異世界で俺の初級魔法が最強でした。無自覚に絶望から救った美女やエルフたちに溺愛されています

仙道

文字の大きさ
6 / 8

第6話

しおりを挟む
◇ リナ視点 ◇

鬱蒼とした森の奥。私は息を呑んで、目の前の信じられない光景を見つめていた。

「よし、出たな」

渉の目の前に立ち塞がっているのは、先日、街の最強パーティをあっけなく全滅させたあの未知の恐ろしい魔物だった。
見上げるほど巨大な体躯と、森を震わせるような咆哮。私なら一歩も動けずに腰を抜かしてしまうようなバケモノを前にして、渉は安い鉄の剣を腰に下げたまま、まるで散歩でもしているかのようにリラックスしている。

「今の俺の最強魔法を試すのに、ちょうどいい相手だな」

彼が短く呟き、片手をスッと前にかざす。詠唱なんてものはない。

「中級魔法――爆炎」

次の瞬間、彼の掌から放たれた凄まじい業火が、一直線に魔物を飲み込んだ。
あんなに恐ろしかった巨躯が一瞬にして劫火に包まれ、悲鳴を上げる間もなく跡形もなく消し飛んでしまう。周囲の木々が熱風で激しく揺れ、私まで吹き飛ばされそうになった。
街の精鋭たちが束になっても手も足も出なかった化け物を、たった一対一で、しかも一瞬で灰にしてしまったのだ。

「ふう、これで少しはレベルが上がったかな」

渉は満足そうに頷きながら、そんな言葉を口にした。

「レベル……?」

私はその聞き慣れない言葉に首を傾げた。
渉は魔物を倒すたびに「レベル上げ」という謎の言葉を口にする。この世界にはそんな概念は存在しないため、私には彼が何を言っているのか全く理解できない。

けれど、彼がその「レベル上げ」とやらをするたびに、私の体にはとんでもない変化が起きていた。
渉とパーティを組んでからというもの、彼が魔物を倒すたびに、私の体の奥底から凄まじい力が湧き上がってくるのを感じるのだ。剣を振るスピードも、体が感じる重さも、以前とは比べ物にならないほど軽く、鋭くなっている。
彼と一緒にいるだけで、信じられない速度で私が強くなっているのだ。

こんなにも規格外で、底知れぬ力を持つ彼。私は絶対に彼の足手まといにならないよう、彼が与えてくれるこの不思議な力で、彼にふさわしい女にならなければいけないと強く誓った。



◇ 主人公視点 ◇

俺たちは森でのレベル上げを終え、ギルドに戻ってきた。
相変わらずリナは目のやり場に困るほど過激な服装のままだが、俺の隣を歩く彼女の表情は、以前よりもずっと明るくなっていた。

ギルドの酒場スペースに向かおうとした時、ふと見覚えのある人影が目に入った。
ピカピカに磨き上げられた銀色の鎧に、美しい金髪。
初日に俺が声をかけて、あっさりと振られた貴族の娘、セリアだった。
彼女が歩くたびに、周囲の冒険者たちが道を譲り、ヒソヒソと敬意のこもった声を漏らしている。

「おい、見ろよ。上級冒険者のセリア様だぞ」
「今日も美しいな。俺たちみたいな下っ端じゃ、声すらかけられないぜ」

その声を聞いて、俺はひどく納得した。
なるほど、彼女はただの貴族の娘ってだけじゃなく、この世界でいう「上級冒険者」だったのか。ゲームで言えば、トップランカーのプレイヤーみたいなものだろう。
初日に俺みたいな初期装備の初心者が馴れ馴れしく声をかけたら、そりゃあ「身の程を知りなさい」と振られるのも当然だ。

でも、今の俺は毎日コツコツとレベル上げをして、中級魔法を使ってそこそこの魔物も一対一で倒せるようになっている。今の俺なら、少しはマシな相手として見てもらえるかもしれない。
俺は周囲の冒険者たちが遠巻きに見ている中、セリアに向かってまっすぐ歩み寄った。

「こんにちは。初日ぶりだね。この前は振られちゃったけど、もしよかったら、今度一緒にお茶でもどうかな?」

俺がそう誘うと、ギルド中が水を打ったように静まり返った。上級冒険者であり貴族でもある彼女に、安い鉄の剣を下げた新人がまたしてもデートを申し込んだのだ。

その瞬間、俺の右腕に柔らかい感触がむぎゅっと押し付けられた。

「ちょっと、渉。なんでこんなお高くとまったお嬢様なんか誘うのよ」

リナだった。彼女は俺の腕を豊かな胸の谷間で強く挟み込みながら、セリアを鋭く睨みつけている。
俺が他の女性をデートに誘ったのが気に入らなかったのか、あからさまに嫉妬心を剥き出しにしていた。極端に短い丈の装備から伸びる肉感的な太ももを俺に擦り寄せ、自分がパーティメンバーであることを誇示するように密着してくる。

セリアは、俺の腕にべったりとくっつくリナの過激な服装を見て、ピクリと眉を動かした。

「……貴方、本当に物怖じしないのですね」

セリアはスッと冷ややかな表情を作り、小さく息を吐いた。

「いいでしょう。そこまで言うのなら、後日、私の家へいらっしゃい。そこの……ええ、ひどく過激な格好をしたお連れ様もご一緒にどうぞ」
「えっ、家? リナも一緒に?」
「お茶をご馳走して差し上げます。場所は貴族街の、青い屋根の館です。逃げないでお越しなさい」

セリアはそれだけ言うと、優雅な足取りでギルドを出て行った。
まさかのOK、しかも自宅への招待だ。

数日後、俺は不満げに口を尖らせるリナを連れて、言われた通りに貴族街へと足を運んだ。そこにあったのは、想像を絶するほど巨大で豪華な館だった。

「すごいな、これ。上級冒険者になると、こんなすごいハウジング機能が解放されるのか」

俺はゲームの延長としてひたすら感心しながら館に招き入れられた。
ふかふかのソファに座り、三人で高級な紅茶を飲む。リナは落ち着かないのか、それともセリアへの対抗心なのか、ひたすら俺の腕に胸を押し付けてべったりとくっついたままだ。
セリアは相変わらずツンとした態度を崩さなかったが、俺が「レベル上げって大変だよね」と適当な世間話をすると、彼女は意味がわからなかったのか、不思議そうな顔をして首を傾げていたのが印象的だった。

そんな平和なお茶会から、さらに数日が経ったある日のこと。

カンカンカンカンカンッ!

けたたましい鐘の音が、街中に響き渡った。
俺とリナがギルドにいると、息を切らした衛兵が飛び込んでくる。

「緊急事態だ! 街の東門に大量の魔物が押し寄せている! 冒険者たちは総出で防衛に当たってくれ!」

衛兵の悲痛な叫びに、ギルド内の空気が一瞬にして張り詰めた。
どうやら、大規模な防衛イベントが始まったらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...