまったのかい?」
彼は私を見て少し驚いた顔をすると少しだけ駆け足で傍に来てくれる。
アクア「よく眠っていたよ。」
フローラ「今……何時頃なのでしょう?」
アクア「今夕刻前だ。」
フローラ「え!」
カーテンを開けて外を見ると夕焼けが差し込んできていた。一日近く眠ってしまっていたのに驚き言葉を失う。
アクア「それほど昨日の事がストレスだったのだろう。最近は穏やかな日常を過ごしていたからね。」
優しく頭を撫でられ彼は笑う。
お腹に子を宿したと分かってから業務の殆ども両親に任せ時折体調のいい時に行う程度でしたし、最近は今はやりの本を本を読むか刺繍をするか…というぐらいだったと思う。
私の住む侯爵家が少し街から離れた穏やかな場所に建てられているのもあり緩やかな日々を過ごしていた。
それに睡眠時間が増え体調を屑いていたこともあり一日寝たきりで動けないこともしばしば……でも仕方ないと思う。だから先程の事に驚いたものの昼過ぎまで眠っていたこともある為その延長戦と今回の疲れで長くな身体睡眠を欲していたのだろう。
小さく安堵した後、ふと昨日の事で思い出す。
フローラ「昨日……そういえばあの後はどう……?」
アクア「……話は平行線だったらしい。」
彼は苦い表情を浮かべ顔を少し背ける。
フローラ「………詳しく教えて頂いても……?」
アクア「そう…だな……」
少し迷った表情をした後、彼は叔父様から聞いた事をポツリポツリと話してくれた。
私達がこの緑林の離宮で休んでいた頃、隣国の王太子に側近らと国王(叔父様)と王太子(従弟)の話し合いを行っていた。
隣国の王太子と側近の面々は私が王太子の番という事を強く主張し譲らなかったようだ。運命の番のうえ王太子の番という事もあり此方が何を言っても「離婚させろ」「番の合わせろ」の一点張りだったという。
彼等の話によると王族で番を見つけるのは困難に近く、約100年ぶりの出来事だという。数年前に此方に来た時、番の匂いや気配がしたものの見当たらず、それ以降この国にいることを確信してから探していたとのこと。
確かその頃には私達は結婚し、基本的に屋敷で過ごしていたし新しい産業を始めた為必要最低限のお茶会や式典、パーティーにしか参加していなかった。そして最近では妊娠したのもあり大事を取って参加をしていなかったのもある。
だからこの数年前から探していても見つからなかったのだろう。親戚がいる辺境伯にも妊娠前に少しの間用事でいたこともありましたし……。
アクア「国王陛下が当分の間は此方に顔を見せに来なくていいと言われていた。隣国ともこれをきっかけに何かあるかもしれないからと……」
フローラ「それは……」
アクア「フローラ、君のせいではない。」
顔を伏せ俯く私の両手を持ち、愛しい貴方は力強い声でそう伝えてくれる。
フローラ「えぇ……」
でも何処か心の奥にある不安の種が取り除けなかった。
アクア「大丈夫だ、君は私の花嫁だ。何処にも連れて行かさない」
彼が優しく私を抱きしめる。
それだけでいつもなら安心できるのに何故か胸騒ぎがする。
フローラ「アクア……叔父様に伝えて一足先にここから帰りませんか?」
アクア「そうだな・・・だが・・・」
彼が窓の方に目をやると先程まで曇っていただけだったのに気が付けば大雨が降り始めていた。これでは帰りたくとも帰り道の道中がぬかるんでしまい馬車が動かなくなる可能性もある。
侯爵家までここから馬車で30分ほどなのだが天候の悪さと風の強さもある。帰りたくとも帰れないだろう。
胸のざわつきが収まらない。怖い。
アクア「殿下にお伝えして別の部屋を用意してもらう。もしくは緑林の離宮へ移動させてもらおう」
緑林の離宮とは三世代前の国王が愛した王妃が病で倒れ療養するために作られた自然にか揉まれた王宮から少しだけ離れた場所にある離宮だ。そこは今でも綺麗にされており、王妃の出産やそこでの子育て用に使われていたりする。私も何度か幼いころに遊びに連れて行ってくださったことがあったのだがとても落ち着く場所である。
彼はそう言うと従者に伝える。
約30分後に従者が戻ってきて緑林の離宮に今から向かってもよいと連絡があった。
私達は王宮を出てそこに向かい歩き始める。
そして歩いて20分ほどの所に緑林の離宮があるのだが、私が今妊婦という事を知っているので普段なら歩いて行ける距離だが小柄の場馬車でそこへ向かう。
着けば先に来ていたメイドや執事達が出迎えをしてくれた。
私達は寝室へ向かいそこで一息ついた後、用意された食事を頂いて叔父様からの連絡を待った。
アクア「夜遅くなるそうだ……体に障る可能性があるからフローラは先に休んだ方がいい……」
フローラ「でも……」
アクア「大丈夫だ。此処なら安全だ。君が眠るまで傍にいるよ」
私は少し胸が寂しくなりながらも頷き一足先に入浴を終えてベッドに潜る。彼は手を握りまるで子供をあやすようにして優しく髪を撫でてくれる。
胸に小さな不安を残しながらも、彼の大きな手で撫でられ私はいつの間にか眠りについていた。
目が覚めると隣に彼はおらず私は急な不安感で彼の名前を呼ぶ。すると部屋に付いてある浴室から彼は髪を拭きながら出てきた。
アクア「あ、ごめん。起きてしまったのかい?」
彼は私を見て少し驚いた顔をすると少しだけ駆け足で傍に来てくれる。
アクア「よく眠っていたよ。」
フローラ「今……何時頃なのでしょう?」
アクア「今夕刻前だ。」
フローラ「え!」
カーテンを開けて外を見ると夕焼けが差し込んできていた。一日近く眠ってしまっていたのに驚き言葉を失う。
アクア「それほど昨日の事がストレスだったのだろう。最近は穏やかな日常を過ごしていたからね。」
優しく頭を撫でられ彼は笑う。
お腹に子を宿したと分かってから業務の殆ども両親に任せ時折体調のいい時に行う程度でしたし、最近は今はやりの本を本を読むか刺繍をするか…というぐらいだったと思う。
私の住む侯爵家が少し街から離れた穏やかな場所に建てられているのもあり緩やかな日々を過ごしていた。
それに睡眠時間が増え体調を屑いていたこともあり一日寝たきりで動けないこともしばしば……でも仕方ないと思う。だから先程の事に驚いたものの昼過ぎまで眠っていたこともある為その延長戦と今回の疲れで長くな身体睡眠を欲していたのだろう。
小さく安堵した後、ふと昨日の事で思い出す。
フローラ「昨日……そういえばあの後はどう……?」
アクア「……話は平行線だったらしい。」
彼は苦い表情を浮かべ顔を少し背ける。
フローラ「………詳しく教えて頂いても……?」
アクア「そう…だな……」
少し迷った表情をした後、彼は叔父様から聞いた事をポツリポツリと話してくれた。
私達がこの緑林の離宮で休んでいた頃、隣国の王太子に側近らと国王(叔父様)と王太子(従弟)の話し合いを行っていた。
隣国の王太子と側近の面々は私が王太子の番という事を強く主張し譲らなかったようだ。運命の番のうえ王太子の番という事もあり此方が何を言っても「離婚させろ」「番の合わせろ」の一点張りだったという。
彼等の話によると王族で番を見つけるのは困難に近く、約100年ぶりの出来事だという。数年前に此方に来た時、番の匂いや気配がしたものの見当たらず、それ以降この国にいることを確信してから探していたとのこと。
確かその頃には私達は結婚し、基本的に屋敷で過ごしていたし新しい産業を始めた為必要最低限のお茶会や式典、パーティーにしか参加していなかった。そして最近では妊娠したのもあり大事を取って参加をしていなかったのもある。
だからこの数年前から探していても見つからなかったのだろう。親戚がいる辺境伯にも妊娠前に少しの間用事でいたこともありましたし……。
アクア「国王陛下が当分の間は此方に顔を見せに来なくていいと言われていた。隣国ともこれをきっかけに何かあるかもしれないからと……」
フローラ「それは……」
アクア「フローラ、君のせいではない。」
顔を伏せ俯く私の両手を持ち、愛しい貴方は力強い声でそう伝えてくれる。
フローラ「えぇ……」
でも何処か心の奥にある不安の種が取り除けなかった。
32
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?
篠月珪霞
恋愛
「…え」
まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。
私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。
いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。
過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。
【完結】花冠をあなたに ―信じ尽くした彼女の、最期の言葉―
桜野なつみ
恋愛
病弱な婚約者を支え続けた令嬢ミリアーナ。
幼いころから彼を想い、薬草を学び、研究し、元気になったら花畑で花冠を編ごう」と約束していた。
けれど、叔母と従妹の影がその誓いをゆがめ、やがて誤解と病に蝕まれていく。
最期に彼女が残したのは――ただ一つの言葉。
全十話 完結予定です。
(最初は全四話と言っていました。どんどん長くなってしまい、申し訳ありません。)
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる